第8話 「純潔の喪失」

時刻は午前5時。

約3時間ぶっ続けにヤリ続けたせいか、神楽は意識を失い、股を下品に広げたままビクビクと痙攣している。


案の定処女だった神楽は最初こそ痛がっていたが、"対象の感度を1000倍にする魔法"を少し調節し、感度をたった10倍にするだけで痛みを忘れ良がっていた。


恋香にも感度10倍の魔法をかけ一瞬で感じていたことから、100倍にするだけでも身体を壊しかねないだろう。

別に身体を壊すつもりはないため、1000倍は封印。100倍はもしも身の危険を感じれば使うとしよう。基本的には10倍を使う。


「これでよしっ、と」


意識を失っている神楽を仰向けにし、神楽のスマホをカバンから漁りフェイスIDでロックを解いた後、勝手にRINEを交換する。


そしてさらに財布から生徒手帳的な物はないかを探し、入っていたため僕は手に取る。


「水蓮女子学院、か」


もしかすれば生徒手帳に滅鬼士の本部の名前でも書いていないかと思って見てみたが、流石にそんなことはなかった。

水蓮女子学院とは東京のそれなりにいい偏差値の女子学院であり、変な噂なんかも聞いたことはない。


もちろん裏で滅鬼士を育成する施設があるという可能性はあるが、おそらくは世を忍ぶ仮の身分としてこの生徒手帳を持っている線が濃厚だろう。



そこまで結論付けた後、僕はその生徒手帳を仰向けに寝ている神楽の横に置き、身体全体が映るようにカシャっと写真を撮る。


「神楽、今日は楽しかったよ。

またRINEで呼び出すから、僕が呼べばすぐに来いよ?

来なければ恋香を殺しに行くし、君のあられもない画像をネットにばら撒く。

ま、君なら来てくれると信じてるよ」


と、意識を失っている神楽に言っても仕方がないため、僕はあられもない画像付きでRINEでも同じことを送る。


まぁそんな脅しをしなくとも僕のあそこと子種の中毒になる魔法をかけたため、よっぽど精神力が強くない限り神楽との性行為を続けていれば向こうから求めてくるだろう。


逆に欲しがってくる神楽に可愛い友達を連れてきたらヤってあげてもいいよと脅すのも面白そうだ。


「…ま、流石にお金は余分にあげるか」


滞在時間フリータイムでの支払いはすでに済んでいるが、僕は優しさとピル代を含め3万円を神楽の財布に入れた。

滅鬼士の本部とやらが悪鬼退治にお金を払っているならそれなりに持っているのかもしれないが、そうでないなら学生からすれば3万円は大金だろう。


そうして、僕はサッとシャワーだけ浴びて部屋を後にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーー



「ロディ、もう透明化はいいよ」


ラブホテルを出てすぐ。

僕は近くにいるであろうロディにそう言う。


「にゃ!(あらもういいの?ふふっ、空!あなたやっぱり素晴らしいわ!想像以上に神力が回復したもの!)」


ただひたすら僕が気持ちよくなるよう神楽とヤった甲斐があったようだ。


「そっか。ロディが喜んでくれるのが1番嬉しいよ」


僕はロディを抱っこし、頭を撫でる。


「にゃ〜(あっ、も、もうっ!空ってばすぐ私を撫でるんだから!ふふっ、でも今はいいわよ?気分いいから!)」


にゃ〜にゃ〜♪と気分良く鳴くロディ。


許可も得たことだし、僕はいつも通りにロディを可愛がる。


「(…それにしても空、随分と激しかったわね。

正直、あなたの優しそうな見た目とのギャップでビックリしちゃったわ)」


少し、ジトッとした目で僕を見つめてくるロディ。

猫だからジトッとしているのかは分からないが。


「やっぱり見てたのか?ヤってる最中、ロディはどこにいるんだろうって少し気になってたけど近くにいたんだな」


「(み、見るに決まってるじゃない!近くにいる方が性行為で発生するエネルギーを神力に変換しやすいし!

決して個人的趣味で見てたとかじゃないから!)」


にゃん!(ふん!)と恥ずかしさを隠すようにそっぽを向くロディ。


そんな姿も可愛いなぁと思いつつ、僕は欠伸が出る。


「ロディ、とりあえず色々話し合うのは後にしよう。流石に眠いや」


時刻はもう午前5時半。

今日、というかもう昨日になるが、朝6時に起きて最後の仕事を終え、そのまま仮眠もせずに来たため流石に睡魔が襲ってくる。


翌日に仕事も予定もないというのは気楽だが、睡魔とそれとは関係がない。


「(そうね、あなたもう24時間くらい起きてるもの。

やっぱり人間はしっかり寝ないとダメよ)」


今度は近所のお姉さんのように注意してくるロディ。


「ああ、しっかり寝るよ。

寝るのは好きだからね」


僕は、家に着くまでの間ロディと他愛もない話をしながら歩く。

幸い家は近所なので10分ほどで着き、僕は吸い込まれるようにベッドにダイブした。


そして、僕は自分で思っている以上に眠かったのか、すぐに意識はなくなった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




side神楽




私は身体がベタつく気持ち悪さを感じ、目を覚ました。


「ここ、は…」


まだ寝起きでボヤける頭をなんとかフル稼働させ、昨夜あったことを思い出し、嫌な感情を覚えると同時にここがラブホテルだということを思い出す。

部屋内の時計は午前10時を示していた。


「あの男…は流石にいないか。

くそ。あの男、何の遠慮もなく何度も何度もっ!」


股にまだあの男の子種が残っており、私はとにかくすぐにでも洗い流すためにシャワーを浴びに行く。


そして私はシャワーを浴びながら、昨夜のことを考えていた。


最初は痛かったのに、途中から我も忘れるくらい気持ち良くて…あの男に突かれるたびに、全身に快感が走った。


もう一度欲しい…あの男の大きくて気持ちいいものを。

そして、もう一度中に…とそこまで思考した後、私はハッとする。


急いでシャワーの温度を冷水にし、頭を冷やした。


「な、何を考えているんだ私は…!

無理矢理されたのにもう一度欲しいだと!?

おかしくなってしまったのか!」


自己嫌悪に陥りそうになりながらも、なんとか身体を洗い部屋に戻る。


「中に出されたし、妊娠するかもしれない…。

こういう時はどうすれば…」


不安な気持ちを抱きながら妊娠しないようにするにはどうすればいいのかを調べようとスマホを手に取るが、ふとRINEに"空"という奴からメッセージが届いているのを確認する。


「なっ…!ま、まさかあの男からか!?」


"神楽、今日は楽しかったよ。

またRINEで呼び出すから、僕が呼べばすぐに来いよ?

来なければ恋香を殺しに行くし、君のあられもない画像をネットにばら撒く。

ま、君なら来てくれると信じてるよ"


というメッセージと、じっくりと見たくないほど下品な…私の裸の写真。

しっかりと偽装の学生証と共に撮られている。


「…私が呼び出しを拒否して、私の画像をばら撒かられるだけならまだいい。

だが恋香は…!恋香だけは殺させないっ!」


私や恋香があの男について情報を持っているのは間違いなくアドバンテージだが、本部にあの男の情報を伝えたとしても、あの男が民間人に被害を加えた様子がない以上、私たちのようなE級の雑魚の言葉を信じてくれず、動かない可能性が高い。


実力主義的な部分がある滅鬼士界では、E級の雑魚の言葉なんて真面目に聞きはしないんだ。


真衣さんならば信じてくれるだろうが…はっきりと言おう。

私は確かにE級の雑魚だが、あの男の強さを全てではないがそれなりに理解したつもりだ。


それを踏まえた上で、B級滅鬼士の真依さんでは勝てない。いや、それどころかA級滅鬼士の方達ですら勝てないだろうと私は思った。


あの男のあの妙な能力は強すぎる。

それこそ私の憧れる十傑の方々にしか、あの男と渡り合えないとすら感じた。


「…とにかく。呼び出しを拒否すれば何をしてくるか分からない以上、私はあの男の呼び出しを拒否できない。

ふっ、正真正銘奴隷ということだな」


私は空笑いしながら、自嘲気味にそう呟く。


これ以上何を考えても現状は変わらないと理解した私は、スマホをベッドに放り投げ、寝転がりながら何も考えず天井を見てボーッとする。


「…あ、そうだ。妊娠。

調べないと…」


しかしボーッとしていても"妊娠"という単語が頭によぎり、私は放り投げたスマホを手探りで拾い、ネットでどうすればいいのかを調べる。


「アフターピル…なるほど、産婦人科で処方してもらえるのか。

72時間以内に飲めばいいが、早ければ早いほど妊娠するリスクを取り除ける、か。

むっ、結構高いな…」


もう今すぐにでも産婦人科に行こうと思ったが、アフターピルは普通のやつで1万円くらいするため、少し足が止まる。


私は寮暮らしで家賃は補助してもらっているが、悪鬼退治の報酬として月5万円を貰っているのみ。

食料品や日用品を買うのはもちろん、服や靴、化粧品などもその5万円から買っているため、貯金なんて10万円あるかないかくらいだ。


その私に1万円の出費は痛すぎる。


私は無意識にRINEを開き、"空"と表示されているトーク欄に目をやる。

その勢いのまま1万円を寄越せとメッセージを送りそうになったが、送信ボタンを押す前にグッと堪えた。


そんなことを送れば何をされるか分からない。


「男なんて勝手なものだ。女はこんなに苦労しているのに」


私は諦めてカバンから財布を取り出し、1万円入ってたか…?なければ下ろさないとな。と思いながら財布の中を見ると、なぜか3万円が入っていた。

1万円どころか、3万円なんて絶対に入れていなかったはずだ


「ま、まさかあの男が…?

いや、まさかじゃない。あの男が入れた以外考えられない」


なぜ?あの男なりの優しさ?それとも、犯罪を犯しているという自覚があって、その罪悪感から?


…分からない。私はあの男…これからは便宜上"空"と呼ぶが、空のことを何一つ知らない。


空のことを何も知らないのに、処女を奪われたのだ。


「この空という名前も偽名に決まっている。

私は名前も知らない男とヤったのだな…」


はぁ…とため息をつき、私はベッドから起き上がる。


今はとにかくすぐにでも産婦人科に行くべきだろう。

学校も、今日は行く気にもならないし休むつもりだ。


そう結論付けラブホテルを出た後。

産婦人科に行くために八王子駅へ向かっている途中に、スマホからRINEの着信音が鳴る。


空からの電話かと思い一瞬ドキッとしたが、電話主は恋香だった。

そういえば恋香に無事を伝えていなかったなと思い、私はすぐに電話に出る。


「せ、先輩!?無事ですか!?

今どこですか!?怪我は!?」


当たり前と言えば当たり前だが、焦った様子で私の様子を矢継ぎ早に聞いてきてくれる恋香。


「恋香、私は大丈夫だ。怪我もない。

今は八王子駅の近くだ。

というより、お前こそ昨日は無事に逃げれたか?」


そんな心配してくれる恋香を嬉しく思いつつ、私も恋香が無事かどうかを確認する。


「は、はいっ!私は大丈夫です!

その、先輩が逃がしてくれたので…。

あの男とはあの後結局どうなったんですか!?」


…どうしよう。言いづらい。

あの男と朝までヤっていた、なんてとてもじゃないが言えない。


…いや。恋香は昨夜、私が空の奴隷になるという条件を飲む場面をしっかり見ている。

もしかすれば、何となくは察しているのかもしれない。


「あまり言いたくない…というのが私の本音だ。

恋香がどうしても聞きたいなら、話すのもやぶさかではないが」


「あ……………す、すみません」


やはり、ここで謝るということは何となく察していたようだ。

私があの男…空に、何をされたのか。


「いや、いい。お前が謝ることじゃない。

…今日はあまり学校に行く気分じゃないから、多分行かないと思う。

ラーメンも…すまない。約束を破るようで悪いがあまり食欲がなくてな」


「そ、そんなの大丈夫ですよ!ラーメンなんていつでも行けます!

学校だって1日くらい…いや、なんなら1週間休んだって平気です!

先生には私が伝えておきますね!」


滅鬼士育成学校は、学年別ではなく級ごとにクラス分けされる。

私と恋香は同じクラスなので、担任の先生は同じということだ。


「ああ、すまない。お願いする。

それよりも恋香、本部にあの男のことについて話したか?」


それが気になった私は、恋香に聞いてみる。


「あ、はい。しっかり私が見た全てを話したんですが…全く取り合ってくれませんでした」


「やはりか…。まぁそうだろうなとは思っていた」


やはり、上の人たちは被害が出ないと動く気がないらしい。

被害が出てからでは遅い!と両親を失った経験から感情ではそう思うが、事実としては確かに空は民間人を傷つけていない。


私を無理矢理…いや、私が奴隷になると言った以上もはや同意かもしれないが、ただ私を犯しただけ。

そして、上はその事実を知らない。


つまり、私視点では空が危険な存在なことに変わりはないが、上の人たちから見るとまだ民間人に被害を加えていないかつ、E級滅鬼士がただ逃げ帰ってきて大袈裟に言っているだけの取るに足らない存在。ということになる。


私とて、実際に空と出会わず、話だけを聞けばそんな大したことのなさそうなやつはすぐに誰かに殺されるだろうと思う。


しかし恋香は、1番重要なことを知らないしそれを話してもいない。


「恋香、あの男は悪鬼じゃないと言えば信じるか?」


そう、空は人間…かは分からないが、間違いなく悪鬼ではない。

空にそう言われたから信じているというわけではなく、私自身が確信している。


「え…?悪鬼じゃない…!?

じゃ、じゃああいつはなんだって言うんですか!

確かに見た目は人間でしたけど、あんな妙な能力を人間の、それも男が持っているはずがありません!」


当然の返しが恋香から飛んでくる。

もちろん恋香が言っていることは全て正しい。

空が悪鬼じゃないという証明は何一つできないし、むしろ私が間違っている側だとすら言えるだろう。


でも…悪鬼を強く憎んでいる私には分かるんだ。

空と身体を重ねた時…あいつが悪鬼ならば私は本能の部分で拒否反応を起こし、本能であいつを悪鬼だと思ったはず。


しかし本能の部分での拒否反応は出ず、本能はあいつを悪鬼ではないと判断しているし、私は私の本能を信じている。


「あいつが何者なのかは私も分からない。

恋香が信じられないという気持ちは分かるし、私自身他の人に言われれば信じられないことを言っている自覚はある。

…いや、すまない。これ以上は言うまい。

あの男が危険で邪悪な存在だという事実は変わらないからな。ただ私が…如月恋香が、あの男は悪鬼じゃないと確信していると思っていてくれればそれでいい」


「先輩…」


電話越しでだが、恋香が困惑しているのを感じる。

私がここまで強く確信していると言ったのは初めてだからだろう。


「神楽先輩。私は先輩を信じます。

まだ半年間の付き合いですけど、先輩が嘘をつくわけがないって思ってます。

あくまでもあいつは悪鬼じゃなくて、よく分からない謎の悪いやつだって思いながら情報を集めましょう!

頑張って証拠を集めて本部の人たちに信じてもらうんです!」


「恋香…ありがとう!ああ、そうだな!」


恋香からすれば私が空に催眠か何かをかけられていてもおかしくないと思うはずだ。

なのに私を信じてくれて、かつ前向きなことを言ってくれる。


こんなできた後輩を持てて、私は幸せ者だ。

やはりあの時、恋香を逃したのは正解だったのだ。

こんなにも純粋な恋香を空などという邪悪なやつに汚されてはならない。


だからこそ、空からの呼び出しは絶対に恋香にバレたくないと思った。

バレれば恋香は絶対罪悪感を覚えるだろうし、なんなら私の身代わりになろうとすらするだろう。


そんなことは私がさせない。

私が絶対に恋香を守るんだ。たとえ、私の身がどれだけ汚されようとも。

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