第9話 隠された計画

みるみるうちに尻の痛みは引いていき、医療の力に感激するばかりであった。そして我はミイラのペンの助に話かけられた。

 「クワ、クワッ(すまないが、すこし相談がある)」

 「クワッ!クエ?(!?、びっくりした―。その格好で突如話かけられたらめっちゃ怖いわ。で、どうした)」

 「クエクウェ…クワ!(俺は昨夜、最愛の妻をなくし、今朝バッタに振られたところなのはご存じのはずだ…。そこでだ。次はあの看護師さんを狙ってみたいと思う!)」と言い放ち、右フリッパーで指さした。そもそも論、ヤギはこいつの妻ではないし、こいつはそのヤギを食べた張本人でもあり、バッタに関しては意思疎通ができていたのかも怪しい。そんな状態でもう切り替えができているとはメンタルの強さには舌を巻く。

 「クエ…クワ!(そこで頼みというのは、あの人のタイプを聞いてきてくれないか。もう、俺は自分に自信がもてないのだ…。お前にしか頼めない!頼む!)」

 正直これ以上被害者を増やさぬために自信はゴミ箱に捨ててほしいと思うが寛容な我は聞きに行ってやることのした。めんどくせえーと思いながら近づいていくとその看護師は医師とおじさんエンペラーとでひそひそと話し合っている。我には何を話しているのかさっぱりわからない。(ここでその彼らの会話内容を特別にお見せしよう)


エンペラー「あのペンギンたちどうすればいいんでしょうか…。」


看護師「言っておきますがこの病院で預かるのは嫌ですよ?絶対に!絶対にっ!一匹のペンギンはまだマシですが、ミイラの方は本当に体臭がひどい。非衛生的でよくないですし、激臭でいつ死者がでるか分かりません。あと、あの尻尾。ぼさぼさすぎません?あーほんとないわ~」


医師「まあまあ、落ち着きなさい。ところで患者さん。適材適所という言葉をご存じですか?」


エンペラー「ええ。まあ…」


医師「適材適所とは四字熟語で、その人の能力・性質に当てはまる地位や任…」


エンペラー「そこの説明は結構です」


医師「おっと失敬。では。私が調べたところあのペンギンは本来南極にいる生物です。なので元居た場所に返してやりましょう。そう。南極に。どうやって彼らがこの地に来たのか分かりませんがそれが彼らにとって一番なのです。すでに業者は呼んでいます」


エンペラー「本当ですか!ありがとうございます!昨日から困ってたんですよ!昨晩なんて一匹のいびきがうるさすぎて外で寝たぐらいなんですよ。いやあ。本当に、本当にありがとうございます!」


看護師「流石ドクター!危うくこの病院が崩壊するところだったからマジで助かるわ!」


医師「いやあ。それほどでも…。当たり前のことですよ(ドやあ)。ハハハハ!」


 我はペンの助の為に看護師のタイプを聞く責務を担い、話しかけるタイミングを見計らっていたが、何やらみんな手をつなぎ始め、ワアワアと喜んでいる。今日は何かの祭典の日なのだろうか。ちなみに南極のオキアミ大感謝祭は三日後である。この時、我ら二匹のペンギンは秘密裏に進んでいた計画を何一つ知らなかったのである。

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