最終話 忍び寄る厄災の足音
「全国の下僕どもちゃんと見ておるか? わらわの勇姿をしかと目に焼き付けるのじゃ!」
「ドアホ! はじめて迷宮に行くのに勇姿もくそも無いだろうが!」
「む! わらわを誰だと思っておるんじゃ? 大人気インフルエンサーの……」
「無事に帰ったらモーゲンダッツを買ってやるから大人しくしてろ」
「なぬ! これは……全種類制覇配信をせねばならぬな!」
「なんで全種類買うことになってるんだ! ……腹壊しても知らねーぞ」
迷宮の入り口でコロコロと表情を変えるルリに対し、大きなため息をつく瑛士。二人の会話が途切れると申し訳なさそうに受付の職員が話しかけた。
「あの……そろそろ説明を始めさせていただいても大丈夫でしょうか?」
「「はい、よろしくお願いします」」
元気よく返事をする二人に圧倒されながら話し始める職員。
「それでは始めます。迷宮は現在三十階層まで解析されており、お持ちのタブレットに地図がインストールされています。内部は迷路のようになっているところも多いため、各階層に緊急脱出用の転移装置がございます。安全第一で行動してください。迷宮内に落ちている資源は基本的に持ち出しは禁止ですが、研究目的などで申請を出していただければ持ち帰る許可が下りることがあります。あと、二層目以降は神出鬼没のモンスターが襲ってくることもありますので、一層目で装備等をそろえてから進んでください。皆様の映像は各所に設置されたドローンから管理本部へ転送されていますので、万が一の時は手を振ったりしてお知らせください。あと、三十階層より先は未知のエリアとなるため、自己責任となりますのでご了承ください。何かご質問等はございますか?」
「攻略の様子とかを配信するときに何か注意することなどはありますか?」
「配信についてですね。配信に使用する機材は、弊社で用意したドローンカメラを使用して頂きます。タブレットなどの持込は構いませんが、カメラ部に保護シールを貼らせて頂きます。万が一、勝手に外されると出入禁止等の措置がありますのでご注意ください」
「先程貼って頂いた物ですね……わかりました」
「説明は以上となります。それではご安全に!」
職員へ頭を下げると迷宮の中へ歩みを進める二人。
「さあ、わらわの伝説が幕を開けるぞ!」
「張り切りすぎてケガするなよ……」
同じみとなったやりとりをしながら足を踏み入れた、因縁の相手が配信を見ているとも知らずに……
◇
ここはある建物の一室、壁一面に設置されたモニターには迷宮内の様子が映し出されていた。
「やっと見つけたわ……今までどこに雲隠れしていたのか知らないけど、わざわざ自分から飛び込んできてくれるとは助かるわね。リスク承知でハッキングをした甲斐があったわ」
暗闇の中、椅子に座って瑛士とルリが映し出された映像を食い入るように見つめる女性。
「まさか
モニターから発せられる光に照らされて顔には不気味な笑みが宿る。
「迷宮攻略を楽しむがいいわ。稀代の天才科学者の称号を手に入れるのは私なのに……なんで
キーボードに両手を叩きつけ、勢いよく立ち上がるとモニターを睨みつける。
「フフフ……このチャンスをモノにするのは私よ! そう、迷宮を出現させた功績を認めさせるために!」
何かを閃いた女性の顔が憎悪に歪み、高笑いが室内にこだまし続けた。
数か月後、瑛士たちと女性が迷宮内で激突した配信は伝説となった。
実際に見た人々によって
二度と見ることができない配信「ラストリモート」と……
ラストリモート~金髪幼女はカリスマ配信者?迷宮攻略と古の魔法「読書魔法(リーディング・マジック)」~ 神崎ライ @rai1737
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます