第26話 エンディング

 アンジーは聖痕を失っていた。恐らくはギフトも使えなくなっているという事だった。

 私がアンジーの元に行くと、思い切り睨まれる。

「あんたさえいなければ、ジャロン様は私のものだったのに」

 なぜそこでお兄様が出てくるのか、私は不思議だった。夢の中のアンジーの行動を思い出す。そういえばお兄様を狙っていたな。

「ギフトを悪用したんだから、どちらにせよ女神様に力を奪われていたと思うけどね」

 私が言うと、アンジーは項垂れる。

「あんたに私の気持ちなんて、一生わからないわ」

 アンジーの言葉に思う。私もわからなくていいと。ただ最悪の未来を回避できた。それだけで私は嬉しい。

 後で聞いた話ではアンジーは貧困街の出身らしい。聖痕が出現したことで教会に引き取られたそうだ。国に対して何か思うところがあったのかもしれない。特別な力を得たことで、何をしても許されると勘違いしたのだろう。

 

「あ、マドレーヌ!元聖女が捕まったって?」

「面会してきたんでしょ?大丈夫だった?」

 隊舎に戻るとダリアスとプルメリアが走って来て言った。

「うん、なんだかわかり合えそうもないって思ったよ」

「そりゃそうだろ、ギフトを悪用して他人を操る人の気持ちなんてわかってたまるか」

 ダリアスが言うので私はホッとした。悪人を裁く方も精神は疲弊するものなんだなと思う。

 

 その日は隊でお祝いすることになった。

 私はケーキを焼きながらこれまでの道のりを思い返す。

 火あぶりになる夢を見て、恐怖で震えた日々も、この保護隊に入れたことを考えたら悪いことではなかったのかもしれないと思う。

 何よりスノーとナイトに出会えた。私はきっとこれからもずっとこの保護隊で働いてゆくのだろう。

 焼きあがったケーキをデコレーションしてスノーとナイトの所へ持ってゆく。美味しそうに食べる二匹に顔がほころんだ。

 私はアンジーの様に与えられた力の使い方を間違えないようにしよう。そうしたら私に聖痕と言う祝福をくれた女神様もきっと満足してくれるだろう。

 私の作った料理を美味しそうに頬張る神獣様達と隊員達を眺めて、私もその輪に加わった。

 いつのまにか、ここが私の一番安らげる居場所になっていて、不思議だなと思う。

 最初は火あぶりを回避することしか頭になかったのに。

 

 その後教会で配られた聖痕の力が込められたマドレーヌが大人気になって、定期的に販売されることになった。

 私の名前を冠したそのお菓子は後世まで残り、私の名前は教科書にまで載るようになるのだがそれはまた別の話だ。

 

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悪役令嬢だったので、もふもふ様に助けてもらいます!お返しは甘いお菓子でどうですか? はにかえむ @hnika

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