第一章  壱

 『その目を見た者は、悪夢にうなされ、日常生活では怪異がおこり、やがて精神が崩壊する。

 邪眼の巫女は、かつて悪霊や怨霊の霊を浄化し人々を救う美しい巫女だったが······』




・・・・・


東京都内 某出版社


「いいネタがないもんかねぇ·····」


 怪奇現象や怨霊類のオカルト雑誌の編集者である光村隆俊みつむらたかとしがディスクの椅子に座りボヤいていた。

 

 向かいのディスクの椅子に座る高田たかだ

 「まぁ、だいたいのネタはでちゃいましたからね、都市伝説とか····」

 

 光村の後輩の高田がパソコンのキーボードを打ちながら答える。

 光村が更にボヤく

 「何か新しいもん発見しないとなぁ、編集長に急かされてよぉ」


 後輩である高田がパソコンの画面で何かを見つけたのか、光村にその画面のページを見せる。


「巫女の霊?····邪眼の巫女?」


 光村がアゴをさすりながら呟くように言葉に出して読む。


 「なんかネットで最近、出てきた話みたいっすね何か場所は神社らしいですけど」


 高田が短髪の頭をポリポリかきながら言う。


 「ありきたりだろぉ、悪霊でもエラく怖い話とか、心霊写真じゃねぇとよ」


 光村がボヤいてばかりだ。


 高田がネットに書かれた文章を読んでいく。


 「んー、かつては悪霊祓いをしていた巫女だったが、今は悪霊となり、人の精神を崩壊させる、か」


 高田が読み終えると光村が

「ふぅーん、でもまぁ一応調べてみるか、他になにもないし、巫女の悪霊の話ってのも珍しいかもな、目撃情報は、茨城県津原市浜高町つはらしはまたかちょうか、多分田舎のほうだな」


 光村がパソコンの画面を見つめて文章を読んでいると高田が

 

 「浜高町の山にある名前のない神社らしいですね、でも、誰が投稿したんだろうニックネームもないし」


 高田が疑問に思い、首を傾げている。

 光村がパソコン画面から顔を上げ

 「現地調査だな。よし、んじゃ俺は編集長に、この事を話してくる、あと山倉やまくらのヤツに連絡を取っておいてくれ、運転係だ」


 光村が高田の肩を手で軽くたたいて言う。


「了解っす」


 と、高田が片手を軽くあげた。


 山倉は、同じ部署の同僚だが、今日は他の取材で不在だった。



········


 次の日


 その日は朝から晴天であった。


 光村、高田、山倉の三人は車で、東京から茨城県津原市浜高町へと向かっていた。

 光村は髪を少し伸ばし真ん中分けにしているが、高田と山倉は二人共おなじような短髪だった。


 山倉が車を運転して、取材や調査するのは、いつものことだった。

 後部座席で高田がカメラを大事に抱えて、白い布でレンズを優しく拭いている。

 光村は助手席で煙草を吸って白い煙を吐いていた。


 今回のネタも、今までの心霊現象の類と変わらない、光村はそう思っていた。

 ただ地元の人間に話を聞き、その場所に行き写真を撮る。

 軽く細工して、まるでわずかにでも霊が写ったようにゴリ押しすれば良い、そう、今までの仕事と変わらない······




 やがて三人は、巫女の悪霊が目撃されたという津原市浜高町に着いた。

 

 これといった目立つ建物のない町並み、田園地帯に、周りには山々。

 まさに田舎だ。 


「さてと、確か名前のわからない神社だったな、まぁ、こう言う話は若い奴らに聞けば、すぐに色々と情報が入るだろ」 


 光村が、そう言うと、開けた砂利が敷いてある駐車場に車を置き、三人は車を降りる。


 「田舎だねぇ、んじゃ情報収集に行くぞ」


 光村達三人は、田園地帯の反対側にある町の中を歩き、若者たちを探す…


 もう午後で学校は終わっている時間になっていた。


 しばらく歩くとコンビニの前に、たむろっている男子高校生を三人を見つけた。

 光村達は、さっそく男子高校生に話しかけ質問を始めた。


 


 「巫女の悪霊ですか?」 

 「それってアレじゃねえ、邪眼の巫女の事じゃん?」


 高校生達の会話に、光村が笑みを浮かべた。

 話を知っている人間に出会った事に内心喜んでいた。

 すかさず高校生達に聞く。

 「そうそう、その邪眼の巫女の事だよ、知っている事を聞かせてくれないかい?」  


 光村に聞かれた男子高校生が話だす。


「何か姿を見ても大丈夫らしいけど·····」

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