第一章 六
光村は出版社に向かった。
車のラジオをつけると、確かに高田が通行人に刃物で襲いかかった通り魔としてニュースに流れていた。
何が···いったいどおして? あの温厚な高田が···。
高田は光村にとっては可愛い後輩。
高田と共にいくつも取材をして仕事をしてきた、時には叱り、時には褒めて、一緒に仕事に悩んだり大切な後輩だ。
やがて光村は、出版社に着き部署に向かう。
編集長や他の編集者、そして警察の人たちがいた。
光村は、高田とは出版社で親しくあり何より昨日まで一緒に仕事をしていた。
そのため警察にアレコレ聴かれる事となった。
山倉にも連絡が届いている頃だろう。
警察の話では、高田は警察署の取り調べ室で、「これも夢だろ!? お前も目玉の化け物だろう!」と叫んでいたと言う。
光村は、早退し自宅に戻っていた。
高田····何で、こんなことに、どうして、と思っていると光村の携帯が鳴った、山倉からだった。
『光村さん、高田の事は聞きました。僕は今、警察の聴取を受け終わった所です』
「そうか····だよな、昨日まで三人で仕事をしていたんだからな、なんでなんだ····なんで高田が通り魔なんて、そんな事はありえない····」
少し沈黙が続くと、山倉が話しだした。
『高田は夢がどうとか、目玉の化け物だとか叫んでいたらしいですね』
「ああ、俺も警察から聞いた」
『実は僕、朝に目覚めた時、ものすごい恐ろしい夢を見た感じがして、でも、どんな夢だったか····』
「····覚えてない···か?」
『え? あ···はい、そうですけど、光村さんもですが』
「ああ····」
昨日の留守番電話のメッセージが、光村の頭をよぎる、山倉が話を続けた。
『光村さん、あの、昨日の神社での取材ですけど、やっぱり何か、おかしいと言うか、違和感と言うか····』
おかしい···確かに、違和感があるような気がする、何だ? 何か神社で···。
神社では何もなかった、だが、何だか記憶に違和感を感じる。
だが、まさか巫女の悪霊の仕業だと言うのか、そんな事あるわけない。
だいたい神社で霊なんて見ていないし、高田も写真に何も異変はなかった言っていた。
だが、あの留守番電話のメッセージが光村の脳裏をよぎった。
汚れたジーンズ····山倉が頭の後ろに痛みを感じていた····あのカシャンという音はカメラを落とした音····? 高田が、カメラの汚れや傷を確かに気にしていた。
高田は、カメラを落としてはいないと言っていたが····。
留守番電話の覚えのない俺達の悲鳴····。
そして〔ミラズニテ····ミルベシ···〕
あの、くぐもった女の声····。
まさか····。
俺達は見ていたのか巫女を····。
邪眼の巫女を····。
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