第二章 五
すべての講義が終わり、大学のサークル棟が
色々な同好会、研究会があり、その棟の四階の一室に『オカルト研究会』があった。
部屋の中央に置かれた大きな四角いテーブルを五人が囲んで座っている。
「でさ、東京だけで毎年、およそ一万体の変死体が発見されているんだよ」
二年生の
「しゅごいでしゅね! そんなにでしゅか!」
と、長い髪の毛を二つに縛ってウサギの様な頭の一年生である
桃華は、何故か『す』を『しゅ』と発音してしまうらしい。
別に歯並びが悪いわけではないが、そうなってしまう。
江古田と桃華の会話に二年生の
「その変死体の話は、俺も聞いた事があるよ。凄い数だよな」
森山は、短い髪をジェルで立たせ細い目をしている。
江古田が腕を組み宙を見つめながら、「これだけの変死体だ。僕が思うに、この中には怨霊や悪霊の呪いが関係しているものがあっても不思議じゃないと思うんだよ」
と言うと、桃華がうんうんと
「そうでしゅね、きっとそうでしゅよ」
根も葉もない、怨霊や悪霊の呪いのせいでもあると言う江古田の推測に納得していた。
「まあ、あるかもな」
森山も、江古田の話に賛成のようだ。
その隣で、腰まで長い艶のある黒髪の三年生で、副部長を務める、
そのアキナの真正面に、少し茶色に染めたサラサラの髪の三年生の、
しばらくして、オカルト研究会の部室の扉が開き三年生の部長の
「やあやあ、
と元気よく挨拶をした。
すると、桃華が「あ! お疲れでしゅ、ぼしゅ《ぼす》」
桃華が、挨拶を返すと、他のメンバーも、黒木に視線を送り挨拶をする。
黒木が、真ん中で分けたストレートの髪を片手でかき上げながら、四角いテーブルの前のホワイトボードが後ろにある机の椅子に座った。
ホワイトボードには、赤い女が出るトンネルやら子供の幽霊が出る廃墟やら、黒いマーカーペンで書かれていた。
黒木が、癖なのか、また髪をかき上げながら口を開く。
「先週、皆で行ったトンネルだが、赤い女の幽霊は出なかった。写真にもコレといって不思議なモノは写ってなかった。」
黒木は、溜息をつき、「残念だ····。」
と、呟いた。
オカルト研究会は、皆で心霊スポットや怪奇現象の噂がある場所に出向き、捜索をするといった事が
パソコンの画面を覗いていた杉村が
「部長、最近、オカルト掲示板に新しく書かれたネタだけどさ」
「『凶の家』か?」
と黒木が返す。
杉村が、「そう、凶の家だけど、また新しく更新されてるよ」
アキナが、小説を閉じると。
「凶の家、または『食らう家』、私もネットで調べてみたわよ」
黒木が、ほうほう、と目を輝かせ、杉村とアキナの話を聞いている。
「凶の家、または食らう家、入った人間が次々に発狂したり、または行方不明、その家は廃墟になってから、そんなに年数が経っている訳じゃないらしいけど」
アキナが、さっきまで黙って小説を読んでいたと思えない程、話を始めた。
「ただ、その家に始めに住んでいた家族が、異常だった、と言う話らしいわね」
江古田が、「異常と言うと、どう言う家族だったんですか? サイコパスだったとかですか?」
「さぁ、そこまでは、まだ解らないわね。何処に在る廃墟なのかも分かってないし····」
アキナが、テーブルに肘を付き、
「何か怖いでしゅね····。その家も、しゅん《すん》でた家族も····」
桃華が、両腕を交差させて両肩に手を置き、長く二つに縛った髪を揺らした。
黒木が、椅子から立ち上がり、後のホワイトボードに『凶の家』と、黒いマーカーペンで書きたす。
黒木が、くるりと四角いテーブルに座る皆に振り返り。
「まぁ、ここ最近の噂だし、きっと、これからネットの掲示板に色々情報が投稿されるだろう。いずれ詳細な場所も分かるはずだ」
「車で行ける場所なら、いいんですけどね」
森山が言った。
頬杖をついて窓を見ていたアキナが
「それと、最近って言うなら、もう一つ、数ヶ月前から出ていた話だけど····」
呟く様に続けてアキナが言う。
「邪眼の巫女かしらねぇ····」
それを聞いた杉村が
「そうそう、それはもう場所が投稿されていて茨城県の津原市浜高町! 山に在る名前のない神社でさ、巫女の霊が出るって書かれているし、以前はパワースポットとも言われていたらしいですよ。」
すると、桃華が思い出した様に。
「そうだ! ぼしゅ!」
「何だね? 早岸桃華さん」
黒木が、桃華に視線をやって髪をかき上げる。
「あのでしゅね、今日、ここのサークル棟に来る途中で、二年の青柳ユキさんって人の友達が、ウチの研究会に相談があるって言ってきまして」
黒木が顎先を撫でながら
「相談? 我々、研究会にかね」
桃華が
「邪眼の巫女の事らしいでしゅ」
黒木が、目を見開いて
「邪眼の巫女の事で相談? それは興味深い」
「今日は、バイトらしくて、明日の午後に、ここに来るみたいでしゅ。確か、え~と、一条美咲さんって二年生の人でしゅ」
桃華が、目をクリクリさせて言った。
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