グリーンタワー

@kou192

グリーンタワー

ゴミ処理場の煙突のような、一本の煙突。代々木公園に建ったその煙突は、一本で関東地方の、二酸化炭素と酸素の濃度をコントロールしていた。もはや地球の環境の維持に、自然の緑は必要なくなった。コンピューターで制御された、このグリーンタワーがあればいい。

 機械が、自然の代わりを完璧に担う時代になっていた。人類は、自然を滅ぼすことを選択した。偶然にまみれた危険な自然から、人間の制御下にある安全な自然へ、人類は地球を生まれ変わらせようとしていた。そして着実に木々は伐採され、都市の面積が広がって行った。もはや純粋な自然を、心の底から、人生の糧として必要とする人類もいなくなりつつあった。そういう古い世代の自然への感覚を、新しい人類は共有出来なくなっていた。新しい人類が求めたのは、コミュニケーションと、それを支えるツールだけだった。

 新しい人類は、新しい地球を夢見た。自然の地球ではなく機械の地球を、どこまで行ってもテーマパークのような都市が広がっている地球を。古い世代の、かつてエコと呼ばれた、環境保全の思想を捨て、機械仕掛けの地球を夢見て、胸をわくわくさせながら、目を輝かせながら生きていた。

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