第一章  七



 あの時、神社で俺達は何かに気付いてないのか····いや、記憶が抜けているのか?


 本当に巫女の悪霊や呪いなんてものが存在するのか····。


 今まで仕事がら何度も霊が出る噂の場所には行っている。

 だが、変わった経験なんか一度もしてない、だから俺は霊なんて信じなくなっていった。


 しかし今回は別だ、今までとは違う····。


 光村は自宅のパソコンで、邪眼の巫女を調べ始めた。

 今までなら高田に任せていた事だが、もう高田には頼めない。 


 邪眼の巫女を検索し詳しく調べてみる、どうやらここ数ヶ月ほど前に出てきた噂らしく、書いてある事は、単に目を合わせたら巫女の悪霊に呪われる事や、邪眼の巫女は元は悪霊祓いをしていた美しい巫女だった。巫女の悪霊が出る神社は前までパワースポットだった。


 書いてあるのは、その位だけだった。 


「ありきたりな事ばかりしか書いてねぇ····」


 光村は頭をかかえこんだ。


 情報が少なすぎる、本当に邪眼の巫女の呪いなら次は俺か山倉が····。


 だいたい、邪眼の巫女の話をサイトに書き込んだのは何処の誰なんだ? 

 神社が、元はパワースポット? 

 なら、なんで巫女の悪霊が出るなんて噂があるんだ、意味がわからない。


 しばらく頭をかかえていたが、光村は昨日の留守番電話のメッセージの、ある言葉を思い出す。


 〔ミラズニシテミルベシ····〕


 最後の誰だか知らない女の言葉。

 その言葉が、脳裏にはっきり浮かんだ。

 

 光村はパソコンに〔ミラズニシテミルベシ〕と打ち込んで検索をすると、一件だけヒットした。


「ん? 清流眼せいりゅうがんの一族····」


 誰が作ったページなんだ? ミラズニシテミルベシで一件だけヒットするなんて····だが今はこれに望みをかける。


【清流眼の一族】


〔私が邪眼の巫女を調べて一週間、あの神社に行ってから悪夢を見るようになった。 どうやら私は除霊に失敗したようだ。 現実なのか夢なのかさえわからなくなってきた。夢だとしても痛みや恐怖はあまりにもリアルだ。現実なのか夢なのか····。

 邪眼の巫女を調べるには情報が少い、余りにも少い。 

 明治に現れた巫女で、悪霊や怨霊を浄化し霊障に苦しむ人々を救っていたようだ。

 なぜ、そんな巫女が悪霊と化して今の時代に現れたのかは解らない。

 ミラズニシテミルベシ、この言葉を調べていくと清流眼と言う特殊な能力を持った一族にたどり着いた。

 この巫女は、どうやら清流眼の一族の血をひく者らしい。

 その昔、清流眼の一族は部族以外の人間達との関わりを避けていたようだ。 どうやら能力のせいらしい。

 だが、この清流眼の血をひく巫女は村人達や他の人間達と接して、御祓いなどをして苦しむ人々を救っていた。

 その巫女が、なぜ今の時代に悪霊となって蘇ったのか? なぜなのか? なぜなのか? なぜなのか? なぜなのか? なぜなのか····?

 ミラズニシテミルベシは、清流眼の一族に伝わる言葉らしい、意味は解らないが、邪眼の巫女の呪いを解くヒントかもしれない。 

 信じるしかない、この言葉の本当の意味を解読しなければ〕


 そこまでで文章は終っていた。

 一ヶ月前に投稿されたようだ、更新されていないと言うことは····。

 

 じゃあ、清流眼の一族に関しては、と検索してみるが全く情報は無かった····。


 再び頭をかかえ髪を鷲掴みにする光村。


 途絶えた、これじゃ何も解らない、見いだせたと思えた、わずかな活路が闇に閉ざされていく。


 光村の携帯が鳴り響いた。

 山倉からだ、光村は携帯に出る。

『光村さん、あの高田の事もあるし、前に有名な霊能者の取材をしましたよね?』


 「有名な····ああ、翔宏寺しょうこうじの住職か、確か····」


『はい、行ってみませんか? 光村さんは余り霊とか信じていないようですけど、でも、今回は高田の事もあるし、何か今までの取材とは違うと言うか、何か違和感が···。』


「····行こう」


『え、一緒に行ってくれますか? 良かった。 では今から翔宏寺に問い合わせてみます!』


「ああ、頼む」


 携帯を切り光村は溜息をつく。


 信じないか····。


 そうだな、そうさ信じない。


 なのにオカルト雑誌の記者とはな、だが以前は信じていた。

 だから、この仕事を選んだんだ。 だが取材をするたびに信じなくなっていった。

 一度も心霊現象に遭遇してないからだ。


 でも今は、今回は····


光村は、山倉からの連絡を待っていた·····。

 

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