第3話 家族(クラン)
「さぁ、行くか。」
とドアを開け俺はまたその静かな外へとくり出した。歩いて数分のところですごい顔の辺りが痒くなってしまったので近くの公園で洗う事にした。公園につき蛇口をひねり顔を洗った。そこで目を擦っていると変なものが見えた。
「なんだ?このウィンドウは。」
それは目の片方を隠すことで見えた。俺は何度も確認した。そしてそのウィンドウの左端の方に『暗殺者』×2と書かれていた。なんのことかさっぱりわからなかった。けど俺は一つの考えに行き着いた。だってこんなこと普通じゃありえない。なら、これは俺の能力に関係のあるものだと。だったらこの『暗殺者』というのは能力の名前だろう。心当たりはある。そりゃそうだ、だってあの時、男がいきなり後ろに現れたのを俺は二回見た。あの能力はまるで暗殺者のようだった。だから『暗殺者』の数が2となっていたわけだ。ここでわかることは二つある。まず、デパートであったあの男の能力が『暗殺者』という名前であること。次に、俺の能力についてだが。最初の紙にはこう書いてあった。(あなたの能力は相手の能力の発動を五感で感じた場合その能力をそのまま使えるようにするという能力です。ただし使用は一回。)この仕様は一回のところで最初はその能力を持ち続け、使ったらなくなるというもので、または新たな能力が手に入ったら自動で上書きされるものだと思っていた。だが本当はこのように保持することができ、使うとその能力の回数が一つ減るというものだった。しかもかなりの空白がこのウィンドウにあった。つまり何個か同時に保持ができるのではないかと思った。だがまだこの能力を使いこなせていないのは確かである。実戦あるのみと言いたいが、正直それは実現してほしくないものだ。こんなことを考えていたが今は住居への移動が先なので移動を再開した。その道中は何もなかったのですんなり新たな拠点についた。ついた場所は、ぼろアパートだった。そこには使い古された自転車、カビの生えたゴミ捨て場、明らかに人が住んでいたであろう痕跡が残されていた。その中で俺の部屋は2階の角部屋だった。とりあえずその部屋に入ることにした。中は、なんの変哲もない部屋だった。部屋についたはいいが今日はやることが何もなかったのでそのまま、飯を食い、時間を潰し、眠りについた。
〜翌日〜
起きた時、俺は見慣れない光景でびっくりした。が、拠点を移動したことを思い出した。
「早く、この移り変わりに慣れないとな。」
そんなことをつぶやきながら、俺は早々に朝食をとり、気は乗らなかったが、クエストをこなすために外に出ることにした。適当な準備を整え、アパートの階段を下りると人の気配を感じた。俺は気配の感じた方向に意識を向けて身構えた。すると聞いたことのある声がした。
「待て待て。打つな打つな。」
そこには、最初に集められたときに一緒にいた康太の姿があった
「何だお前か。」
「何だとは失礼なこれでもお前を探して歩き回ったんだぞ。」
「探してた?何故に?なにはともあれそれはご苦労さん。」
「本当に疲れたよ、そんなことよりお前の拠点で休ませて。」
「なんでだよ。あぁわかったよ。」
「サンキュー。マジ助かる。2日ほど探しっぱなしだったからへとへとだよ。」
本当はクエストをこなしたかったが友達の頼みなら聞こうと拠点の中に入れた。康太は拠点に入った途端、床にゴロンと寝ころんだ。
「おいおい、自宅気分かよ。」
「いいじゃねぇかこのくらい。探すの苦労したんだぜ。」
まぁ仕方がないとこれ以上は言わないようにした。そう思ったあと、また康太が口を開き、言った。
「なぁ、お前クランに入る気はないか。」
俺は康太からクランという言葉を聞いて驚いた。なぜか、それは基本的にやつは一人行動を好む方だ。だから知らない人と組んでいるとは驚きだ。だから、問い返した。
「なぜまたそんな。」
「いやなぁ、なんと普段は一人行動を好む俺だがある人に誘われてだな。クランに入っとけばある程度は安全だろうと思って結構仕方なくクランに入ったんだ。そこでクランリーダーにお前のことを話したら入れてくれるって言うから連れてくるためにお前を探していたんだ。不安定でのらりくらりするよりも安全な状態にしたほうがいいだろ?だからどうだ?」
「どうだといわれても。すぐには答えは出せないよ。だからまずはそのクランリーダーに会わせてくれ。」
そう言うと康太は寝ていた体を起こし笑顔をこちらに向け言った。
「そう言ってくれると思ったよ。よし行こう。」
「もう休まなくていいのか。」
「もう大丈夫だよ。それより早く戻らないとリーダーが心配してこっちまで来ちゃう。それは申し訳ないからさせたくない。」
「わかった。ならすぐに出よう」
俺たちは会話を終わらせると拠点から出てクランリーダーのいる拠点に向かった。道中敵に出くわさないようにして難なくその拠点に着いた。がついた頃には夜になっていた。ついた先にはかなりでかいお屋敷があり、俺はあまりのデカさに圧倒されていた。そんな中康太が俺に話しかけてきた。
「なにぼーっとしてんだ行くぞ。」
俺は康太についていき、お屋敷の中のいかにも偉い人がいそうな部屋に連れてこられた。康太はその部屋に着くや否やそのふすまを開け部屋に入った。俺もつられて入った。
「失礼します。リーダー。連れて来ました。この前話していた俺の友達です。裕二、この方は俺らのクランリーダーの奥田(おくだ)さんだ。」
「やぁ、君が裕二くんか。君の話は康太からいつも聞いているよ。疲れたでしょう。今日はもうお休みになって、また明日話すとしましょう。康太、裕二くんを客間にお連れしてあげなさい。」
「わかりました。リーダー。おやすみなさい。」
そういうと康太は部屋を出ようとした。なので俺もお礼を告げ部屋を後にした。客間に向かう途中、康太が話しかけてきた。
「どうだった?うちのリーダー。優しそうな人だろ。」
「いやまだわからない。俺は明日話し合うまであの人を信頼するつもりはないぞ。」
「何だよ。疑り深いやつだな。まぁ無理もないか。」
そんな話をしていると客間に着いた。そんなことより今日は疲れた。今はその思いが強い。
「着いたぜ。じゃあ俺は自分の部屋があるからな。また明日。」
「お前の部屋もあるのかよ。なぁこのクランって何人ぐらいいるんだ?」
「ざっと50人ってとこかな。あと俺みたいな一人で仲間がいないようなやつのをよく引き入れているせいかほとんどがここを拠点としているぜ。」
「マジかよ約50人が一つの家で暮らしてるってどんだけ広いんだよ。」
「まぁ慣れだよ慣れ。じゃ、おやすみ。」
「あぁ、今日はありがとう。おやすみ。」
そして俺は部屋の中へ、康太は自分の部屋へと向かった。部屋の中は畳の上に布団がひかれていた。今日起こったことの整理をしようと思ったが、今日は移動距離もあったからか、この日はすぐに用意してあった寝巻きに着替えて布団に入って寝てしまった。
〜翌日〜
久しぶりに気持ちよく寝れた気がした。やっぱり誰かに守られているからだろうか。朝になったので昨日の奥田さんの部屋に行こうと元の服に着替えているとどたどたとした音が近づいて来て友人が襖をカーンと鳴らした。
「おっはよう。裕二。よく寝れたか。」
康太が元気そうな声で俺を迎えに来てくれた。
「おはよう。朝っぱらから元気なやつだな。おかげさまでよく眠れたよ。」
「ならよかった。よしいくぞ。」
俺は頷き康太についていきながら奥田さんの部屋へと向かった。部屋に着くなり康太は勢いよく襖を開けた。
「おはようございます、リーダー。」
「おっおはようございます。」
康太の挨拶に釣られ俺も挨拶をした。そうすると奥田さんも返してくれた。
「おはよう。康太は朝から元気だね。挨拶は大事だからね良いことだ。」
そんなことを話しているの見ていた俺を見て奥田さんは話を続けた。
「おっと、すまない。じゃあ話していこうか。と言っても何からはなしていいのやら。裕二くん、何かこれだけは先に聞いておきたいということはあるかな?」
実際聞きたいことは山ほどあった。ということでまずはこれから聞くことにした。
「無難な質問になりますがなぜこのクランを作ろうと思ったのですか?」
「なるほど。答えよう。まぁそんな重大なことでもないのだがね。このクランは簡単に言ってしまえば戦闘を好まない防衛クランといったところかな。このステージは君たちが来る前から存在しているそのことは知っているかい?」
「あぁ、それは聞かされた。」
「なら話は早いね。今このステージはうちみたいな防衛クランの他に殺人クランや商業クランなど色々存在する。これも聞いていると思うがこのクランは約50名ほどいる。が、抜けて独立した者もいるから実際の大きさは正直僕でもわからないよ。それだけ初心者狩りが流行っているってことだね。君もここに来る前に戦闘をおこなっていると思うが自分の拠点を守るためとはいえやつもその類で間違いな。」
「ちょっと待ってくれよ。なんで俺が戦ったことを知っているんだ。」
「おっとすまない。実は康太が君を探してる間にこちらも君のことを調べさせてもらってね。君が移動した場所、君が使った能力、そのほとんどを調べさせてもらった。連れてきて襲撃されたらたまったもんじゃないからね。」
「はぁ、なるほど。」
この規模のお屋敷を構えているんだ何か大きなことがあるだろうとは思っていてがまさかそこまでの情報網があるとは。さすがというか何というか。敵に回したくないな。
「よし話を戻そう。もう単刀直入に聞こう。君ならこの世界でも戦っていけるだろうから、どうかね。うちのクランに入らないか?もちろんクランに入ってくれるのなら君が使ったあの部屋をこれからも使い続けて構わないし、ポイントも分け与えようと思う。今はもういろんなところでクランの領土が確立しつつあるから、クランに入ることをお勧めするよ。もちろん、今決めろというのは難しい話だろうから今日1日考える時間をあげよう。なるべく早く返事をくれると助かるよ。こっちも今忙しくてね。」
とりあえず部屋を出た。正直クランに入っていたほうが、得なのは知っている。だが、康太がいるとはいえ、昨日顔を会わせた人を信頼できないのも事実だ。だからとりあえず、今日のクエストをこなしに行くことにした。ただクエストをこなしていってもつまらないので異能を集めながらこなすことにした。
「俺も行っていいか?」
「あぁ、逆について来てくれるとありがたい。今ある能力を使い果たした時、俺は相手が手の内をさらすまで丸腰と同じだからな。せめて武器さえあれば。」
「ならさいいものがあるぜ。」
言い放った康太が俺を御屋敷の奥へと連れて行った。そこには大きな蔵があり、その中に案内された。そこは大きな武器庫になっていて銃や刀などが乱雑にたくさんと積みあがっていた。
「なんだよこれ?」
「見ての通りだよ。奥田さんがここに逃げてきた初心者に配布するためにここを作ったんだってさ。」
「はぁ、ならありがたく使わせてもらうわ。ポイントを使わなくていいのは楽だからな。」
怪しさを抱きながらナイフとハンドガンといった片手で扱える武器を手に取った。
「なんだお前。どこぞのエージェントか」
突っ込まれてしまったが断じて違う
「俺の能力は基本的になんの能力が使えるかが状況によって変わるだからなるべくいろんな状況に対応できるように身軽でいたいんだよ」
「へぇー。なるほどね。妙によく考えるじゃねぇか。なんでそんな躍起になってるんだ?」
「当たり前だろ。俺は早く元の世界に帰りたい。確かにこの世界も見た目は同じだけどそれと比べて家族はいないし、簡単に人が死んでいく。そんな状態で俺は生きていたくない。かといって死にたくはない。だからこそ何をすればここから出れるかわからないが最初に研究所みたいなところにいた時、彼らはこれを実験と言っていた。実験てことは何かが達成されれば終わりは来る。まぁ、終わったからと言って俺たちは内部情報を知ったものとして処分されるかもしれないがな。」
「うわ。急に怖い話するじゃん。…ただ俺だってここでやられたくねぇ。協力するぜ相棒」
俺たちはその後腕を組み、結果として康太と一緒に行動することになった。こいつは正直に言って調子に乗りやすいところがあるだから、誤って敵の罠にでも引っ掛からないかが不安で仕方ない。けど康太は小学生からの幼馴染だから共闘に関してはこれ以上ないほどの味方だ。準備を整えクエストを確認し、ルートの確認もし終えたところで屋敷の大門をくぐった。俺はこんなところでは死ねない。死んでたまるか。
寝て起きたらソシャゲみたいなバトロワが始まったんだけど 守端 蛙助 @alkahone
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