Wデート

「ということでやって来ました、ラウンドツ〜〜」

「まさか今日いきなり決行するとは思いませんでしたよ……」


 学校が終わって、星空に連れてこられてやって来たのは。

 全国展開をしていて、カラオケが出来るうえに、運動に関してはボウリングからバスケ、バッティングなど、なんでもござれなレジャー施設。

 その名もラウンドツー。

 学生が遊ぶにはうってつけの場所だ。


「ごめんな、が無理を言って。思いついたら即行動がモットーなもんでな」

「別にいいよ。最近運動もするようになってたから、体動かせる機会が増えるのはいい事だ」


 はしゃぐ星空と、手を引っ張られているはづきさんを後ろから見ていると、隣に並んだ海斗が謝ってくる。

 まあ、久しぶりに遊ぶのも良いなと思い、特に気にすることは無かった。

 というか、こいつ自然とうちのとか言っているな。俺とはづきさんの関係を度々からかってはいるけど、2人も大概だと思うよ?

 そんなことを考えて呆れながら海斗のことを見ていてふと気づいた。

 確か海斗は部活に入っていたけど、そっちは大丈夫なのだろうか。その疑問を聞いてみると。


「ん?ああ、全然大丈夫。うちそう言うとこ結構自由でさ。顧問に青春してきます!って言ったら『学生の本分を果たしてこい!』とか言ってむしろ送り出してくれたからな」

「そっか」


 部員達にも爆発しろとか言われたわ。呆れたようで、でも嬉しそうな表情で言う海斗は、部活の奴らの事も大事なんだという事が伺えた。


「ねえねえ、何して遊ぶ〜?」

「そうだなぁ、俺的にはボウリングとかやってみたいかな……はづきさんは何かやってみたいことある?」


 星空から声をかけられたので、やりたいことを提案してから、はづきさんに話を振ってみたところ。彼女は少し困ったように頬をかいていた。


「すみません……正直な事を言いますと、ラウンドツーに来たのは初めてなので、何で遊んだらいいのか分からなくて……」

「ああ……じゃあ、いきなりボーリングってのも結構ハードル高かったりするかな。カラオケとかの方がいい?」

「いえ、いい機会なのでやってみたいと思います。それにルールに関しては遊ぶ大全で把握してますから何とかなりそうです」


 むん!と両手を腕の前で構えたはづきさんが可愛らしい。

 確かに、VTuberの人ってあのゲームよくやっているイメージあるしルールはある程度大丈夫そうだな。


「ねえねえ、だったら2組に別れて点数を競い合ってみない?」

「いいね。だったら俺と恵、葵と月城さんの2組に別れたらちょうど良さそうだな」


 チーム分けを決めた海斗は、善は急げとばかりに受付用の機械に向かって必要事項を記入し始める。

 そして、係の人からシューズを借りてからボーリングの球を取ってレーンに向かう。


「そういえば、点数競い合うって事だけど。なんか軽い罰ゲームでも決めとくか?」

「罰ゲームねぇ、やるとしてもどんなことにするの?」

「うーん……まあ、後で決めればいいか」


 罰ゲームをしないかと言われて、何にするのかを聞いて見たところ、特に決めていなかったようなので軽く流す海斗。


「それでは、星空 恵。一投目行かせてもらいま〜す!」


 俺と海斗が罰ゲームの話していたら、星空が名乗りながらレーンに立っていた。

 そして、球をピシッとしたプロレベルに綺麗なフォームで投げる。

 その球は狙いたがわずにピン全てを倒した。


「いえーい!ストライクだぜぇ!」

「恵さん、ボーリング上手いんですね」

「ふふん、褒めてくれてありがとはづっち。どんなもんだい」


 ピースをしながらドヤ顔を見せる星空と彼女のことを褒めるはづきさん。

 罰ゲームの話があってから速攻で星空がストライク決めているところを見ると、これは結構分が悪い戦いなのではと思って緊張から軽く唾を飲む。

 そんな俺に対して海斗が声をかけてくる。


「罰ゲーム提案しておいてなんだが、俺は手加減しないから覚悟しておけよ」

「こいつ……。はあ……いいよ、俺とはづきさんの腕前を舐めるなよ」

「ふはは、生意気なことを言う輩には力の差を見せつけてやるさ」


 どっかのラスボスみたいなセリフを言ってふざける海斗に目にもの見せてやると指をつけて宣言する。

 運動神経の良いカップル対して、こっちはそれなりくらいの俺と初心者のはづきさん。

 あまりに不利な戦いだと分かっていても、男には戦わなければ行けない時があるのだと戦場に赴く戦士の気持ちで挑んだ。

 それに何より、はづきさんに少しでも良いところを見せたいからね。


「頑張ってください葵さん!」

「はづきさんに応援してもらえるんなら百人力だね」


 はづきさんの応援を受けて気合いの入った俺は早速一投目を投げる。

 その一投目は、ピンを一つだけ残す結果となった。

 次に2頭目を投げて最後の1本を倒す。

 ストライクこそは決められなかったけど、かっこ悪い感じにはならなかっただけ良しとするかな。


 席に戻ると両の手のひらをはづきさんがこっちに向けてきたのでハイタッチ。こうして手を合わせると、はづきさんの方が少し手が小さいことを意識してしまうな。


「カッコよかったですよ葵さん」

「ストライクを決めたられなかったのはちょっとカッコ悪かったけどね」

「いえ、カッコよかったですよ」

「そっか……なら良かった」


 そんな風にはづきさんと見つめ合って話していたら、肩に手をかけられたのでビクッと体を揺らしてそっちの方を見ると、ちょっと呆れた表情の海斗がいた。


「2人だけの空間作って俺たちのことを忘れないでくれよ」

「……うっせ」


 海斗にからかわれて頬が赤くなっていることを自覚したので、反論しようにもちょっとした悪態しか付けなかった。


 ちなみに、その後にそれぞれ球を投げたけれど、当たり前というか普通に海斗達のチームに負けた。

 それでも、はづきさんがコツを掴んだのか数投目にはストライクを決めるようになっていたから、今度の機会があったらいい勝負になるだろう。

 ボウリングをした後に場所を移動する。



 カラオケルームに入ってから海斗が俺とはづきさんを見てから、ニヤッと笑う。


「ということで罰ゲームやって貰うかな」

「変なやつは要求すんなよ」

「そんなことは要求しないって。ということで、月城さんと葵にはイチャイチャデュエットでラブソングを披露してもらいまーす」

「イチャイチャ……っ?!」


 面と向かってイチャイチャと言われたことが恥ずかしくて頬を染めて絶句していると、隣に座っていたはづきさんは結構ノリノリなのか、マイクを手にウキウキとした表情をしている。


「早速歌いましょうか葵さん」

「なんと言うか、楽しそうだねはづきさん」

「ふふっ。だってカラオケって久しぶりですから、思いっきり歌えるのが楽しみです」


 マイクを両手で握ってウキウキと体を揺らしている彼女を見て、何となく恥ずかしかっているのも変だなと思ったので変に体に入った力を抜いてマイクを取る。


「それじゃあ、とことん甘い曲でも披露しようか。海斗達が砂糖吐くくらいの」

「どんとこいです!」


 それから、2人で揃って歌を披露する。

 初めて一緒に歌ったはずなのに、ちゃんとデュエットを出来たのが結構気持ちよくて、楽しく一緒に歌えた。


 その後、無事に海斗と星空から砂糖レベル10とお墨付きを貰えて嬉しいような恥ずかしい気持ちになったけど……はづきさんが楽しそうだったし別に良いか。


 ちなみに、この時の経験から俺たちの声の相性がいい事が分かったので、2人で歌ってみたを出したりしたのはまた別の話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣に住んでいる美少女同級生は人気VTuber〜俺もVTuberデビューさせられ嫁認定された〜 旨みの化身 @umaminokesin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ