神「まずい、このままだとアジア圏で自殺率が向上してしまう...ここは、俺が直に出向いて一仕事するか。」

@EQuer1278

第1話 誕生

「アジアっつっても、どこいこうかなぁ。うまい飯食いたいし、日本でいいか。」

そして神は、20代前半の、標準より少しガッチリとした体形の男性日本人に憑依した。彼は田舎の農家の息子で、幼少期は日々野菜を作る両親を手伝いながら生活をしていた。生まれつき病弱で、よくいじめにあっていた彼は、高校卒業後は上京することを決意していた。自分に勉学の才能がないことを痛感していた為、鍛えるべきは体だと考え筋トレに励んでいた。そして時がたち、ロクにお金も持たず憧れの東京へと出向いた彼は、すぐ路頭に迷いながら日銭を稼ぐ生活を強いられた。持ち前の170cm74kgの恵体を生かせる日雇いの仕事を探しのらりくらりその場しのぎで生き延びてきた彼だったが、ついに限界を感じ始めてきていた。

「俺、憑依する人間違えたかな...?まぁいいや、こっから下剋上の始まりだぜ。」

神が憑依した彼は、まず自殺率の低下対策のプランを実行する土台固めを始めた。世界を変えるには、影響力をもたなくてはならない。影響力を持つには、注目されないといけない。神は、この時代でどう注目を集めればいいか悩んでいた。

「あーあ。マジどうしよ。俺の力使えば簡単なんだけど、上にバレたらムショ行きなっちまうからなぁ。人間が実現可能な力でこんなことすんのマジえぐすぎ。キビシイッテェェェ。」

そんな彼に、ある話が迷い込んでいた。

「ほもび...でお?なんだそれ。人間が性欲を発散するために使う動画の撮影?めんどくせー...いや待てよ、たしか今の時代動画投稿で有名になったピカ...キン?だっけ。そんな奴がいたよな。じゃあ俺もこの道を頑張れば第一歩目クリアにつながるんじゃないか?」

神としての名誉を失う事と、自殺率の上昇のどちらを取るべきか、三日三晩悩んだ彼は、ホモビに出ることを決意した。野獣先輩の誕生である。

「浩二さーん、ここの部分とかアクセントを少し強調してみてよ。」

「あー、いいね。もう少し声を張り上げてみようか。」

彼の出演するビデオは、一般人がメインのモノの為、演技力の稚拙さから今まで注目はされてこなかったが、神の憑依した彼の演技力は並大抵のものではなかった。

「イキスギィ!」

「アァォアァオアアァァアオアアアアアアーアアアアアォアァアアアア!!!」

「やりますねぇ!やりますやります」

文字に起こすことすら憚られる、(迫真)の台詞たちを作り上げた彼は、今後810年程にかけて世間を揺るがす存在となった。神は、ホモビに出るだけで自殺率を98%も下げることに成功したのだ。

神は満足し、天界へと帰った。が、しかし憑依されていた「田所浩二」は、知らぬ間に良くない形で有名になってしまった事実を知り、自殺してしまった。一人の命を犠牲に、計り知れない命が助かっている。みんなが今手にしている幸せや生も、誰かの犠牲の上に成り立っているのかもしれない。(意味深)

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