魔法少女の世界に転生したのが変態だったら? 短編版

 寮の玄関のドアを開けて空を見上げると朝一番の綺麗な太陽が彼を照らした。


「ふむ、新学期早々良い天気じゃないか」


 彼はアース魔法学園の高等部一年に所属しているリョウガ・オオゾラ。

 制服は上着が赤でズボンは黒。背丈は高い方で意外と鍛えていたりする。ギャルゲー主人公(意識した)みたいな目元が少し隠れた黒髪(人にぶつかると危ないので今は掻き分けているが)。ぶっちゃけた話であるが転生者だ。

 彼はひょんなことから好きだった魔法少女の世界に転生を果たした。


『バブ、バァブブバ!(うん、まぁいいや!)』


 当初はない頭で混乱したが、割とすぐに慣れた。無い頭で考えるのがめんどくさくなったのも大きいが。

 赤ちゃんからリスタートしたことで、ママからミルクタイムやオムツ交換で言い表せれない羞恥心でちっちゃい脳がパンクしかけてそれどころではなかった。


『バ、ブブブ〜(あ、新しい扉が開きそうになった)』


 何より退屈しなかったのも理由である。魔法世界に転生したという事もあるが、幼少期に偶然出会った女の子に衝撃を受けた。


『あれ? 君は……』

『ぐすっ……うっ?』


 公園のブランコに座って泣く子供がいたので、思わず声をかけたらメインヒロイン兼主人公であった。あの時の衝撃は今でも忘れていない。


「お、ヒナちゃん」


 学園に向かっていると前方に500メートルほど先に見覚えのある薄い茶髪のリボンツインテが。

 見た途端、彼の口元がニヤリを弧を描いた。


「ロック・オン」


 どこかネイティブ風な口調で口にすると迷うことなくクラウチングスタート姿勢に入る。……周囲の人、主に学生たちが「あ、またかー」と呆れたような目をして、先を歩く女子に同情の視線を送った。


「レディー……ゴォォオオオオオオオオッ!!」

「っ!? え、え!?」


 ロケットダッシュの如く。獲物に向かって駆け出す獣ように。

 彼の雄叫びにビックリして慌ててあっちこっちに顔を向ける彼女の背後を取ると。


「唸れ我が右腕ッ! トリャアアアアアアッーーー!!」


 制服のスカートを躊躇なくめくった。

 仮にスパッツでも履いていればまだ致命傷は避けられたかもしれないが、残念ながら彼女の下半身のガードは脆弱で、汚れのない純白の布地(紐バージョン)で守られる綺麗なお尻がハッキリと見えてしまった。


「うむ、今日は白のレースか」

「にょわあああああああああ!?」


 瞬間沸騰、一瞬で自分のスカートの状況を理解した彼女の顔が真っ赤になる。慌てて捲られたスカートを押さえるが、容赦なく中身を確認されて求めてもいない感想を言われた。

 

「しかも、紐とは随分大胆になったな。ついこの前までは猫さんや花模様みたいなのが殆どだったろうに」

「リョ、リョウく〜んっ!?」


 羞恥と怒りで顔が真っ赤か。振り向いて涙目で彼を睨み付けるが、このスカート捲りの変態男は全然堪えていない。寧ろ朝から良い顔を見られたとグッジョブと笑顔で応えた。


「おはようヒナちゃん。健康的なパンツを見られてオレ超嬉しい!」

「そうなんだ、じゃあ死んでね!!」


 殺意を隠さず拳を振り抜いたのは、彼の幼馴染兼この世界のメインヒロインこと――ヒナ・ハルカゼ。

 名前の通りまだまだ雛鳥な魔法少女である。でも普通の魔法学生よりは全然強かったり。


「ふ、まるで止まって見えるな」

「このこのこのこのこの!」


 まぁ拳の方はあっさり躱されているが。

 魔法を使わない素の運動センスはリョウガの方が圧倒的に上であった。


「まぁ待て早まるなマイフレンド(ウィンク)」

「誰がマイフレンドなの!? いい加減人のスカートを捲るのもやめて! ヒ――わ、私じゃなかったらとっくに捕まってるよ!?」


 怒りで頭から沸騰した蒸気が出てそうなヒナいた。

 普通なら謝罪が先なのだが、この男は普通ではない。遠慮なく燃料や火薬を投下した。


「女神のようなその慈悲に深く感謝しています(紳士がやりそうなお辞儀)」

「感謝するならセクハラをやめなさい! 私たちもう高校生なんだよ!」

「オレに死ねと!? バカなそんなこと出来るわけないだろう! お前は悪魔か! この外道め!」

「どうして被害受けてるヒナが悪いのかな!? ていうかセクハラしないと死んじゃうってどんな呪い!?」


 会話が聞こえなかったらどっちが悪者か分からなくなるくらいリョウガの顔は絶望で染まっていた。

 周囲にとっては見慣れた光景なので、リョウガ容赦なくヒナをからかっている事は誰もが理解していたが、理不尽な対応をされているヒナにそんな状況を判断する余裕もなかった。

 ていうか絶賛プンスカ怒っている最中なので、リョウガのヒナいじりは全然止まることを知らなかった。


「名付けて『セクハーラの施し』を解くためにはヒナのパンツが必要なんだ。だから……ほら?」

「その手はなに!? 絶対ウソだよねあげないよ! そんなヒナ限定で損する呪いがあるわけないでしょ!」

「いやいや、とヒナちゃんことになると平気で犯罪犯しそうなあの先輩の魔法を合わせれば」

「あああああ……すごくありえそう! ヒナ、ピンチだったするの!?」


 怒りのままの拳連打を避けながら朝の会話する。よく見る光景なので助けた方が良さそうな顔をする大人たちはともかく学生たちは完全スルー。


 中にはヒナのクラスメイトお友達もいるが、朝から巻き込まれたくない全員の気持ちが一つになった結果だ。

 女子の方は主にリョウガのセクハラ攻撃が恐ろしいので、可哀想だが心の中でヒナに許して!って頭を下げて全力で拝んでいた。


 なんなら放課後にお菓子をあげても良い。

 お願いだからその変態男の見張り頼んだからね! みたいな女子たちの強い想いは――


「ど、どどど、どうすれば……!?」


 青ざめて頭を抱えるヒナに伝わっているわけないです。徐々に口調も子供ぽっくなっているが、こちらが素の状態。自分の一人称も『私』から『ヒナ』になっていた。


「まぁ全部嘘だけどね。単に新学期一番のパンツを見たかっただけだし」

「そんなぁことだと思ったよぉーーーー!!」

「あとお尻の具合も見たくて」

「お尻の具合ってなに!? ま、まさかまた!?」


 ホント、テンション上がり下がりが激しい子だなぁとリョウガは思った。

 ちなみにアレとはカンチョウのことで、最初の頃は魔法訓練の一環として行なっていた模擬戦中のささやかな悪戯で偶にやっていたのだが、気のせいか徐々にくらう彼女の顔に羞恥と痛み以外の何だか開いたらダメな色っぽい感情が見え始めたので彼は考えた。


『いざって時、お尻を性感帯にすれば出来ちゃった婚は避けられるかもしれん』


 そのいざって時がどんな場面なのか置いておくとして、とんでもない理由で幼馴染の性癖に改造を施すことにした変態。

 そんな計画など知る筈もない幼馴染は単に嫌がらせだと認識しており、サッとお尻を隠すようにして彼から離れようとするが、彼は笑顔で否定した。


「こんな場所でするわけないだろ。オレを誰だと思ってるんだ?」

「公衆の面前で人のスカートを躊躇わず捲るセクハラ男」

「照れるじゃないか」

「ほめてなーい!」


 開き直って微かに頬を赤くするとジト目だったヒナの鋭い返しが入る。

 そんなヒナにリョウガは笑顔で返すと次第に睨みが弱くなっていき、最後は諦めたようにため息を漏らした。


「はぁ、なんでこうなるかなぁ」

「ため息は体から幸せを逃すぜ?」

「なら吐いちゃうようなイタズラを自重し「無理だな!」て……言わせてよ」

「そんなことよりさっさと行こうぜ。優等生のお前はともかくオレはまた遅刻したら教師から愛の説教コースと奉仕活動という名の罰ゲームになるんだよ」

「わざと遅刻扱いにして先生の怒られて欲しいけど、ぐ、そしたら私まで遅刻になっちゃう……!」


 ふてくされたヒナがブツブツ呟くと、なんだかんだ二人での登校となる。

 セクハラ魔神な主人公とヒロインの魔法少女の組み合わせが通学中の日常であった。



◯作者コメント

 あれ魔法は?って思ったでしょうが、これが第二パターンで考えてた内容でした。

 そのうち連載版予定! 前のが周りのヒロインが変態だったからこちらは主人公がやや、変態ぽいかも?


◯補足説明

 リョウガ・オオゾラ 高等部一年

 わざと前髪を長めにした黒髪青年(目を隠し過ぎだと親に怒られたので、少しだけにしている)。

 変態ハーレム願望キャラでヒロイン以外の女の子も好きですが、女の子を傷付ける趣味はありません(スカートめくってるのに何言ってんのって思いますが)。

 可能なら本ちゃんまで行きたいですが、デキ婚なると学生では流石に責任問題が大きいので色々と対策は考えている(例えばヒナの場合はお尻の開発)。

 変態なのを除けば根は真面目で努力家です。後々分かりますが、転生したことでこの世界である意味特別な魔法使いになっています。

 中等部から魔法学園に入学。そこで知らなかったこの世界のルールを知ったことで、意外と平穏を望んでいた彼の学生ライフが狂いが生じる。


 ヒナ・ハルカゼ 高等部一年

 アニメ版のメインヒロイン。漫画でもヒロインをしているが、こちらの作品はゲームからスタートしており、漫画や小説はアニメより実は少なかったりする。


 大きめのリボンと腰くらいある長めのツインテが特徴。主人公のリョウガとは幼少期から中であるが、その頃からからかわれ遊ばれる日々を送っている。でも本気で嫌な事はせず適度に甘やかしてくれるので、ついつい許してしまっている。


 リョウガと共に中等部から魔法学園に入学しているが、本当は一人で受けるつもりだった。後からリョウガも実は受かってました〜って知った際、喜びやまたイジられる以上に小学生の時点で色々恐ろしくなったセクハラ技に未知の魔法が組み合わさったらどうなってしまうのか。そんな普通にやってきそうな未来に顔を真っ青にして気絶したそうだ。

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好きな魔法少女の世界に転生したが男の魔法使いは俺だけなの!? 短編集 ルド @Urudo

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