第9話 「個人情報」
「気持ちがいい天気だね、ロディ」
「にゃ!(そうね!)」
11月1日午後1時。
1時間ほど前に今までで1番清々しい気分で起きた僕は、シャワーを浴びた後ベランダでしばし黄昏ていた。
仕事をやめたことから来る開放感、ほぼ計画通りに事が進んだことから来る達成感、そして本当に僕がずっと望んでいた退屈しない新生活が始まったことから来る充実感。
今僕は、楽しすぎてニヤニヤしてしまっているだろう。
「ふぅ…さて。
やっと少しずつ気分が落ち着いてきたし、昨日の振り返りをしようか、ロディ」
「(いいわよ!でも、そんなに振り返ることってあるかしら?私が覚えてるのは、神楽を今後も奴隷として自由に呼び出せるってことくらいね)」
「もっと色々あっただろ?…まぁいい、じゃあその事から振り返るか?
そうだな…ロディの言う通り、神楽は僕の呼び出しを拒否しないはずだ。
神楽の性格的に自分の写真がばら撒かれるだけならまだしも、恋香を半人質状態にしている以上、恋香を庇うために僕に抱かれに来るだろうさ」
まぁ流石にたったそれだけの取引がずっと効力を持つとは思っていないが、そこで役に立ってくるのが中毒魔法だ。
神楽はなんの取引も関係なく、自分から僕を求めるようになる。
そう遠くない未来にそれは確実に訪れるだろう。
「もし神楽が空との約束を破って、呼び出しを拒否したらどうするの?」
「その時は僕は約束通り、恋香を殺しに行くさ。
恋香の魔力は覚えたしそんなに遠くなければ魔力探知で探せるからね。
…まぁでも、できれば殺したくはないな。
神楽が約束を守ることを願うよ」
2030年という現代において、"人を殺す"という行為は人間であるための見えないラインを踏み越える行為だと僕は思う。
もうすでに人間をやめつつある自覚はあるが、その見えないラインはできることなら踏み越えたくない。
…僕にもまだ、常識が残っていたということだな。
「(ふーん。それは、恋香も空の興奮を掻き立てる立派な女体だから殺すのは惜しいってことよね?)」
「ははは…まぁそういうことだね」
ロディは、時折こうしてナチュラルにサイコパスな発言をする。
しかしそれは人間視点から見てというわけであって、ロディはあくまでも人間のことは嫌悪していて、女のことは僕に犯されるためだけの存在としか思っていない節がある。
男のことはそもそも認識することすらしてない様子だ。
「で、だ。そこで問題になってくるのが恋香の位置情報だね」
僕は昨日恋香の服を弄り、ブラジャーの中に発信機を入れ込んだ。
「(あ〜!そういえば恋香に発信機をつけるって言ってたわね!…あれ?ってことはもう滅鬼士の本部が分かったの?)」
「いや、さっきスマホで痕跡を追ってみたが、残念ながら渋谷区に入ったあたりから急に反応が消えてる。
多分だけど、発信機の電波を阻害する電磁波か何かを広範囲で飛ばしてるんだろう。
まぁ、政府に秘匿されてる学校が発信機程度で見つけられるわけがないと元々思っていたから、そこはどうでもいい。
ただこれで、学校は渋谷区より右にあると確定した」
元々ロディの情報から、東京と京都に2校滅鬼士を育成する学校があると確定している。
この情報はロディから意図せず知ってしまったのは否めないが、この情報から千葉県や茨城県にあるという可能性は0なので相当絞れた。
「(へぇ〜?流石は空ね、動き始めて1日目で敵の本拠地を絞れるなんて。…ふふっ、ちなみに私、滅鬼士の本拠地の場所知ってるけど知りたい?)」
美人な猫顔がニマッと笑い、僕を揶揄ってくる。
「そんなことをすれば今すぐ感度1000倍にして身体中を弄るぞ」
「にゃっ!?(ひゃっ!?や、やめてっ!あれはもう嫌なの〜!!)」
にゃ〜!と言いながら僕の手から逃れ、部屋の方へ逃げていくロディ。
僕はそんな微笑ましい光景に笑みを浮かべながら、1人思考する。
昨日は"ほぼ"問題なく計画通りに事を進めれたが、1つだけ問題を上げるとすれば、恋香に僕という存在の情報を持ち帰らせたことで予定通り僕を討伐しにくるよう仕向ける事ができるか、という点だ。
現状討伐しにくると思っているが、前も言ったが流石の僕も滅鬼士の本部がどう判断するかは全く分からない。
神楽を監禁せず逃したのは恋香だけでは本部が動かないと思った上で念の為、という意味もある。
僕の情報をより持っている神楽が本部に伝えれば、流石に動くと思いたい。
…しかし、それでも動かないという可能性を考え、神楽や恋香にはもっと僕の情報を流しておくべきか。
なんなら、"完全模倣"以外の僕の個人情報は全部流していいと思っている。
本部のだいたいの場所をロディというチートで知ってしまった以上、そうしないとフェアじゃない。
「今日の夜…いや、今日からとりあえず毎日神楽を呼び出すか。
情報を流すのと、あの堅物美少女が快感でどう変わっていくのかも気になる」
あえて本名のままRINE交換したのもそのためだ。
僕という存在の情報を流し続け、滅鬼士の本部に危機感を持たせる。
まずはそれを重点として行動していくとしよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
side神楽 11月1日午後3時。
朝に産婦人科に行き無事にアフターピルを処方してもらった私は、駅のトイレですぐにそれを飲んだ。
それで一安心し、ふと時計を見るとまだ午前中だったので、予定通り授業に出るつもりはなかったが、流石に時間が余り暇だったので空のことを話すために滅鬼士の本部に顔を出した。
そして、誠心誠意真面目な態度で詳しく説明すると、流石に悪鬼ではないという部分については流されたが、なんと今度C級滅鬼士の方を2名派遣すると言ってくださったのだ。
ダメ元でもなんでも言ってみるものだな。と思ったが、私は不安になる。
E級の私たちの手に負えない=中級悪鬼以上ということになり、C級滅鬼士ならば中級悪鬼でも危なげなく対処できるという結論に至るのは大いに理解できるが、返り討ちに合うのでは?とどうしても思ってしまうのだ。
…いや、失礼だな。
C級の方達も私からすれば次元が違う存在だ。
空が討伐されるのを願うしかないだろう。
もし呼び出されても数回の我慢だ、と自分に言い聞かせ、寮の近くのいつも利用するカフェでコーヒーを飲んでいると、ふとRINEに通知が来る。
嫌な予感がした私は薄ら目で通知を見るが、案の定その嫌な予感が当たり、その通知は空からのものだった。
内容は、八王子にあるマンションの住所と室番号、そしてそこに20時に来いというものだった。
この男…昨日の今日でまた私を汚すつもりか…!と思ったが、ラブホテルではないことに少し驚く。
いや、それどころかもしやこの住所は空の家なのでは…?と怪しんでしまうほど、お高めのなんの変哲もないマンションだったのだ。
「もし本当の家なら流石にバカすぎる。
私とヤリたいという欲求に支配されそこまで頭が回っていないか、それとも何か作戦があるのか…」
…いや、自分で言っておいてあれだが本当の家を教える作戦にどんなメリットがある?
やはりとんでもないバカなのか?
分からない…空のことが何も分からない。
徹底的に調べなければ。
空が私を呼び出すというのなら、私はそれを利用しあいつの情報を全て掴む。
決してあいつとヤリたいというわけではない。
あいつが呼び出すから、拒否できない私は仕方なく応じるだけだ。
全てはあいつのせい…そう、あいつのせいなんだ。
私は端的に"わかった"と送った後、コーヒーをグビッと一気に飲む。
「寮に帰って少し仮眠するか…」
ここから八王子まで行くのに電車で約30分ほどかかることを考えると、マンションの場所的に19時の電車に乗れば十分間に合う。
今から仮眠すれば3時間は寝れるだろう。
正直昨日はあまり寝れた気がしていないため、またあの男のしつこく長いプレイに付き合えば身体が壊れかねない。
「くそ…私の生活があいつ中心になるよう塗り替えられている気分だ」
そう愚痴っても、現実は何も変わらない。
私はノコノコと奴隷のようにあいつの指定場所に行くしかないのだ。
はぁ…とため息をついた私は会計を済ませ、寮に帰り仮眠するのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
午後7時55分。
空に指定されたマンションのエントランスに着いた私は、一応スマホのカメラを見ながら髪を整え、RINEで言われた室番号を打ち、呼出ボタンを押した。
『はい』
エントランスの機械からたった2文字の"はい"という言葉が発せられただけだというのに、私の心臓が波打ち鼓動が早くなる。
間違いなく、昨日何度も聞いたあの男…空の声だ。
「…神楽だが」
なんとかそう答えた私は、バレないようにそっと息を呑む。
『ああ、神楽か。待ってたよ。どうぞ』
白々しく"待ってたよ"なんて言う空に苛立ちを感じつつも、こういう高めのマンションに入ったことがなかった私は、少しだけドキドキしながらマンションの中に入る。
エレベーターに乗り、25階のうちの15階にある空の部屋の前に着いた私は、一度深呼吸をし、覚悟を決めてインターフォンを押した。
「えと…神楽だが」
こういう時はまた同じことを言えばいいのかどうかが分からず、とりあえずもう一度名乗っておく。
『今行くよ』
インターフォン越しから、私の心情なんて全く気にしていなさそうな空の声が聞こえてきた後、ドア越しにかすかに靴を履く音が聞こえてくる。
本当に、空がいるのか…?と思った瞬間、そのドアは開けられた。
「やぁ、待ってたよ。どうやら逃げずに来たようだね。約束を守る子は好きだよ」
そう言って私の目を見て微笑んでくる空の目をなぜか見れず、私は無意識に目を逸らしてしまう。
こ、こいつこんなにイケメンだったか…?
男性アイドルでさえ顔負けのイケメンぷりだ。
…思えば、昨日は混乱しすぎで顔なんてほとんど見ていなかったかもしれない。
「ははっ、流石に怒ってるか。
まぁ、とりあえず上がりなよ」
目を逸らしたことを怒っていると勘違いしたのか、私は無理矢理腕を掴まれ、部屋に連れ込まれる。
…強引な男。
「ちゃんと化粧してくるなんてちょっと意外だったな」
リビングに連れてこられ、物珍しさから部屋を見ていると、空がそんなことを言ってくる。
「勘違いするな。貴様のためにしてきたのではない。私は出かける時、化粧は欠かさないだけだ」
咄嗟に否定したが、嘘だ。
私はなんなら普段化粧はしない方だというのに…なぜか、空に会いに行くとなると化粧をしておきたい自分がいた。
「へぇ?その割に昨日はしてなかったみたいだけどね」
すべてを見通しているような目でそんなことを言ってくる空に耐えきれず、私は言葉に詰まる。
結局仮眠を2時間で終わり、1時間かけて化粧したことなど絶対に知られたくない。
「…そんなことはどうでもいいだろう。
それより、このマンションは貴様の家なのか?」
私は無理矢理話題を変える。
空のペースに呑み込まれそうになったが、私の目的はあくまでも最初から空の情報を引き出すこと。
私はこいつの本名や歳、趣味なんかも全て把握してやる。
「ああ、そうだよ。
家賃15万でさー、結構高いんだよね」
「っ!そ、そうか。家賃15万は…確かに高いな」
なんの躊躇いもなく自分の家だと白状した空に、私は驚きを隠せない。
こいつ…一体何を考えている?
私をなめている?私になら何を知られても問題ない、と?
…いや、それでいい。今はなめられている方が好都合だ。
どうせなら、聞き出せるだけ聞き出してやる。
「だろ?てかさ、貴様なんて呼ばずに空って呼んでくれよ。RINE交換してるし、僕の名前知ってるはずだろ?」
「っ、あっ…」
優しく顎を掴まれ、私は壁に追いやられる。
空の整った顔が目の前に来てつい身を委ねてしまいそうになるが、私はなんとか踏みとどまった。
「そ、空なんて偽名だろう!?
貴様の本名を教えろ!」
「ん?いや、空が本名だけど?
神木空。それが僕の本名だ」
「え………?」
あまりの衝撃に言葉が出ない。
神木空…?ほ、本当にそれがこいつの本名…?
わ、分からない。もう何を信じていいのか分からない。
「きさ…空は、一体何者で何を考えているんだ。
何を目的として私たちに接触した」
もう考えても埒があかないと思った私は、思い切って聞いてみる。
こいつと変な探り合いをするとこっちのメンタルが持たない。
「質問が多いなぁ。まぁ答えられることは答えてあげようか。あっ、コーヒーいる?」
「…頂こう」
すぐにでも服を脱がされ襲われると思っていたが、意外にもちゃんと話し合うつもりなのか、空はコーヒーを2人分用意しテーブルに置いた。
私は椅子に座るのを少し躊躇ったが、空が対面の椅子に座ったため、遠慮がちに座る。
そうして、空が色々と話し始めた。
「……………」
約30分ほど話していた空の言っていたことをまとめるとこうだ。
神木空、19歳、身長177cm、60kg。
高校は都内でも有名な偏差値70の進学校、黒柳高校。
大学には行っておらず、今はフリーランス?をしている。
親とは離別しており、一人暮らし。
趣味は、最近になってゲームにハマっているらしい。
彼女は今はいない。
などなど、お見合いか?と思うほど空のプライベートな個人情報がこれでもかと聞けた。
本当かどうかは分からないが、この情報を本部の情報分析部に持ち帰れば、空の身元は全て判明することだろう。
謎に包まれていた空の正体が、一気に暴かれることになる。
…しかし。
「貴様のその謎の力はなんだ。
そして、私をその…襲ったのはなぜだ、どんな理由があった」
確かに空の表面的な情報は知れたが、やはり空の本質的な情報は一切分からない。
「それは教えるつもりはないな。
ていうか、こんなにも個人情報を教えてあげたのにまだ聞き出すつもりか?」
「黙れ。貴様は私をレ、レイプしたんだぞ!
その私が貴様に色々と聞くのは当然だろう!」
しかし、確かに空は私に十分過ぎるほど情報をくれた。
あいつの立場からすれば、情報を流すメリットなど一切ないというのに。
…やはり、思ったよりも優しいのか?
「また貴様呼びに戻ってるし…。
それに、レイプじゃなくて合意だっただろ?
ちゃんと君が、僕の奴隷になるって条件を呑んだんじゃないか」
「そ、それは…!きさ…空が私や恋香を殺そうとしたからだろう!?
私はまだ死にたくはないんだ。大切な人を守るためなら命なんて投げ出すが、命を投げ出す以外に助かる道があるのならそれに醜く縋る。
空に身体を捧げるという屈辱的な道しかないのなら、私は喜んでこの身を捧げよう」
私の心からの気持ちをぶつけると、空はふっ。と笑う。
バカにした笑いというよりも、ただ楽しげに笑っただけのように見える。
「ならその身を僕に捧げてもらおうかな?
ちょうど話すのにも飽きたしね」
「あっ♡くっ。い、イヤらしく触るな…!」
まだ空の知りたいことはたくさんあるにも関わらず、胸を揉まれるだけで考えていることがすべて飛び、意識も飛びそうになる。
またこれだ…!空に触られるだけで、異常なほど身体が反応してしまう。
て、抵抗できない…!また私は、何時間もこいつのいいようにヤられるんだ。
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side空
「はぁ…♡はぁ…♡」
神楽とヤリ始めてから3時間ほど。
神楽は息は絶え絶えにし、僕のベッドの上でダウンしている。
しかし、今日は意識はあるようだ。
昨日は意識を失っていたことを考えると、たった1日で神楽は成長しているらしい。
流石は滅鬼士。普段から鍛えているだけあって体力が多いみたいだな。
「神楽、今日は泊まっていきなよ。
どうせ明日も呼び出すからね」
「くそ…この鬼畜男…!こ、こんなことを毎日やられたら私は死んでしまう…♡」
神楽は相当参っているのか、ベッドでダウンしたまま動く気配はない。
「殺すつもりはないって言っただろ?
もし本当に死にそうなら回復してやるさ」
"超回復"は自分だけでなく他人も回復できるため、やろうと思えば一睡すらせず神楽とヤり続けることはできる。
ただ、流石にそこまでヤルつもりはない。
「はぁ…はぁ…き、昨日恋香に使ったあの謎の回復能力か。
どうせ、それについても言うつもりはないんだろう」
はぁ…とため息をついた神楽は、ふらふらしながらも床に散らかっていたブラジャーをつけ、パンティーを履き立ち上がる。
「待て待て、どこに行く?」
僕がそう尋ねると、神楽はキッと僕を睨んでくる。
「…家に帰る」
「ん?僕は泊まって行けと言ったよな?
逆らうつもりか?」
そう言うと、神楽はさらに目つきを悪くして僕を睨む。
「貴様は暇かもしれないが、私は今日も悪鬼退治をしなければならないんだ!
貴様のせいで出かける時急いでしまって、つい刀を家に忘れてきてしまった。
今から取りに帰れば恋香との集合時間に間に合う。
…逃げるつもりはないし、必ず戻ると約束する。だから1度家に帰らせてくれ」
そんな神楽からの切実な願いに、僕は考える。
観察していた限り、神楽はなにやら悪鬼のことを深く憎んでいる様子が多々見受けられた。
毎日悪鬼退治をしないと気が済まないんだろう。
それに、必ず戻ると本人は言っている。
なら1度家に帰してやってもいいし、悪鬼退治くらい行かしてやっていいが…。
……………いや、待て。
家に帰るだと?
重要なことを流すところだった。
神楽の家を知った程度で本部の場所が分かるとは思っていない。
しかし、近づく可能性はある。
だからこそ、神楽の家を知っておいて損はない。
「ごめんごめん、そういうことだったのか。
なら帰っていいよ。
なんなら、車で送っていこうか?」
「…なんだと?」
なにを考えているのか分からない、といった表情で困惑した様子の神楽。
僕は大型車の免許証も持っているというだけであって、もちろん普通車の免許証も持っている。
「車のナンバーがバレれば、貴様の個人情報は本当に丸分かりになるぞ」
車のナンバー程度じゃ個人の特定は難しいが、滅鬼士本部からすれば簡単に探れる。と神楽は暗に示してくる。
…しかし。
「だからどうした。
さっき君に個人情報は教えただろ?本名、住所、出身高校すら教えたんだ。
それ以上何が漏れるって言うんだ?」
車のナンバー程度から分かる個人情報なぞ、すでに神楽に教えている。
「わ、私が言っているのはそういうことではない!本当に貴様のその個人情報が裏付けられてしまうぞと言っているんだ!」
「いいよ、僕は嘘をついていないからね。
勝手に裏付けていればいいさ」
「………」
神楽が黙り込む。
僕からすれば、神楽がなぜそんな忠告をするのかが謎だ。
大人しく僕から情報を奪い、本部に伝えればいいものを。
「空…貴様分かっているのか」
「ん?分かっているのかって、何を?」
急にそんなことを言われるが、何のことを刺しているのか分からない。
神楽はしばらく逡巡した後、その口を開いた。
「貴様はそうやってずっと楽天的に考えているが、今にも討伐隊が組まれ、貴様は殺されることになるぞ」
「……へぇ?」
まさか、神楽自身からそのことを聞くことになるとは思わなかった。
唯一不安だったが、やはり計画通り僕を討伐するために動き出したというわけだ。
そして、神楽がそう言うからには近々誰かしらが派遣される可能性が高い。
しかし…。
「わざわざ教えてくれるなんて神楽は優しいんだな。
言わなかったら僕は何も知らずに死んだかもしれないのに」
なぜその情報を漏らしたのかが分からない。
優しいというより、阿呆としかいえないな。
「べ、別に優しくしたつもりはない!!
貴様は何のメリットがないにも関わらず、情報を教えてくれた。ならば私も教えなければ、フェアじゃないだろう」
「フェアじゃない、ねぇ…」
図らずも僕と同じ考えだが、本質がまるで違う。
僕がフェアにする理由は、ロディというチートを使ってしまった詫びと、フェアにすることでより楽しみたいということの2つだ。
つまり、メリットがあるんだ。
しかし、神楽からはメリットが一切感じられない。ただ僕に教えただけに見える。
…いや、案外深いメリットがあったりするのか?
とてもそうは思えないが、可能性が0とは言い切れない。
「まぁいいや。どっちみちそんなこと分かっていようが分かっていまいが関係ないしね。
それより、行くなら早く行こう」
僕も服を着て、財布などが入っているカバンを持つ。
「本当に送ってくれるのか?」
「ああ、そう言ってるだろ?」
「私は遠慮なく空の車のナンバーを見るぞ」
「スキにしてくれ。なんなら、免許証も見せてあげようか?」
僕がそう言うと、神楽は一周回って呆れたような表情をする。
「…貴様がバカなのは十分わかった。
どうせ私に拒否権はないのだろう?早く車を出せ」
「ふっ、はいはい。じゃあ行こうか」
「っ♡」
僕はイヤらしく神楽の腰に手を回し、外出用のカバンを持つ。
そうして、僕たちは神楽の家へと向かった。
捨てられ女神の契約者〜実は異能力があった現代日本で、女神を救うために女とヤリまくる〜 夜空テラス @Yozora_Terasu
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