第38話 桐ちゃんとシタならあたしとも

「……ふう。じゃあそろそろ帰るわ」


 桐葉との電話が終わった。

 いろいろな意味で終わってしまった……

 俺はなるべく平静を装って、図書室に作られた秘密基地から出ようとする。

 アイサが背後からしっかり抱きついているが、俺はするりと抜け出そうとするが……


「こら。逃げるなー!」


 アイサがさらに強く、俺に抱きつく。


「別に逃げようとしてないよ。単に帰るだけ」

「まず、あたしに謝りなさい!」

「何が……?」

「桐ちゃんと、えっちなことしたんでしょ?」


 ぷくっと頬を膨らませながら、俺の肩をぎゅうっと掴むアイサ。

 かなり強い力で掴まれてる……


 アイサの言ってることは間違っていない。

 俺と桐葉は、えっちなことをした。

 いや、しそうになった。

 あくまで未遂だから、無罪だ。


「えっちなことはしてない。本当に」


 嘘はついていない。

 あくまでえっちなことをしそうになっただけだ。


「ふーん……でも、しそうになった感じ?」


 ジト目で俺を見てくるアイサ。

 ちょっとかわいいなと思ってしまうが、やっぱりアイサは勘が鋭い。


 たしかに桐葉と俺は、ギリギリのところまで行った。

 あと少しで俺たちの理性は崩壊して、流れされるままに欲望を満たしあっただろう。

 

「……いや、しそうにもなってない」

「ギルティです。今、嘘ついたね」

「嘘じゃないから」

「桐ちゃんとしそうになったのなら、あたしともしそうになっていいよね?」



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