第40話 アイサとキスをして……

「…………」


 アイサから海で桐葉とキスしたかと聞かれて、俺は沈黙する。

 気まずい空気が少し流れる……

 これは黙っていても、何かを言っても、たぶん結果は同じだ。

 俺がどんな反応をしても、勘の鋭いアイサなら気づくだろう。


「……哲くんは桐ちゃんとキスしたんだね」

「…………そうだ」


 まあどう取り繕っても無駄だ。

 それに嘘をつく理由もない。

 どうせアイサはすべて見ぬいてしまう。

 それならば、正直に話してしまったほうがいいかもしれない。


「正直に言ってくれてありがとう」

「ああ」


 アイサは俺の肩に両手を置いて、だらんと頭を下げる。

 少し震えているような、泣いているような感じだ。

 

「そっかー。哲くんは桐ちゃんとキスしたのかあー」


 アイサは顔を上げる。

 潤んだ瞳で、ニコッと俺を見て笑う。 

 何か大きな感情を押し殺しているような、そんな表情だ。


「じゃあ、哲くん。あたしとも、キスしよっか?」

「アイサ、俺は――」


 俺が言いかけた時、アイサがキスしてきた。

 柔らかい唇が、俺の唇に押しあたる。


「ふう……はあ……」


 俺の口の中に、アイサの舌が滑り込んでくる。

 歯の裏側を優しく撫でられて、くすぐったい。

 

「くちゃ、くちゃ……」


 アイサは俺の顔を掴んで、さらに強く唇と唇を合わせる。

 目を閉じて、俺たちは互いに求め合う。

 まるで獣がお互いの傷を舐め合って、慰め合うように……


「はあ……もっと、哲くんとしたい……」


 夏休みの図書室。

 俺たちがこうしている近くで、受験生たちが真面目に勉強している。

 もちろん前世の俺は、図書室で女の子とキスなどしたことがない。

 そんなことはエロゲの世界でしかあり得ないことだった。

 そう。この世界はエロゲ――

 そしてアイサはエロゲのメインヒロイン。

 俺の頭の中で、虚構と現実が混じり合っていく。

 

「哲くんが、ほしい……」


 このキスは、虚構ではない。

 たしかに現実だ。

 柔らかい唇の感触も、アイサの髪の甘い匂いも、荒い呼吸の音も……

 俺の身体で実感できることだ。


「……でも、アイサは俊樹のことが」


 アイサが好きなのは、主人公の俊樹。

 この世界の「設定」では、ヒロインが好きなのは――主人公。

 それがシナリオだ。

 そしてキャラクターというものは、シナリオに従って動く。

 もしシナリオを破壊してしまえば……いったいどうなるのだろう?


「あたしは……あたしは……」


 顔を真っ赤にしながら、アイサは逡巡している。

 何かを言いたくても言えない……という悩ましい感じが伝わってくる。


 ――がたっ!


 俺たちの背後で、物音がした。


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※とても大事なおはなし


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