第20話 疑問

ボクの意思が固いのを感じたのかディアとフロウは顔を見合わせて苦笑すると老婆に視線を向けた。


「よかったな、婆さん。助けてやる。一番急ぎたいはずのコイツが良いって言うんでね。」

「それで、その子は?」

「今は寝ておる。こっちじゃ。」


老婆の先導で村の中でも比較的マトモな家屋に連れて行かれる。

中は丁寧に掃除されているのがひと目見ただけで分かるほどピカピカで、特に子供の為と思われる部屋の隅のスペースはその子に対する真剣さがひしひしと伝わる程に天井の方に至るまで綺麗に掃除されていた。


「わぁ……!」


そのスペースの布団の中に見つけた。

ぷにぷにでほんのり赤いほっぺた。

髪の毛は細く、繊細で生え揃えきっておらず耳たぶがタプタプとしていて、なんというか……美味しそうに感じた。


「この子を育てきるのが、今のワシの最後の目標と言ったところかの。」

「そんな!最後だなんて!」

「人の寿命は短い。この子が独り立ちするまで生きれたら儲けもんじゃよ。……無責任じゃな、ワシは。」


そう呟くお婆さんにボクはかける言葉を見つけられなかった。


「さて、その子は今のところなんの問題もなさそうですし、後はいつ、その獣人がやってくるかですね。」


ディアのその言葉に老婆が再び固まる。

その反応と、ボクらがやってきた時の慌てっぷりから、ボクはピンときてしまった。


「もしかして……今日、だったりしませんか?」

「……すまん。先に言うべきだった。」

「おいおい婆さん!それじゃ、作戦も何もあったもんじゃないぜ?」

フロウがかなり焦った様子でお婆さんを問い詰めるがボクはそれを遮るように、お婆さんに質問する。

「……お婆さん。獣人に村人が食われた所は、見てないんですよね?」

お婆さんはボクの言葉にコクリと頷く。

「……人間の子供である理由が分からない。」

「どういうことだ?食える部位を増やすためじゃないのか?」

フロウがボクの言葉の意味が理解できなかったようで尋ねてくる。

「食うために育てるのに人間って効率が悪いじゃない。牛なら2〜3年。豚なら半年。それに類する魔物ならもっと短いのもいるよ?なんで獣人は人間を選んだんだろう……。」

「そんなの、単純に美味いからとかじゃねぇか?」

フロウは頭が痛くなってきたのか、考えるのを放棄して寝そべった。

「そう……なのかなぁ?」

「獣人は生き方、考え方がそもそも違うものですから。一度食事をすれば、長い間食べなくても良い者達もいると聞きます。」

ディアは荷物からノートを取り出し、過去に聞いたことがある獣人の情報を確認しているようだった。


2人の話を聞いても、ボクの中では何かが腑に落ちないままだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎週 土曜日 22:00 予定は変更される可能性があります

新米クラフター、リュウを飼う しょーたろう@プロフに作品詳細あります @sho_tatata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ