メタバース・オン・ワールド
結月アオバ
プロローグ
「ゼアアアアアアア!!!」
「ブモォォォォォ!!!」
ガキン!と俺のスキルとこのステージのボスであるミノタウロス────『Taurus of Brusquement』────通称、猛牛先生のスキルがぶつかり合い、激しく火花が散る。
俺の大剣と、猛牛先生の超巨大カトラス。最序盤のボスとはいえ、流石にレベルも20を超えている俺との力は互角。
ここまではパターン通り。視界上に映る、ボスの名前下にある四本あるHPバーは、残り一本のみで、それが示す色は赤色。
『クローズドベータテスト終了まで、残り三分』
「……っ!ぶねっ!」
アナウンスに動揺した隙を狙われた。ギリギリで首を動かし、胴体とおさらばするような事態にはならず、少しだけ頬が切れた。俺の体力が数ドット減る。
「ふぅぅぅぅぅ……」
今日こそ終わらせる。一週間、この猛牛先生を倒すために、寝る間を惜しんで戦い続けた。
いつもいつも計算がズレて失敗に終わるが、今日はそれの内容にいつもより丁寧に時間を掛けた。
つまり、もうその武器の耐久力……そろそろなくなる頃だろ?
「うっ、おおおおおおおおおお!!!!」
モーションに反応し、大剣が赤く光り輝く。それがスキル発動の合図で、システムブーストにより俺の電子体は加速する。
猛牛先生の体長はおよそ5mほど。その目線よりもはるか高く跳躍した俺は、くるりと空中で一回転して上段に構える。
「こわ、れろぉぉぉぉぉぉ!!!」
「────ブモッ!?」
バキん!と攻撃をガードしようとして、ツーハンドブロックの構えをしていた猛牛先生の武器が壊れ、爆散する。
そのままの勢いでもう一回転。先程よりも威力がブーストされた一撃が、猛牛先生を縦に切り裂き体を大きく仰け反らせる。
俺の計算と勘が正しければ、この一撃で終わる!
「おらぁぁぁぁぁぁ!!この一撃で、沈めぇぇぇ!!!」
慣性に逆らい、現実ではなく、電子の世界だからこそ出来る動き。空中二回転後の着地をしてから、直ぐに大剣をそのまま返す勢いで右斜め下から切り上げる。
重突進系三連撃大剣スキル『ブレイクダウン』。ラストの一撃は、確実に、猛牛先生の体を引き裂いた。
「っ!」
名前の下のHPバーを注視。赤くなっていたラストのバーは、左まで行ったあと────消失。猛牛先生の体が青く光り、ポリゴン状に爆散し、空中に『Congratulation!!』の文字が浮かび上がった。
「────よっしゃきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
心の底から雄叫びをあげる。何度も何度もガッツポーズをして、喜びを体全体で表現する。
「おらァ!どうだ開発者!!やってやったぞゴラァ!!」
ヒャッハー!!『始まりのステージボスをソロでクリア』するという誰が聞いても正気を疑うようなクソ縛り達成してやったぞ!!
実際、四日前くらいに
「うっひょー!!なんだこの経験値!?レベルが一気に7もあがったんだが!?」
いや、普通はレイドで山分けの経験値だから、一人に集中すればそれはそうなんだけど、マジで多い!これ見れただけでもクリアしたかいがあったってもんよ!
目の前に現れたウィンドウをスクロールして、クリア報酬を確認していく。大量の金、ドロップアイテム、ラストアタックボーナス、アメイジングチャレンジボーナス────ん?
「え、なんこれ」
アメイジングチャレンジボーナス?聞いたことないなこんなの。とりあえず、ドロップした武器を実体化させてパラメータを確認────
「はぁ!?なんじゃこれ!?バカチート武器じゃん!!」
なんだこのステータス!?ベータテストで確認されている最高峰の武器よりも飛び抜けてるわ!?
つまり、これあれか!?『よく一人で倒したな』っていう隠し報酬!?
「はえー、目ん玉とび出たわ」
『クローズドベータテスト終了まで、残り三十秒』
「……とと。もう終わりか」
楽しかったなー。この一ヶ月。寝る間を惜しみ、夏休みの宿題を犠牲にしてやりまくったこのゲームも終わりか……。
「よっと」
ザクッ、とドロップしたバカチート武器を、猛牛先生が先程までいた場所へと突き刺す。
「────これは、正式サービスが始まったら、必ずまた俺が手に入れる。その時まで、お預けだ」
『クローズドベータテスト終了まで、残り五秒、四、三────』
「────一週間、ご指導ご鞭撻、ありがとうございました!!!」
『────一、ゼロ。クローズドベータテスト終了。ご参加ありがとうございました。正式サービスの参加を、心よりお待ちしております』
メタバース・オン・ワールド 結月アオバ @YuzukiAoba
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