好きな魔法少女の世界に転生したが男の魔法使いは俺だけなの!? 短編版

ルド

転生者が魔法学園の試験を受けて目立つのはもう定めだと思います。

 俺が受けに来た魔法学園の中等部試験は筆記、面接、最後に適性試験があった。


「では最後に『ステータス付与』の適性試験を行う。呼ばれた者から奥の部屋に入りなさい」

「遂に来たか。筆記と面接はどうにかなったが、これがダメだったら全部台無しだからな」


 試験担当の教員の言葉に俺は覚悟を決めて小さく頷く。

 俺リョウガ・オオゾラは転生者である。その転生原因は……情けない話であるが、アホな女神のミスであった。


『ごめんなさぁぁぁああああい〜〜!!』

「美人だったけどアレは絶対ポンコツ女神だな」


 涙ながらに土下座されるとお詫びとして知っている世界に転生させてくれた。

 いったい何処に転生させられるのかと不安を思っていたが、そこは可愛い魔法少女が活躍する世界。つまり魔法が使える世界であった。


「どうせなら学園に入学するのもありだな」


 やっぱり男の子ですからね。魔法には憧れるしアニメや漫画も何度も見た。他にも小説やゲームなどもやっていてかなり続いたが、やはり懐かしく感じる。

 幸いというかこの物語はそこまで殺伐していない。強いていうならモンスターとか学園にある地下ダンジョン、かつて滅びた帝国の凶悪兵器とか……まぁ最後の部分は俺がそこまで関わることはなさそうだ。

 というかこの世界は魔法少女が主役なので男性メンバー自体もかなり少ない。まあ学園は男女共学なので俺が入っても何の違和感もない思うが。


「前は彼女も出来なかったし、いっそ彼女を探すのもありか」


 ヘタレで情けない前世の俺に彼女などできる筈もなかったからな。魔法学園には美少女が多い。入学出来たら開き直って好みの女の子を探してみよう。ヒロイン枠の子達は可愛い子ばかりではあるが、さすがに本編に関わって強敵のモンスターとかライバルの魔法少女の相手とかダンジョンの最下層を目指す……みたいなヤバイ展開はご遠慮したい。ファンとして暖かく見守るのは全然いいけど。


「とにかく試験を受からないとな。家の都合で初等部は無理だが、中等部からなら大丈夫だろう」


 両親には小学校に入るから既に相談してだいぶ前から了承は得ていた。多少は心配されたが、そこはまあ子供でも転生した中身は大人なのでそれなりに信頼を得ていた。承諾を得るのも難しくはなかったが、寮生活になる事を話したら妹に大号泣されてイヤイヤされるアクシデントが起きたが。


「いや可愛がり過ぎた俺の責任かな。宥めようとした父さんにイヤ!キライ!って言った時は……父さんの時が止まったな」


 アレは酷かった。あのまま灰になって散ってしまうのかと思った。

 最終的に母さんが宥めてくれてどうにかなったが、未だに納得した様子ではなく、内心落ちて出ていくのを止めてくれるかなぁーって期待している目だよアレは。


「あ、なんか泣きそう。懐かれてるから応援されてないのも納得できるが」


 ああ、これが妹離れの入り口か、何気にダメージが大きい。もし妹の方が兄離れになったら父さんみたいに凍りつくか一瞬で塵になりそうだな。俺もシスコンってことか。


「次リョウガ・オオゾラ君、入りなさい」

「はい、失礼します」


 さて、回想はここまでだ。なんとかここまで来たんだし、どうにか受かりたい。


「リョウガ・オオゾラ君ですね? では早速そちらのに触れてください。適性があればステータスが付与される筈ですが……」

「適性が無ければ不合格ですね?」


 かつて大魔法師が作ったと言われる『マジック・プレート』、別名『ステータス・プレート』とも呼ばれている。この世界で力を得るために必要なアイテムだ。

 ここが本当に大事なところだ。自分の背丈より少し低い位置にある机の上に置かれた金属のプレートを見て、自分の手にも目を向ける。


「その通りです。では、どうぞ」

「……はい」


 大丈夫だと思いたいが、不安要素はどうしてもある。

 あの女神は分かっていてこの世界に転生させてくれた筈だ。適性くらいあると思いたいが、同時にやり過ぎていないかという不安もある。

 かえって目立つからな。仮に『勇者』とか呼ばれそうなヤバイスペックだったら……普通の学園生活どころか恋愛も危うくなりそう。特に前者は終わるな。


「よ、よし、上手くいってくれよ?」


 不安しかないがやるしかない。プレートに触れながら自分のミスで俺を死なせた女神を思い浮かべる。……ダメだったらあのアホ女神を呪ってやろう。


「っ!」


 そして触れているとプレートが輝き出す。成功したかどうかまだ分からないが、一応起動はしたようだ。さて、どうなるか…………なんか輝きが強いな。最初は赤色の光だけだったが、徐々に青色の光が混ざっているような。


「こ、これは……この輝きと色は!」

「やはりおかしいですね!? 彼は男の子ですよ!?」

「でも、この球体の輝きの色はどう見ても!?」


 なんか見ている教員たちが騒ついている。やり過ぎてないよな? 何かおかしいのかと首を傾げているとやがて二つの光が俺の中に入っていく。暖かく力強い光で馴染んでいくようだが、つまりこれが!


「これがステータスの付与か!」


 どうやら上手くに成功したようだ。残りの光も完全に俺の中に収まると目の前の金属プレートに文字が刻まれていく。アニメや漫画で見たことある光景だが、これが……


「これが俺の『ステータス・プレート』……」


 実際に手に入れるとやっぱり驚きを隠せないな。

 俺の名前が刻まれたプレートを俺が見ようとすると光って情報が映り出した。


リョウガ・オオゾラ レベル1(Gランク)

性別 男性 年齢 十三

攻撃力 G 防御力 G

魔 力 G 器 用 G

素早さ G 幸 運 G


魔 法

『スペル・ジョーカー』

・複製魔法

・発動条件は使用魔法の認識と必要詠唱の把握。

・詠唱『―――』


スキル

我は魔導を超越せし者ファントム・ブレイカー

・成長系スキル

・魔法の常識を壊していく者。

・―――

・―――


「よし無事に魔法をゲットしt――え、スキル?」


 なぁにこれ? 見覚えのないスキル欄がある。

 あれ? ステータスプレートに宿るのは各身体能力と魔法だけだった筈では?

 レベルの欄もなかったよな? 魔力を含めたランクは存在していたが、レベルの方はゲーム版の奴だったぞ。


「ほ、本当にスキルだけでなく魔法まで!?」


 女性の教員が目を見開いて見るからに混乱している。

 て、はい? スキルだけでなくって?


「……どうやらイレギュラーですね。これは大騒ぎになりそうだ」


 渋い顔の男性教員がいち早く冷静になる。先の事を考えたのか、ため息を吐いて手で顔を覆う。

 いやどういう事よ?って思っていた俺だが、ふとかつての記憶が蘇る。

 そう、確かあれは色々なタイプのゲーム版が出た時の事だ。俺は金がなくて買えなかったが、その中には確か操作するのが男キャラだとステータスを与えた際にスキルが宿るとかあったような。あのゲーム設定がこの世界にはあるってことか? まさかレベルも?


「ん?」


 あ、あれ? よくよく考えたら男の魔法使いってアニメや漫画に登場したっけ? いや、出番は少なかったけど。その辺の記憶は曖昧だな。主役が魔法少女だからなー。肝心の出番が殆どなかったから戦闘シーンも……ん?


「す、すみません。ちょっといいですか?」

「ん? 何でしょうか?」


 すっごく嫌な予感がしたので、俺はとりあえず冷静になってくれた男性教員に質問してみることにする。女性教員たちは未だにパニクっていてちょっと怖いから。


「あ、あのー? ここって男女共学の魔法学園ですよね?」

「ええ、間違っても女子校ではありませんよ? 仮にそうでしたら貴方も他の男子学生も試験など受けれませんし」

「ですよね? あの俺は試験内容ばかり注意して来たので、もしかしてこの学園の常識とかをちゃんと把握出来てないみたいで、ちょっと訊きたいんですが?」

「……何の質問でしょうか?」


 恐る恐る尋ねている俺を見て、徐々に神妙な表情になる男性教員。そのまさかと言った様子に俺の嫌な予感も膨らんでいく。

 そんな顔の時点でオチが見えそうなのであんまり訊きたくないが、ここで止めても後でハッキリしてしまう。出来れば違って欲しいなぁと思いながら、トドメになっちゃいそうな質問を投げかけた。


「この学園が魔法学園なら男子が魔法を取得しても普通なのでは?」

「いえ、魔法を取得できるのはなんです。男子学生は普通は取得します。試験で魔法を取得したのは

「おー……orz」


 お、終わったー。色んな意味で。

 さらに聞いて見るとこの世界の魔法使いは男女で異なっており、『魔法少女』もしくは『魔女』と呼ばれる女性だけが『魔法』を使えるらしく、『戦士』もしくは『騎士』などと呼ばれる男性だけが『スキル』を取得出来るそうだ。

 しかも『騎士』呼びは魔法少女たちを守る守護者のポジションの者の事を言うそうで、ある意味出世コースだそうだが、少なくとも知っているアニメや漫画にそんな設定がなかった。この辺りもゲームの設定かもしれない。


「私も教員と『騎士』の立場として長くこの学園にいますが、このような事例は本当に見たことがありません。男子の場合、取得の際に浴びる光はスキルの赤色と決まっていたので、青色の光が出始めた際には思わず自分の目を疑ってしまいました」


 しかもだ。『魔法』と『スキル』の両方を取得した者は俺が世界初だったらしく、間違いなく入学は確定で色んなところから引っ張りだこに会うから覚悟した方がいいと言われた。……肩をポンポンされた時は泣きたくなった。


「い、今更だけど入る中学を変えるって選択肢は」

「無いと思ってください。私が何も進言せずとも学園が絶対君を逃さないと思うので、早々に諦めた方がいいかと」


 もうプレートを得た時点で強制入学は確定していた。

 まさか落ちる不安よりスペック過多の不安が勝ることになるとはな。

 入学前から学園で俺の存在が浮くのが決定したではないか。


「あのポンコツ女神、覚えてろよ」


 何が俺が知っている世界だ。ゲーム要素まで組み込むとか聞いてないぞ。

 なんで男の魔法使いがいない世界で俺だけ使える風にしたか。しかもレベルっ何だよ? 俺がRPGのゲームみたいにモンスターを倒してレベルを上げないといけないのか? なんか隠しコマンドでもあるのか?


「ハハハハ……ふざけんなコラ」


 クソゲー世界に飛ばされた気分になって思わず毒吐いていると、急遽待合室に待たされていた俺にさっきの男性教員と学年主任の女性教員、あと学園長と呼ばれる人まで入って来て、その日のうちに俺の合格があっさり決定した。


 ああ、望んでいた学園なのに素直に喜べなかった。


◯作者コメント

 こちらは『幼馴染に振られて(略)』の制作中に思い付いたのを短編したやつです。

 転生ものと魔法少女、混ぜたら面白うそうだと書いてました。

 実はこれの未完成ですが、改良したのもあります。連載中もので忙しいので保留扱いですが、機会があったら試しに出してみたいです。


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