きみもいつか

久保 心

第1話 游雲

 あきらは久しく触っていなかった机の椅子に座って、前方の窓を見ながら佇んでいた。向こうに見えるのは閑散とした山々、またその奥にはだだっ広い青々とした大空が見えるのだった。そして明は、辺りに漂って風に靡いて移動している雲がどこに向かっているのか、どこに行きつくのかを想像している最中だった。もちろん、景色の手前にはきっと隣家や、近所の家屋、ビルまた家々が見えたはずであった。けれども明には確かに見えていなかった。というよりも見ていなかったというべきだろうか。それほど遠方に見える景色が彼にとって、明にとっての心の暇なのであった。

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きみもいつか 久保 心 @kuvo

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