第42話 帝国への出発


 そして翌日。今日、はヴィンセントとエレクトラがストロザイア帝国に帰る日と同時に、水音、進、耕、祈、祭、絆の6人も、ストロザイア帝国に旅立つ日でもある。


 朝起きて朝食を済ませると、水音達は全員、王城の前に集まった。


 まるでが来るのを待っているかのように、


 「うーん、なんだがなぁ……」


 と、ヴィンセントが空を見上げていると、とある方向を見て、


 「お、来た来たぁ!」


 と、を見つけたかのようにそう言ったので、水音達も「ん?」とその方向を見ると、


 (……え?)


 空の向こうから、が来るのが見えた。


 それから暫くすると、そのの正体に、


 『え? えええええええっ!?』


 と、水音ら勇者達は驚愕の叫びをあげた。


 それは、大きなだった。


 見た目は中世の大型帆船なのだが、その船体には左右に2枚づつ、のようなものがついていて、まるで羽ばたいているかのようにゆっくりと動いていた。


 そんな空飛ぶ船を見て、水音達が口をあんぐりとさせている中、


 「どうよ勇者達! これぞ、我がストロザイア帝国が誇る『魔導飛空……」


 と、ヴィンセントがそう口を開こうとした、まさにその時、


 「ひ、だ!」


 「うん、だね!」


 「間違いない! だよ!」


 と、水音達が目をキラキラと輝かせながらそう叫んだので、


 「……あれ? もしかして、お前達の世界にも、あるの?」


 と、ヴィンセントは目を点にさせながら、水音達に向かってそう尋ねた。


 その質問に対して、水音達は目をキラキラさせたまま答える。


 「あ、はい! 僕達の世界にも空を飛ぶ乗り物は確かにあります!」


 「ですが、この見た目のものは物語の中だけの存在なもので!」


 「実物を見れて、つい嬉しくて舞い上がってしまいました!」


 『うんうん!』


 と、元気よくそう答えた水音を前に、ヴィンセントは目をパチクリとさせた後、


 「はは、そうかそうか! よし、じゃあ思う存分見るがいい! このストロザイア帝国が誇る『魔導飛空船』をなぁ!」


 と、満面の笑みでそう言った。


 その後、ヴィンセントが紹介した「魔導飛空船」が、王城の前に降りると、船体の一部がパカッと開いて、乗り降りする為の階段が現れた。そして、その階段の先にある空間から、


 「ヴィンセント陛下、エレクトラ様、お迎えにあがりました」


 と、1人の若い男性騎士が現れて、ヴィンセントとエレクトラに向かってそう言ったので、


 「おう、お迎え御苦労さん」


 と、ヴィンセントは「よ!」と手を上げながらそう返事した。


 それからすぐに、ヴィンセントとエレクトラが階段を上がって魔導飛空船の中に入ると、


 「おーい、お前達もいいぞぉ!」


 と、ヴィンセントに招かれたので、水音達6人も向かおうとしたが、


 「みんな」


 と、爽子に呼び止められたので、水音達は「んん?」と爽子の方へと振り向いた。


 「どうしたんですか先生?」


 と、水音が尋ねると、爽子は申し訳なさそうな表情で、


 「私が不甲斐ないばかりに、ごめんなさい」


 と、水音達に向かって深々と頭を下げながら謝罪したので、


 「先生、みんな。僕達の方こそごめんなさい」


 と、水音も爽子と他のクラスメイト達に向かって頭を下げて謝罪した。そして、それに続くように、


 『ごめんなさい』


 と、進達5人も、爽子と他のクラスメイト達に向かってそう謝罪した。


 その後、水音はゆっくりと頭を上げると、


 「先生、みんな。僕達も春風と同じように、ちゃんとみんなのところに生きて戻ります。ですから……」


 と言うと、爽子とクラスメイト達を見回して、


 「行ってきます」


 と、真剣な眼差しを向けながらそう言った。


 その時だ。


 「ま、待ちなさいいいいいいいっ!」


 と、王城の方から男性の叫び声がしたので、水音達が「んんん?」とその叫び声がした方へと振り向くと、王城の中から五神教会の教主、ジェフリー・クラークーー以下、ジェフリーが、何やら顔を真っ赤にさせながらこちらに向かって駆け寄ってくるのが見えた。


 そんなジェフリーを見て、


 「あ、しまった。クラーク教主の存在を忘れてた」


 と、ウィルフレッドが思い出したかのようにそう言うと、水音達を見て、


 「ここは私達が押さえるから、其方達は早く船に!」


 と、魔導飛空船に乗るよう促したので、


 「は、はい! わかりました!」


 と、水音達は大急ぎで階段を上がって中に入った。


 そして、全員が乗り込むと、階段が内部に収納され、船体がゆっくりと空に上がり、


 「よっしゃあ! じゃ、帝国に向けて、しゅっぱーつ!」


 と、船内でヴィンセントがそう叫ぶのと同時に、水音達を乗せた魔導飛空船は、目的地であるストロザイア帝国へと飛び立った。


 異世界エルードの空を進む船内で、


 (まさか、異世界で『空の旅』をするなんて、春風が知ったら羨ましがるだろうなぁ)


 と、水音は心の中でそう考えた後、


 「絶対に、生きて帰るから」


 と、遠くなってしまったルーセンティア王国を見て、小さくそう呟いた。



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 どうも、ハヤテです。


 という訳で、以上で外伝第3章は終了となると同時に、「ユニーク賢者物語」の本編第1部にあたる部分が終了となります。


 そして、この後から暫くの間はこちらの投稿をお休みして、これより少し日を置いた後、久しぶりに本編を投稿していきますので、皆様、何卒よろしくお願いします。

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ユニーク賢者物語外伝 〜青き戦鬼の章〜 ハヤテ @samu-river

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