第一章 五
・・・
ガバアッ!
跳ね起きるように光村がベッドで起きた。
「ハァーハァーハァー」
寝間着をぐっしょりと汗で濡らしている。
······何だ?
何だか凄く恐ろしい夢を見ていたような、だが、どんな夢だったか思い出せない。
カーテンの隙間から光が差し込んでいる、朝になったようだ。
光村は留守電を、チェックしてみた。
やはり、昨日の妙な留守電のメッセージは消えている。
昨日もあの後、確認したが消えていた。
巫女の悪霊······。
そんな事あるか?
「ハハッ、馬鹿らしい」
だいたい昨日は、神社で何もなかった、邪眼の巫女なんか現れなかった。
「バカバカしい······」
光村は、気にするのをやめて、出版社に出勤する準備を始めた。
光村が、出版社に出勤し自分の部署にいく。
「おう、光村、昨日はご苦労だったな」
編集長が光村に声をかけてきた。
「おはようございます。 まぁ何も変わった事はありませんでしたがね」
「まぁ、そうだろうなぁ、で、神社の写真は?」
そう聞いてきた編集長に光村は
「高田がカメラを持っているので、出勤してくるのを待ちましょう」
光村は自分のディスクに向かう、時間が経つが一向に、高田が出版社に出勤して来なかった。
「何やってんだ? 高田のヤツ、遅刻かぁ珍しいな」
光村が携帯で高田に連絡を取るが携帯に出ない。
自宅のアパートにも電話をかけたが出なかった。
「何してんだ? 事故にでも遭ったんじゃないだろうなぁ」
何だか光村は心配になってきた、それにこれでは邪眼の巫女の記事を進める事ができない。
山倉は、違う取材で今日は朝から別の場所に行っているようだ。
山倉に高田のアパートまで行ってもらう事はできない、自分でアパートまで行くしかない。
光村は編集長の所に向かい訳を話す。
編集長は、なら仕方がないと光村に外出を許可した。
自分の車に乗り、高田のアパートへと向かう光村。
昨日の留守電のメッセージが頭をよぎったが、すぐに馬鹿らしいと頭から打ち消した。
もし、高田が実際に呪われて自宅で死んでいる、なんてそんなのアホらしい。
実際にあったら体験したいもんだ······。
やがて、光村が運転する車が高田のアパートに着いた。
高田が住むアパート。
光村が何度も呼び鈴を押しドアを叩く。
「何だよ、居ないのかぁ······」
また、ドアを叩く光村。
隣の部屋のドアが開き、初老の男性が警戒心を浮かべた目で光村を見た。
光村が、その視線に気付き、初老の男性に頭を下げ
「すいません、お騒がせしました。高田さんの同僚の者なんで······」
初老の男性は光村を、足元から顔まで見て口を開いた。
「そうですか······高田さんの」
「はい、あの何か会社に来てなくて、連絡もないので実際に来たんですが、高田さんを今朝、見ていませんか?」
初老の男性は少し黙ってから口を開いた。
「昨夜ですが、何だか大分うなされていて、時折叫ぶ様な声が壁越しに聞こえてきたんで、高田さんの部屋にうかがったんですよ。ですが、一向に出てこなくて、寝ているんだろうと思ったんですが、あまりにも苦しんだ声をあげていたんで、大家さんに頼んで鍵を開けて中に入ったんです」
「うなされて······? はい、それで高田さんは?」
「いや、やっぱり眠っていて、単に悪い夢を見ていただけだったようで、高田さんを私達が起こして場合によっては救急車を呼ぼうかと心配しましたが······」
「ただ眠っていてうなされていただけですか?」
光村が、そう聞くと初老の男性が
「はい、髙田さんは迷惑をかけましたと、頭を下げてくださって、私は大家さんと、髙田さんの部屋を出ました」
「そうですか······」と、光村は答えた。
初老の男性は話を続けた。
「今朝、ドアの閉まる音が聞こえたので、会社に行ったかと思っていましたが······どうしたんでしょうねぇ」
「出かけはしたんですね?」
「多分ですが、確かにドアを閉め歩いていく音は聞きました。 それ位ですね、分かることは······」
「分かりました。どうもすいません。 会社に戻ってみます。お騒がせして申し訳ありませんでした」
光村は、男性に頭を下げアパートを出た。
「髙田······一体何処に? 本当は体調が悪くて病院に、いや、なら出版社か俺に連絡があるはずだ。どっかで倒れているんじゃないだろうな」
事の成り行きを編集長に伝えようと携帯を取り出し編集長の携帯にかけた。
『光村か! 今、連絡しようとしてたんだ!」
編集長が
光村は少し驚いて
「え? あの、どうかしたんですか?」
嫌な胸騒ぎがした。
すると編集長が、『警察から出版社に連絡があってな! 髙田の名刺を見て連絡して来たらしい!』
「警察? え、何でですか······?」
『高田が通行人の数人に刃物で襲いかかって暴れていたらしい! 今、テレビでニュースにもなってる!』
光村は混乱した。
「何で? あの高田が······」
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