希う話の中で

筆屋富初/Hituya Huhatu

希う話の中で

 私たちの世界を一言で表すなら、何であろうか。希望というものに含まれる要素は、何だろうか。人の生きる道というものは、何をもってその正当性を説くのであろうか。

 人それぞれ、答えは違うであろう。いや、答えだけではない。基準とするものが違うのだ。その人の、その時の感情。思想。目的。趣味や、環境。頭を抱えるような何かに悩まされている者ならば、答えを出すことすら難しいかも知れない。

 私は、近頃あまり物語が書けなくなった。とはいえ、悩んでいるつもりはない。その逆で、日常は良い方向に変化した。不満を綴る気力すら沸かない程に。答えに対して、疑問やこだわりを、いちいち抱かない程に――。

 一見、良い事のように思えるかもしれないし、私もそう願っているが、お話を書けなくなってしまうのはどうしても、つらい。ずっと昔から原稿用紙と本がそばにあって、それ以外の経験を全て物語などへ積んできた、そんな日々が、長い付き合いの友人が、どこかへ消えてしまった。

 私は高校生だ。これから社会に出る勉強をして、役立たなければならない。つまり人の輪の中へ入っていかなければならないのだ。どうしても合わせるのが苦手で、浮いてばかりいた。みんなと一緒に、ということがあまり好きでなくなったのはいつだったか、思い出せない程には昔だったと思う。そのときから本に支えられ、本に育てられた。文章と向き合い、ひたすら書いてばかりいた。小学校の頃に書いていた日記などはなつかしい。先生に提出したり、友達と交代で書いたり。全部、今につながっている文章たちで、大切な友人で……。

 本と一緒に、誰かの役に立てるなら、それが一番の幸せだ。今の〝書けない〟事すらもうまく本と乗り越えて、人の輪に入っていきたい。それが、これからの人生への答えにも繋がっていくだろう。

 そう願いたい。

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希う話の中で 筆屋富初/Hituya Huhatu @you10say

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