第一章 参
·········
山の中、男達三人の悲鳴がこだました······。
ヒュウウウ······
風の音、ざわめく木々······。
カシャ。
高田がカメラを撮り続けていた。
「あ~あ、どうだぁ? 何か写ったかぁ?」
光村が半分アクビをしながら高田に声をかける。
高田がカメラの画面を確認する。
「やっぱり神社と木だけですねぇ、巫女なんて写ってないっすよ」
「だろうなぁ、ん? あれ、何でジーンズのケツに土がついてんだ?」
光村のズボンの後ろが汚れていた。
まるで地面に尻もちをついたように。
「おかしいな、地面に座ったりしてないのに····」
パンパンとズボンに付いた汚れを光村は手で軽く叩き落とす。
すると山倉が頭の後を押さえて痛がっていた。
「あ痛たた····何だ?」
高田が気づいて山倉に声をかける。
「ん、どうしたよ? 後の木に頭でもぶつけたか?」
山倉が、頭の後ろをさすりながら
「いや、ぶつけた覚えはないんだけど、何か、ぶつけたように痛むんだよなぁ」
「おいおい大丈夫かよ、帰りの運転変わろうか?」
高田がそう言いながら、何気にカメラに付いた土汚れを手で拭いていた。
「あれ? いつカメラを汚したのかな?」
高田が疑問に思った。
光村が、高田と山倉に声をかける。
「オイ、もういいさ撮影は終わりだ、車に戻るぞ」
三人は、神社を
すっかり夜空になり、満月が赤色の様に染まっていた。
三人は、車に戻り一路東京に向かう、光村が携帯で編集長と話をしていた。
後の座席では、高田がカメラの傷に気付き疑問に思っていた。
落とした覚えも、ぶつけた覚えもないからだった。
「編集長がよ、真っ直ぐ家に帰っていいってよ、高田、明日カメラを社に忘れんなよ」
光村は、そう言うと煙草とライターが入っているはずのズボンのポケットに手を入れた。
「あ、あれ、煙草がねぇ、ライターもない」
光村が、疑問に思っていると。
「落としたんじゃないですか? ジーンズの後が汚れてたんでしょ? 転んで落としたとか」
高田が後の座席からそう言うと、光村が少しムッとした口調で
「だから、転んだ覚えはねぇよ、ったく、何だかなぁ、おかしいなぁ」
おかしい
そう何かが、おかしかった。
それは、三人共にそれぞれ思っていた。
やがて光村のマンションに車が着いた。
「そんじゃお疲れなぁ、高田、明日カメラ忘れんなよ」
念押しに光村が高田に言うと、光村は助手席から車を降りて、マンションの入り口に歩き出し自宅に帰る。
独身の光村には彼女はいるが、今はまだ結婚したいとは思っていない。
シャワーを浴び終え、頭をバスタオルで拭きながら、冷蔵庫をあける。
中にあった缶ビールを一つ取り出し、ビールを飲みほす。
「ぷふぅー、うまい!」
空きっ腹なせいか、少しホロ酔いになる。
寝間着を着て、車の帰りの途中コンビニで買った弁当をレンジで温める。
「あ、そうだ」
自宅の留守電を確認するスイッチを押した。
ピーと留守電がなり音声を発する。
午後6時38分ノメッセージデス
『隆俊、あたし麻理恵だよ、今日、取材で茨城県なんでしょ? 仕事中に携帯にTELしたら迷惑だもんね、帰って来たら連絡頂戴ね』
フッと光村が笑みを作る、そろそろ麻理恵の誕生日だった事を思い出す。
ピピー。
留守電が続けてなり音声を発する。
午後7時10分ノメッセージデス
『え····と光村様の、ご自宅で宜しいでしょうか? レンタル店のタクサンミヨウ店です。光村様の延長期間が二日目になりますので、お電話さしあげました。お早目にお返し下さいませ、失礼致しました。』
その音声の後に、レンジが鳴った。
コンビニ弁当が温まり、食べ始める光村。
すると、また留守電がピーと鳴り音声が流れる。
『おう、何か写ってるか?』
ん? と弁当をつまんでいる箸を止めた光村。
『はい、神社と木が』
『やっぱりなぁ』
え? これって、この声に会話は·····
『あれ、三村さん何か····』
『うわあああ! ガッ、痛っ』
『何騒いでんだよ山倉ぁ、後の木に頭ぶつけたろ? 大丈夫かぁ?』
『ち、違う! 三村さん後ろに·····』
『はぁ? 後ろ····え? あ····あああ·····ドサッ』
『うあ、うあああああ!! カシャン····』
『····ミラズニシテ····ミルベシ·····』
ピピー·····
なんだ·····?
今のは間違いなく高田と山倉の声·····そして·····俺?
最初の会話は覚えがある。
だが、その後のは····悲鳴?
〘····ミラズニシテ····ミルベシ·····〙
誰だ? このくぐもった声は?
女のようだが····何を言ってる?
何だよ····何でこんな会話や悲鳴が留守電に?
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