お隣の女優とバニーな話(番外編)

これはもしかしたらあり得るかもしれない、いつかの八月二日のお話です。


「水野さん、暑い中お疲れ様です」


世間は夏休み真っ只中、彼女は今日も僕の家を訪れていた。


「ありがとう、隼人君。外での撮影だったからとても暑かったわ」


「そう聞いてたので、今日はアイスを作ってみました」


そう伝え、僕はテーブルにアイスの入った容器を置く。

彼女は目の前に置かれたアイスに驚いた様子だ。


「凄いね、隼人君ってアイスも作れるの?」


「意外と簡単でしたよ。時間もありましたしね」


「良いな〜 夏休み。羨ましい」


「まぁまぁそう言わずに溶けないうちに食べてみてください」


そう促すと彼女は「いただきます」と言ってからアイスをスプーンで口に入れた。


「すごく冷たくて美味しい!やっぱ暑い日はアイスだね」


彼女は顔を綻ばせ喜んでくれている。


「もう八月入りましたもんね」


「こんなに暑いのにまだ二日しか経ってないって信じられないよね」


「そう言えば八月二日って何の日か知ってますか?」


「えっ、突然のクイズ? えっとなんだろう」


不思議がりながらもアイスを食べる手を止め、うーんと考え始めた。

しばらく経つと「あっ」と何かに閃いたようだ。


「分かった。八ツ橋の日でしょ?」


「違います。八ツ橋の日は六月十二日らしいです」


「なんで、隼人君が知っているのよ。それに八ツ橋と数字が全然関係ないじゃない」


「色々歴史があるみたいですが割愛します。他には何か思いつきますか?」


彼女は「えー」と言いつつ再び考え始めた。


「なんだろう? 全然分からない」


しばらく考えても分からず、ギブアップのようだ。


「答えはですね、バニーの日らしいですよ」


「バニー? あぁ、うさぎかぁ。なるほどね、知らなかった」


「僕もトゥイッターで流れいたのを見て知ったんですけどね」


それを聞いて彼女は何か気付いたようだ。


「だから、バニーガールのコスプレとかイラストをちらほら見たのか。突然突然なんだろうと思ったよ」


そう言った瞬間、彼女の視線は険しくなり僕の方を向く。


「ん? ちょっと待って。という事は隼人君は今日一日をバニーガールを見て過ごしてたって事?」


怒った表情を近付けてきた彼女に僕は内心大慌てになる。


「いや、僕も少し見ただけですから」


何とかそう返すも彼女の視線は冷ややかだ。


「そんな事言って、衣装を着た女の人をいやらしい目で見てたんでしょ!」


さらに詰め寄って来た彼女に僕はさらにパニックになる。


「いや、どちらかと言うと水野さんがバニーガールの衣装を着たら素敵だなと思ったというか…… あれ?」


言っている途中で雰囲気が変わったのを感じ、少し冷静になる。

冷静になるととんでもないことを言ったように感じ、顔が赤くなってきた。


「ふーん、私のバニーガール姿を想像したの?」


そう言う彼女は先程と打って変わって少し嬉しそうだ。


「えっと、まぁ、そうです」


「恥ずかしいけど、他の人を見ても私の事を思い出してくれるのは嬉しいかも」


そうすると彼女は髪を弄りながら恥ずかしそうに僕の方を見てくる。


「……そんなに私のバニーガール姿を見たい?」


「見たいです」


勿論、僕は即答だ。


「まぁ、衣装がないから無理なんだけど。代わりにすごく恥ずかしいけどウサギの真似をしてあげる」


そう言うと彼女は両手を開き、それを頭の上に持って来た。

彼女は体をモジモジさせ、顔が真っ赤になりとても恥ずかしそうだ。


「……ピョン?」


その恥じらいと可愛さの衝撃に僕の頭は耐えられず、その後の記憶はまったくなかった。


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