最初の候補その3

 ん?候補が物騒だって?

 確かに紹介した異世界はどっちも危険が伴っているね。


 やはり、最初の旅行は堅実で危険の少ないものにしたいかい?それならこの世界はどうかな?


 どこまでも果てしなく続く美しい街並み、先進的な乗り物、不自由ない生活…この世界は非常に高度な発展を遂げている。見た目に違わず、危険は非常に少ない。


 まるでユートピアに思えるだろう?この町が特別というわけではなく、この世界の多くの街がこうなっているんだ。君の世界はあとどのくらい経てばこの水準に届くようになるかな?


 医療も物凄く進んでいて、この世界に生まれればたんまり堪能することができる。大体千年は豊かさを享受することができるかな?


 …ん?よく聞き取れなかった?1000年だ。長い人だと1321歳まで生きた記録があるようだね。


 考えられない?まあ単純に医療技術だけでここまで長生きしているというには少々強引だろうな。勿論ほぼ健康寿命が占めている。


 旅行どころか引っ越したくなってしまうかな?

 でも、こんなに過ごしやすい世界でさえも生きてくには労働しなければならない。…そう落胆しないでくれ。


 ま、こんなに高度な文明にもなると、労働者も他の世界とは比べ物にならない程高度な人材である必要があるんだ。

 無論一握りの天才だけで回るような世界じゃない。相応に充実した教育環境が整えられている。200年もの間、教育を公私問わず無償で受けることができるぞ。


 そう、生まれてから大学を出るまでの200年だ。

 大分頭おかしい期間にも思えるだろうが、君の世界では80歳位まで生きると仮定して22歳で大学を卒業すると…大体寿命の2~3割になる。この世界だと2割以下になる場合が多いから、人生の割合で見れば意外にも短い方なんだ。

 君の世界と比べればね。


 どちらにしろ、学生の期間が非常に長いというのは天国のように捉える者もいれば地獄のように捉える者もいるだろう。

 君の世界でなら大学院レベルの内容も、この世界では小学校辺りで取り上げられているかもしれない。


 遠い世界でのお話ということであまり深刻にならないでくれよ?この世界で用いられてる理論なんかを君の世界に持ち帰っても使い物にならない可能性が高いからね。

 あくまでもエンターテイメントの一環として楽しんでもらいたい。


 よく現代人が過去に行って当時の人々を驚かせる物語があるだろ?それの当時の人々の方の気分を味わえるだろう。


 世界ナンバー1641。

 この世界を選んだなら、児童養護施設でも案内しようか。老人よりも大人びた子供たちが君を歓迎するだろう。


 …さて、これで最初の候補となる異世界の簡単な説明はおしまいだ。この中から最も行ってみたい異世界を一つ選んでほしい。

 選ばなかった異世界も、機会があれば訪れるかもしれないから気軽に考えてくれ。


 考える時間が必要でも問題ないから安心してほしい。どの道しばらくは君の世界を観察させてもらうからね。


 今回見せた写真は部屋のタブレットからも見ることが可能だ。旅行中、君が撮影した写真は随時そのタブレットに保存する予定もある。思い出を振り返る頃にはどうなっているかな?

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異世界航空ベグラント便 蓬竜眼 @PlatinumKiwi

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