第二章 壱
夢を見る······。
亡くなった父親の夢を······。
見たことのない鳥居の前で、父親が私を呼んでいるように思える。
父親の元に走り寄るが······そこで目覚める。
目覚まし時計より早く起きるようになっていた。
カーテンを開け、朝日をあびる。
都内のアパートの一室で一人暮らしをしている。
美咲は小さい丸型のテーブルの前に座り、トーストにジャムやマーガリンを塗り頬張る。 牛乳を飲みなからトーストを味わっている。さっきスイッチを入れたテレビのニュースを、トーストを食べながら見ていた。どうやら人が、特に若い男女が、何の前触れもなく消えてしまっていると言うニュースだった。美咲は簡単な朝食を済ませ、テレビのスイッチを切りパジャマから私服に着替え、洗面所へと向かう。
一通り準備を済ませると、カバンを右肩にかけドアの鍵を開け、オモテに出ると深く深呼吸しドアに鍵を閉め、自室がある三階から一階へと階段を降りていく。大学までは徒歩で行っている、アパートから大学にはそんなに遠くない場所にあったラッキーだと思っている。
住宅街の右側通行の歩道を歩いていた美咲は父親の事を思い返していた。
二ヶ月半前に、翔宏寺の住職、つまり美咲の父親が亡くなったと聞かされた時は、それまで美咲は、大切な人、身内を事故で亡くした人の深い悲しみが解らなかったが、だが今回の父親の事で、その深い暗闇に呑まれるような感情が理解できた。
翔宏寺は右側に少し坂があり、そこには沢山なの墓石が祀られている。寺の左側には私の実家、住宅がある。
葬式を終え、終えたと同時に美咲の感情が爆発した。母親や妹も、泣き腫らした顔をしていたが、美咲は、元の自分の部屋で声をできる限り小声で泣き続けた。
翔宏寺の住職は、一条家の長男に、受け継がれることになった。
兄は他の宗派の寺院のもとで、厳しい修行を耐えてきた。そんな兄を、頼もしく感じた。
父は、仕事で使う薄い緑色の畳がしかれた仏間の祭壇の前で倒れていたのを、父よりも遅く起きてきた母が発見した。
すぐに救急車を呼んだが、救急隊員が寺に駆けつけた時には既に息絶えていた。
美咲は、実家である寺を出て、東京にある大学に住むことになった。そして二年生になって友達もできて順調な生活······。
そこに父の死。
原因は死蔵発作。父が青白い顔をして布団を肩まで掛けられていた。
親族や知人達は、まだ若いのになぁとヒソヒソ話している。
それから四十九日が経とうとしたころだった。
声をかけてきたのは翔宏寺で働く、白い着物、緋色の袴、長い髪は後ろで結っている。
翔宏寺で働く巫女だった。
巫女は、ノートを美咲に渡した。
私が見たあとに、母さんも兄も妹も、ノートを見た。
ノートの1ページ
『邪眼の巫女』について。
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