思い出話

liol

神社の子

 ついこの間、ガキの頃に住んでいた田舎に帰って昔の仲間と話したんだけどさ。


 誰と誰が結婚しただとか。誰が大企業で昇進しただとか。そんな話に花を咲かせていると、ある男が言った。「なあ?神社のあれ、取り壊されたらしいぜ」

「神社のあれ」というのは、俺たちが小学生のころ遊び場にしていた蜘蛛の巣とミミズだらけの小さな神社にあった遊具のことで、ジャングルジムを球状にして地面に水平に回転するようにしたものを想像してもらうといい。ほかにも滑り台やらシーソーやらの遊具があったが、子供達にはそれが一番人気の遊具で、女の子たちは中に入って談笑していたり、男の子たちは上に誰が一番早く登れるか競争したりしたりしていて、よく男女で取り合いになったものだ。

「俺たちが遊んでた頃から錆びてたもんなー。」

 回る遊具って言ったって、鉄の塊に子供が数人乘った重さを、子供が回せるわけもないので、大人に頼むのだが、錆が手につくってんで、よく嫌がられたものだ。

「そうそう。まあそもそもこの辺子供居ねえしなあ。俺もお前も東京に出ちゃったし。」


 神社の話はこれくらいでほかの話題に移ろうって時に、口を開いたやつがいた。

「神社っていえばさ。最近変な夢を見るんだ。」みんなが手に持っていた酒を置いた。

「どんな夢?」彼の隣に座っていた女が尋ねる。

「神社で遊ぶ夢なんだけどさ。毎回出てくる奴は違うんだけど、決まって現れるやつがいるんだ。」

 神社で遊ぶ夢は俺もよく見る。昔の仲間たちと遊ぶ夢だ。

 一人が視線を上げた。

「もしかして、そいつって大けがをしていないか?」

 一人、また一人とはっとした顔をする。

「まるで、高いところから落ちたみたいな。」

「ぐにゃりと腕が変な方向に曲がっていて。」

「目に眼帯をしていて。」



 そうやってみんなが同じ神社の夢を見ているらしい。

 けれども何かがおかしいんだ。

 _____俺が見る夢じゃ、みんな五体満足だ。


 幹事役の奴が立ち上がっていった。

「そろそろあいつの墓参りにもいかないとな。」

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