エピローグ
闇によって鏡に化けた窓ガラスに、二人が映る。
尊志はそれを見ながら、自分に雅貴を重ねる。
本来ここにいるはずだった友の姿を。
「嫌じゃ、ないの?」
陽香がぽつりと漏らした。
「何が」なんて、聞かない。聞けない。
尊志は応えず、そっと頬に口付けた。
再び大切な人を失うことを恐れているのがわかるから。少しでも不安が薄れるように、陽香にしてあげられるのは、想いを伝えることだけだ。
雅貴の代弁ではなく、尊志自身の想いを。
矛盾した関係。
二人ともわかっていて、止められなかった。
なぜなら、尊志は陽香を本当に深く想っていたし、そんな尊志にいつしか陽香も想いを寄せるようになっていたから。
想いは本物。
でもそのカタチは、かつて失ったものを埋めるかのよう。
今、この時だって、陽香が待っているのは尊志の接吻よりも―――。
ドオオンッ。
一瞬で空がぱぁっと明るくなった。
そして、尊志の腕の中も。
「花火だ……!」
こんなに近くにいるのに、陽香の瞳に俺が映ることは、ない。
何年経っても、花火に勝てない。
雅貴が輝かせたのは、
君の心と夏の空。
どんなに陽香を想っていても。
きっと一生―――俺は雅貴を越えられない。
―――Fin.
君の心と夏の空 桜田 優鈴 @yuuRi-sakura
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