第7話 伝説の九岐大蛇
「クワ!クエ!アアア!(エンペラー!我はお尻をサソリに噛まれてしまいました!きわめて痛いのでどうか、どうか助けてください!)」悲惨な声をあげながらお尻をぺんぺんたたき、何とか伝えようとする。するとおじさんエンペラーは異常を感じたのか我のお尻を見る。どうやら我がサソリに噛まれたことを理解してくれたようだ。おお!分かってくれたようだ!さあ、早く医者の元へ連れて行っておくれと考えているとエンペラーは手を我の尻にあて、何やらごにょごにょと呪文のようなものを言い始めた。
二分後。よし、もうこれで大丈夫だ、というかの如く最後に一度我の尻を叩き、立ち去っていく。一仕事してやったぞという自信が背中からまじまじと感じる。え?いや、まて、薬は?薬をくれえ!我の願いもむなしく、あたかも事は済んだようにどこかに行く。我は再度訴える。「クエ!クワア!(どこぞの呪文を唱えてくれたのはいいのですが、痛みは全くひきませぬ!むしろ痛さは増している気がいたします!どこか薬のある場所に連れて行ってくだされ!)」エンペラーはしかたないなあという雰囲気を出しながら脱糞後のたんこぶ飽和ペンギンとサソリに噛まれたペンギンを担ぎラクダに乗せ、どこかに連れていき始めてくれた。そこで、ラクダに乗っている間の会話を紹介しよう。
「クワ!クエ!(なんでさっきからお前、尻浮かせて乗ってんの?)」
「クエ…クエ!(えっと…、大蛇に噛まれたのだ!そう、かの有名なヤマタノオロチに噛まれたのだ!)」
「クエ?クワクワw(ヤマタノオロチ?そんなのいるわけないだろwましてや砂漠に。本当はサソリにでも噛まれたんじゃないのw)」
「クエ!クワワ!(サソリではない!我は激戦の末、大蛇に勝ったのだ!その勇敢な傷跡がこの尻の紋章というわけだ!それに先刻我が遭遇したのは頭が九つあった。だからいうなればキュウマタノオロチだ!)」
「クワw(嘘はエイプリルフールの日だけにしてくれよwやっぱりこんなので南極大統領が務まるわけないなw)」
「クウァ!(それとこれとは関係ないだろ!お前もバッタにやられて全身たんこぶだらけじゃないか!)」
「クワ!クウェ!クワア?(違う!これはたんこぶじゃなくてキスマークだ!バッタからモテすぎてこまったもんだよ!まさにペンギン界の光源氏ってところさ!いやあ、やっぱり俺の心が甘くてジェントルだからモテるのかなあ。あれ?甘いといえば、お前砂糖水は?)」
「ア…!(あ…、ゲルに忘れてきた!ペンの助こそキムチは?)」
「ア…!(あ…、枕の下に忘れた!)」
天照大御神すら予期できなかったであろう無価値な討論が続くこと三十分ほど、うるさいペンギン二匹をつれるおじさんエンペラーとラクダは頭をかかえるのであった。
ラクダに乗ることさらに二十分ほど、ふと前方を見るとコンクリート造りのしっかりした建物が姿をあらわした。それは大規模な病院だった。
中に入ると砂漠とは打って変わって冷たい空気が我の体にまとわりつく。生き返る~と体が感動している。その気持ちよさは定積分で上端と下端の絶対値が等しく奇関数をゼロにするのが如くよい。その間、受付でおじさんエンペラーとナースがしゃべっている。ここでこの二人の会話を特別公開しよう。
エンペラー「すいません、ペンギンの診察ってしてますか?」
ナース「は?ペンギン…ですか?あの鳥類のですか?」
エンペラー「はい…ちょっと道中で拾ってしまって…。一匹はあざだらけで、もう一匹は尻をサソリにかまれたようで…」
ナース「二匹もいるんですかっ!?」
エンペラー「はい…四六時中うるさくて困ってるんです…」
ナース「ちょっとすいません、上の方に連絡してみます…」
事が大きく動くのはまもなくであった。
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