第5話 優しい人の子
ひどいのだ。せっかくこの我が直々に出向いたというのにお茶一杯も出さないとは。
しかし地上に着陸したあと、龍はどこかへ行ってしまった。
悲しみ。しょんぼりして我は近くの公園ベンチで座っていた。
人間から見ればただの忘れ物だと思われそうだが、今はどうだっていい。偵察という名の休憩で神はこの悲しみから乗り越えようとしていた。
「誰かの落とし物かな。」
近くまでやってきたのは小さい女の子。どうやら案の定落とし物と勘違いしたようだ。
「友達に聞いてみるね。」
そう言って女の子は近くで一緒に遊んでいた友達を呼んできた。
女の子は誰か見覚えはないかと聞いていたが、もちろん全員知らない。それはそうだ、我は誰のものでもない。
「でも一人は寂しいよ。」
そう言って女の子は友達に相談していた。落とし物に寂しいと思うことはないと思うのだがどうやら女の子は情に厚いようだ。見ず知らずの物にさえこの言葉が出るのだから。
「もしかしたらベンチの周りを飾れば気づくんじゃない?」
別の女の子はそう言って、近くにあった赤色の花を摘み始めた。
「この色なら絶対皆んな気づくよ。」
「じゃあ私は葉っぱを集めるね!」
数分が経過したのち我が座っていたベンチは、あっという間にカラフルな色に染まっていた。
これなら女の子達が望んだ通り、通る者全員が驚いて我のことを見るだろう。
(ふん…飾られるのも悪くないな。)
「持ち主さん見つかるといいね!」
そう言ってまた皆で遊び始めた。やはり人間は面白いな。どうして自分お利益にもならないことを平然とやってのけるのか。そこも偵察していればいつか気がつくことができるのだろうか。
せっかくだしお礼に何かしておくか。
その後女の子と友達は大好きな遊園地チケットが当たったらしい。
この神が日本を偵察するのだ 旋転星 当 @sentenbosi777
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