第39話 シスターアイサに懺悔しなさい

「アイサ、無理だ……」 

「あたし、桐ちゃんより魅力ない?」


 アイサが耳元で囁く。

 ふーっと、優しく息を吹きかけられた。

 ゾクゾクとした感覚が、全身を駆け巡る。


「いや、そういうことじゃなくて……」

「ねえ、桐ちゃんとどんなことしたの?」


 今まで背後にいたアイサが、俺の正面にやって来る。

 俺の肩に両手を置いて……


「少し座ろうか。じっくり話を聞かせてもらうから」

「いや、だから何もしてないって……」


 俺は積み上げられた本の上に、座らせられる。

 それからアイサは、前を向いた状態で俺の膝の上に座った。

 

「ふふ。これでもう逃げられないぞ?」


 吐息がかかるほど、俺たちは密着する。

 俺の目線の少し下には、アイサの大きな胸がチラリと見える……

 太ももが俺の膝に乗って、柔らかい感触が伝わってくる。


「さあ、罪人、哲くん。シスターアイサに懺悔なさい」

「本当に何もなかった」

「うーん……哲くん、悪い子だなー」


 アイサはいたずらっぽく笑う。

 さらさらの髪から甘い匂いがして、俺の理性のHPは削れていく。


「じゃあ、あたしが当ててあげる」

「当てる……?」

「うん。これはゲームだよ。あたしが言ったことが当たっていたら、イエス、外れていたらノーって言ってね」


 そう言うと、アイサは俺に抱き着いてくる。

 俺の肩にアイサの顔が乗る。

 耳元から、アイサが呼吸する音が聞こえてくる。


「じゃあ、行くよ。哲くんは桐ちゃんとハグしましたか?」

「…………黙秘権を行使したい」

「ダメです。被告人は供述しなさい」

「人権無視かよ……」


 別に何も悪いことしてないしな……

 ただ女の子であるアイサには言いにくい。

 なんとか何も言わずに切り抜けたいところだが。


「ほら、早く真実を言いなさい。楽になれるぞ?」

「どっかの刑事みたいだな」

「イエスかノーで、早く」

「…………イエス」


 ハグぐらいなら大丈夫だ。

 友達同士でハグぐらいするだろう。

 アメリカ人ならそれが普通だ。

 まあ日本人でも……やることはあるだろう。


「ふーん……やっとゲロったわね」

「ゲロったって……」

「ずいぶん時間がかかったけど、素直に言ってよろしい」

「そりゃどうも」

「ふふ。じゃああたしも、哲くんにハグしてもいいよね?」


 いやいや、もうすでに抱き合っているようなものだが。

 これ以上どうやって「ハグ」をするのか?


「よおし! 行くぞ! ぎゅうううううううううううう!!」


 俺の首に思いっきりしがみつくアイサ。

 むにゅうっと、アイサの柔らかい胸が当たりまくる……

 

「じゃあ次に行きます。哲くんは桐ちゃんと、キスしましたか?」



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