5 闇
ここから先、どう生きていけば。
すべてを失ってしまった
「またいつかここで」この約束が果たされる日は、来ない。
きっとそうだ。私はもう彼に会う事はないし、彼も私に会う事は無い。
気が付けば、火は消えていた。
涙さえも出なくなった目で、灰をじっと見つめた。
5 闇
闇の中、誰かが自分を呼ぶ声だけが聞こえる。
何と言っているのかは分からない。
私は呼ぶ声を聞くだけ。
ただ、声は自分を呼ぶだけ……
「おい、聞いてるか?」
声をかけられてはっとした。
「ぼんやり聞いてないで少しは頭を使ったらどうだ? まあお前にとっては縁の無い話だから寝かかるのも分からなくはないが」
そう言って苦笑し、前髪を手で軽く触れた。彼の癖だ。
「昨夜はいつ頃寝たんだ?」
皮肉屋ながらも何処か自分の事を想ってくれる人。前髪を軽く触れる癖。誰でもなく彼なのだ。
これは夢だ、これは夢だ。
違う、現実なんかじゃ、ない、これは、夢だ。
闇の中で呼ぶ声が、ふと彼の声を重なった気がした。
声を聞けば貴方は。 世界の半分 @sekainohanbun17
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