第二章 参
玄関ホールを通り、階段を上がり二階の教室へと向かう。
美咲が教室の扉を開けると騒がしい声が聞こえてきた。
男女共にグループを作り、話に盛り上がっている。その他の者は机の上に鞄を置き枕代わりにして寝ていたり小説を読んでいたりしていた。
美咲はパッチリとした二重の目で教室を見渡していると、後ろの席で手を振っている女子が目に入り、そこへ歩いて行く。
「おっはよー、美咲」
と友達の
花江の左側に座る
「おはよう、花江、ユキ」
と挨拶に応え、花江の右側の机に鞄を置き椅子に座った。
花江とユキとは、大学一年生の時に出会って仲良くなり友達となった仲だ。
美咲とユキは同じ飲食店でバイトをしているが花江は都内に実家があり、家から大学に通っているためかバイトはしていない。
花江もユキも美咲の父親が亡くなった事を知り、美咲を心配して、大学でも外でも優しくしてくれた。
父親を亡くし、酷く悲しみ落ち込んでいた美咲だが、時間と日々の流れ、そして友達の優しさに少しづつだが元気を取り戻していった。
花江が美咲に話しかける。
「あのさ、ユキが昨日の夜に、また心霊スポットに他の友人達と言ったんだってさ」
髪を後ろに結んだポニーテールの花江はムスッとした顔をして言う、するとユキが。
「別に何も起こらなかったよ、廃墟の建物に行ったんだけど、いつも通り怪奇現象なんてなかったよ」
ユキがそう言うと美咲が。
「あのね、廃墟とか建物内とかは許可を取らないと不法侵入になっちゃうんだよ」
「はーい、わかってまーす」
そう答えるとユキが続けて。
「だってさ、地主とか探して許可を取るのは面倒だし、つーか、心霊スポットを探索したいからなんて絶対に許可取れないって言うか、確定じゃん」
肩まで伸びた髪を手で流し答えてからユキは美咲に。
「美咲のお父さんて強い霊能力を持った寺の住職だったんだよね? 幽霊とか視えたのかな?」
すると花江がユキに。
「ちょっとねぇ、ユキ、そんな事を美咲に聞かないでよ、だいたい心霊スポットは好奇心や遊び半分で行くべきじゃないって美咲が言ってくれたじゃない」
花江がムスッとしているのは、ユキが遊び半分で危険かも知れない事をしているからであり、ユキを大切な友達だからこそ言っている感じだ。
ユキも花江や美咲の気持ちを、なんとなく理解していたが、だが好奇心とスリルがまさっていた。
ユキが上半身を前にかがめて、花江の隣に座る美咲に再び聞く。
「ねぇ? みえてたのかなぁ? 本当に幽霊とか居るの?」
「私には霊感がないから分からないけど、父さんに御祓いを、お願いにをしに来る人は結構いたから···うーん、どうかな?」
と、美咲が答えるとユキが上体を斜めから直立に戻し、首を傾げていた。
ユキが他の友人達と心霊スポットに行き始めたのは、ここ最近の事だ。
やがて、教室の扉が開き、教授が入ってきて全員がムダ話をやめて前方を見た。
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