第二章  九


 美咲は、大学に通う為に東京で一人暮らしが決まった時に、父親から貰った長さが短めの珠数と紫の御守りを持ち、机の上にある父が笑顔で写っている写真に手を合わせ目をつむった。

 しばらく手を合わせてから、目を開けて、時計で時間を確認し玄関へと向かう。


 アパートを出て、住宅街を歩いて行く美咲。


 オカルト研究会のメンバーとの待ち合わせは、大学の近くにあるファミリーレストランの駐車場で十時だった。

 途中で、ユキと合流し、駐車場へと向かう。


 美咲もユキも、飲食店のバイトの休みを取っていた。

 美咲とユキの代わりに、バイトのシフトに入ってくれる人達が居た為、店が稼ぎ時の土曜日に二人で休みを取る事が出来た。

 

 美咲は、ユキが一緒に神社に行くのは、正直、反対だった。

 ひょっとしたら危険かも知れない。美咲は巫女の悪霊が存在するのか半信半疑だったが、大切な友達のユキの身に何か危険な事が起きないかと不安に思っていた。もちろん美咲自身にも危険な事が起こるかもと不安に思っていたが、ユキの身を優先的に思っていた。

 だが、オカルト好きで心霊スポットに興味のあるユキに同行を拒否するのは、無理な話だろうとユキを説得するのは諦めていた。

 それに、遅かれ早かれ、ユキは他の友人達と神社に心霊スポットとして行っていても不思議ではない。何せ、邪眼の巫女の話を知っていたのだから。

 オカルト研究会の人達も、邪眼の巫女の話を知っていたし、美咲の相談を受けなくても、いずれは行っていただろう。

 

 霊に対しては、半信半疑の美咲だが、何か不安を感じ始めていた。


 やがて、大学が見えてきた。


 美咲とユキは、大学の近くのファミリーレストランの駐車場へと向かう。

 

 十時の十五分前に、駐車場に着くと、オカルト研究会のメンバーが既に来ていた。

 目的地までは、車二台で行く事になっている。


 美咲とユキは、メンバー達の元へと行き挨拶をする。

 だが、メンバーの内、桃華だけが、まだ来て居なかった。


 黒木の携帯が鳴り、携帯に出ると、桃華からだった。

「もしもし、早岸桃華さん。どうかしたのかね?」

『しゅ、しゅいません、ボシュ······夜中から、ポンポンがゴロゴロピーでしゅ······』

 桃華が、苦しそうに話す。


「ゴロゴロピー? 食あたりかね?」

『みたいでしゅ······ポンポンが痛くて、何度もトイレに行ってるでしゅ······』

「それは辛いな、今日は同行は無理だろう。ゆっくり休んで安静にしてると良い」

『ボシュ······しゅいません······』

「謝る事はないぞ、人間そう言う事もある」

『同行できなくて、無念でしゅ······はう!またポンポンがトイレに行くでしゅ』


 通話が切れた。


 話を聞いていた森山が

「食あたりっすか? 桃華のヤツ」

 黒木にそう聞くと

「うむ、同行出来ないのは無念であろう······」

 黒木が携帯を握り、空を見つめていた。


 美咲とユキも、桃華を心配するが、どうしようも無かった。


 とにかく七名で、二台の車に、それぞれ乗り込む。

 杉村が運転する車には、江古田と森山が乗り、黒木が運転する車には、アキナと美咲とユキが乗る。


 ファミリーレストランから出発し、茨城県へと向かう。

 

 二台の車は、しばらく国道6号を走ると、高速インターに入り、茨城県津原市を目指す。

 

 携帯で連絡を取り合い、途中、サービスエリアに寄り、売店で各々おのおの買い物をして休憩を取ると、高速を走り出した。


 やがて、茨城県津原市に着き高速を下りて、本屋かコンビニを車で走りながら探す。


 見つけた本屋で地図を買い、浜高町の場所を調べた。


 オカルト研究会のメンバーと美咲達は、やがて目的地の浜高町へとやって来た。


 目立った建物は無い町並み。田園地帯に周りには山々がある田舎だった。


 買った地図には、浜高町に神社のしるしが無い。

 しかし、あるはずの名前の無い神社を見つける為一同は、町の人達に話を聞き探す事にした。







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