第二章 捌
「駄目だ。何の情報も無い」
パソコンで調べていた杉村が少し茶色い髪の頭を
「こっちもですね、清流眼の一族に関しては、何の情報もありません」
江古田が溜息混じりに言う。
「美咲さんのお父さんは、何処でどうやって清流眼の一族を知ったんでしゅかね」
桃華が顎に親指を当てて首を傾げている。
「郷土資料館とかじゃないか?」
森山が腕を組んで言う。
「ありえましゅね。そうかも知れませんでしゅね」
桃華が言うと杉村が口を開く
「なら、ネットに清流眼の一族の情報位は載っているんじゃないか? 資料館に歴史が残されている位ならさ」
と杉村が疑問に言った。
「うーん、でしゅね」
桃華が唸って答えると
「あ! そうだ」
と美咲が何かを思い出した。
「どうしたんだね? 一条美咲さん」
黒木達が、美咲に目をやる。
「確か、清流眼の一族に関して、ある言葉が······。『ミラズニシテミルベシ』だった様な······」
美咲が、
「え? 何だって?」
黒木が美咲に問いかける。
「ミラズニシテミルベシ。確かにそうです。父のノートに書いてありました」
美咲が言うと、杉村や江古田がパソコンに『ミラズニシテミルベシ』と、キーボードに打ち込む。
「あった! あったぞ! ヒットした」
杉村が声をあげると、江古田も続いて
「確かにありますね」
黒木やアキナ達が、それぞれ杉村と江古田のパソコンの画面を覗く。
そこには清流眼の一族に関して記載されていた。
そして、邪眼の巫女に関しても。
「かつては怨霊や悪霊を祓い人々を救っていた清流眼の巫女······だが、悪霊として現代に現れた······」
黒木が声を出してパソコンの画面に書かれた文章を読んでいる。
美咲とユキはパイプ椅子に座って皆を見ていた。
二人以外の六人はパソコンの画面に釘付けになっていた。
黒木が美咲の顔を見て、
「一条美咲さん、コレを見てくれ、お父さんのノートに書かれていたモノと似ているのではないかな?」
美咲がパイプ椅子から立ち上がり、パソコンの前に近付く。他のメンバーは美咲が画面を見られる様に後ろに下がる。
美咲に続いてユキも隣からパソコンの画面を覗く。
「この内容······このホームページを書いた人は誰ですか?」
と、美咲が声に出す。
杉村も江古田も分からないと首を振る。
「匿名希望だよ、投稿した人が誰か解らない」
美咲の脳裏に浮かんだ事。それは父が生前、神社から帰って来てから毎日の様に何時間も読経をしていて、それ以外はパソコンに向かっていたと言う母の話。
月日からして、このホームページに書いたのは、もしかして父なのかと美咲は思った。
美咲がマウスでパソコンの画面を動かして、ホームページを見終えると、黒木が口を開いた。
「清流眼の一族。そして一族の巫女が悪霊になった事、なぜ巫女が悪霊になった事は謎だが、邪眼の巫女に唯一対抗できるのは同じ清流眼の持ち主と言う事と、ミラズニシテミルベシと呪文の様な言葉」
黒木が、ホワイトボードの前に行き、赤いマーカーペンで
『清流眼の一族』
『ミラズニシテミルベシ』
と、邪眼の巫女と書かれた文字の下に書き加えた。そして、
「一条美咲さん、今までの情報では、まだまだ解らない事が多いが、新しい情報がネットに出るまで待つか、それとも······」
黒木が片手で髪をかき上げた。
美咲は少し沈黙して、夢で父が鳥居の前で呼んでいるかの様な姿が頭をよぎり、少しの沈黙の
「私、茨城県の父が行った神社に行こうと思います」
美咲が言うとユキが、
「なら、アタシも美咲と一緒に行くよ」
ユキが美咲の肩に、優しく手をおいた。
黒木が、目を少し鋭くして、
「本当に邪眼の巫女が居るのかは分からない。だが危険な場所かも知れない、何せ名前の無い神社だし落石と行った危険性がある場所だからかも知れないよ」
「もし、危険な場所で立ち入り禁止なら、その時は考えます。でも、私は行ってみます」
美咲は真剣な顔でキリッとさせた目で言った。
黒木が軽く微笑んで、片手で髪をかき上げ、
「一条美咲さん、キミは我々に相談に来たんだろ、我々も邪眼の巫女の事を調べる気でいた」
黒木はコホンと軽く咳をして、
「我々も行こう。場所は、茨城県津原市浜高町だ。こう言う案件を直に行き、直に調べる。それが我らオカルト研究会なのだよ」
黒木は、美咲からメンバーに視線を変えた。
「そうね、好奇心をくすぐられるわ。私も行くわよ」
と、アキナが腕を軽く組んだ。
「神社に何かあるかも知れない、現地調査だよな」
杉村が少し茶色の髪を撫でて言った。
「そうでしゅね、アタシも行くでしゅ」
桃華が目をクリクリさせている。
黒木が、また髪をかき上げて全員に言う。
「反対の者は居るかね?」
反対する者は居なかった。
オカルト研究会六名と美咲とユキ。
八名は、茨城県津原市浜高町にある神社に行くことを決めた。
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