学校での2人の様子

 --side海斗--


 俺は今、クラスメイトの女の子に囲まれている葵の事を後ろの方から遠目に見つめている。

 一見モテているみたいな感じだろうけど、どちらかと言うとマスコットキャラに接するみたいな感じで扱われているのは、あいつらしいなと苦笑がもれる。

 お菓子を渡されたり、頭をわしゃわしゃされたりと、葵も文句を言いながらもされるがままにしている。


 実際、これがあいつのこれまでのクラスでの扱いだったのは間違いないけど。

 最近は絡んでいるクラスメイト達も少しはわきまえるようになったのも事実だ。

 なぜなら、あいつにはお姫様がいる訳だからな。


「葵さん」

「頭わしゃわしゃするのやめろお前ら……あっ……はづきさん」


 いつの間にかお互いに名前呼びになっていたのか、女の子達にもみくちゃにされていた葵は、月城さんの事を視界に収めると、しかめっ面からぱっと花が咲いたような笑みへと変わって、月城さんの名前を呼んだ。

 月城さんもその笑みを受け取って、葵が女の子達に絡まれていたせいか少しむっとしていた表情から、同じような笑みに変わった。

 その瞬間、2人だけの空間がそこに展開されたのは間違いない。

その雰囲気を敏感に感じとったのか、葵に絡んでいた女の子達が月城さんの方に向いて、構っていた葵を差し出す。


「あっ、月城さん。はい、七海君をあなたに託します!」

「俺はものじゃないぞー。たくっ……それで、はづきさん、どうしたの?」

「えーとっ……その、特に用事はないんですけど、葵さんと話したいなと思って……」

「ふふっ、そっか。じゃあ、なんか話そっか」


 2人が楽しそうに会話を始めたのを、さっきまで七海に構っていた女の子たちは少し離れたところから微笑ましそうに見つめる。


「いやぁ……眼福ですねぇ」

「美少女と男の娘が仲良さそうにしているのって、なんか……いいね」


 なんか、目覚めているな。


 まあ、実際2人が仲良さそうに話しているのは絵になる。

 クラスメイト達も同じように考えているからか、教室の雰囲気はホンワカしたものになっていた。

 月城さんが葵との関係を隠す気がさらさらないからなのか、この光景がクラスでの名物になっているのだ。


「はづっち、変わったねぇ」

「だなぁ……」


 いつの間にか隣に立った恵に声をかけられて、俺は同意の言葉を返す。

 恵が言う通り、月城さんはまえよりもクラスメイト達とも積極的に関わるようになったし、明るくなって色々と変わった。

 これも全部、葵と関わったからと言うのもあるけど、お隣さんバレがあってからなんかタガが外れたのかね。


「ななみんも楽しそうだねぇ」

「最近は月城さんと一緒に行動するの多いからな。というか、もうカップルだろあいつら」


 カップルにしか見えないけど、実際のところ2人はまだ付き合っていないと言うのもこの前聞いたんだよなぁ。この雰囲気で付き合っていないのは嘘だろ?とツッコミを入れたい。

 けど、そこを指摘するのは無粋だという事も理解している。

 そして、クラスメイト達も同じことを考えているだろう。クラスメイト達が俺と恵の関係性に言及していないことからも分かるのだが。


 クラスメイトたちの総意はひとつ。

 この天然記念物な2人を愛でよう。


「でも、海斗くんさ、ちょっといじけてるでしょ?」

「ん?何言ってんだよ恵」

「だってー、いつもだったら率先してななみんに話しかけに行くのに、遠目に見つめちゃって〜。もっと構えって言っている感じがしたよ〜?」

「……ばーか。別にそんな事ないよ、多分」


 恵に指摘された事が結構図星だったので、反論したくても自信の無い言葉しか返せなかった。

 たしかに最近は月城さんと葵が一緒にいる事が増えたからか絡みに行くことを少し控えるようにしていた気がする。これは、友人が恋人を優先してしまう現象と同じ感じなのかね。


 そんなふうに1人で納得していると、さっきまで隣にいた恵が気づいたら葵と月城さんに絡みに言ってた。


「はづっちー!」

「わっぷ。恵さん?どうしました?」

「はづっちにからみに来ました〜」

「ふふっ。なんですかそれ。それでは私は恵さんのほっぺでもつつきましょうかね」


 月城さんにほっぺをつっつかれて、ぴふょーと情けない空気を口から漏れださせる恵。

ふと、恵がちらっとこちらに視線を向けてウィンクをひとつ送ってくる。


 これはしてやられたな、そんな事を思いながら苦笑を漏らす。俺の彼女は本当にしたたかと言うか、気が利くというか。本当に良い彼女だ。


「よっ、葵。なんか機嫌良さそうだな」

「おっ……海斗。まあ、たしかに機嫌いいかな」

「そっか、そりゃよかったな」


 お膳立てされたのを受け取らないのも変だし、有難く受け取らせて頂きますかね。



「そういえば、今度一緒にお出かけしようって言ったよねはづっち」

「確かに言ってましたね。いつお出かけしますか?」

「私は何時でもいいよぉ〜。あっ、そうだ!海斗くんとななみんも一緒にお出かけしようよ!」


葵と談笑していたら、恵から満面の笑みで声をかけられる。


「Wデートしよっか!」


恵のその言葉にクラスメイト達がザワついたのは間違いない……


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次の話はWデートにするかもだし、別の閑話挟むかもです


自分が今やっているアプリで新しく出た曲を聞いて、激重感情ってこういう事かぁと思いました。

入手はできてません……

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