邪眼の巫女
豊島ダイ
序章
プロローグ
黒より濃い黒、闇より深い闇の塊
『ソレ』は、恐ろしく強大な邪気を放っていた。
その邪気が支配する山を、一族は松明を持ち参道を登っていく。
邪気により次々に一族の者達は血を吐き、倒れ、もがき苦しむ。
一人また一人と犠牲者を出しながら、一族の者達は『ソレ』を目指し登り進んで行くと、やがて鳥居が見えてきた。
わずかに残った一族の者達は、鳥居をくぐり抜け石段を登っていく。
やがて、砂利と土の混ざった地面の境内に立つ。
先頭にいた神主らしき男が、後ろに立つ白衣を纏い、緋色の袴を履き、長い髪を後ろで結った
『選ばれし巫女』に、合図を送る。
巫女は、左腰に刀を帯びていた。
そして『青く輝く瞳』
その青い目は、使命を背負った一族の証。
巫女は目を閉じ
「ミラズニシテミルベシ」
と、唱える。
意識を集中し『ソレ』の心臓とも思われるばしょを探す。
夜空の月明かりが、巫女の美しい顔を照らす。
残り少なくなった一族の者達は、巫女に念をおくり、邪気から守り、そして一人づつ邪気により地面に倒れていく。
巫女が、瞼を開けると、青い目がキラリと光り
右手で刀を抜き、強力な邪気を放つ
『ソレ』に近付いていく。
鼻や口、そして目から血を流し、身体の激痛に耐えながら、青い目の巫女が
『ソレ』の前まで来て『ソレ』の、心臓部であるばしょに、刀を両手で持ち、突き刺した。
······
·········
やがて朝日が登り、参道や境内に血塗れで息絶えている一族の者達の骸が日光に照らされる。
選ばれし巫女は小さい神社の前で冷たくなり倒れていた。
手には、先が折れた刀を持っている。
禍々しく邪気を放っていた『ソレ』は、跡形も無く消えていた······
それから、長い長い年月が過ぎ
舞台は平成へ······
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