第5話 時給が発生しない職場って駄目だと思うの
レンジから、物を温める音がする。
「おっ今日も私のは運はいい」
「またですか……何回被ったんですか?」
「私はモン○トのキャラじゃないよ……」
「これもわかるんですね」
俺が呆れながらそう言うと、お姉さんは勝ち誇った顔?をして自慢してきた。さっきまでのシリアス感は何処へ行ったのやら……
「運極の話だろう?救世主になるために、いろいろ学んだからね。地理やオカルト、ファッション、サブカルに……」
「もういい、もういいです」
「そうか……」
心なしか少し寂しそうだ。
「そういえば、これって一応バイトなんですよね?」
「えっまぁ……」
「時給とかって……」
「ないよ」
「は?」(確認)
「ないよ」
「は?」(怒り)
「だって、いちいち時給を図ろうとしたら面倒じゃないか」
「それもそうですけど、だったら日当とかそんな感じで決めたらどうなんですか……って!」
「あー!聞こえなーい!」
耳を塞ぎながらお姉さんは言った
「聞いてないフリしないでくださいよ!それともなんです?もしかして払いたくないとかですか?」
正直言って払われなくてもいいのだが、お姉さんの反応が面白いので俺は追及した。
「えーと……払いたくない訳ではなくてね?成功報酬と言う形にしたいんだ」
「成功報酬?」
「そう成功報酬。日当だと、働きにムラツキがあった時にいちいち決めるのが面倒だろう?」
「確かに、経営者からするといいのかもしれませんが、労働者……俺にメリットはあるんですか?」
「お金に換算すると日当だと5千円くらいで成功報酬だと……」
そう言うとお姉さんは指を3本立てた。
「3万!?」
毎月の仕送りが家賃込みで10万円なので、1か月に一度成功することができればほぼ1.3倍。例え日当をもらったとしても、3万円を稼ぐのに6日かかる。俺の事例から考えると……俺の場合は違うか……
「いや30万」
「は?」(確認)
「だから、30万!一回成功するごとに30万だから、もしも月に二人救ったら、60万だね?」
「は!?」(驚愕)
1.3倍どころじゃない、まさかの3倍だった。お姉さんの顔を見ると「にやり」と笑っていた。どうやら。してやられたらしい。
「さぁどうする?これでも日当を選ぶかい?あぁ、もちろん働いてないときは日当は渡さないよ?働かざるもの食うべか……」
『チーン!』
どうやら温め終わったらしい。
「決め台詞を言おうとしてた……」
「さっ先にとって来たらどうだい?」
※※※
俺は暖かくなったごはんを食べながら、ふと考える。
「それで?なんでしたっけ?」
「日当か、成功報酬にするのはなしだよ?」
おそらくこの人は、俺が成功報酬を選ばせようとしているのだろう。何とかして、この「してやったり顔」を崩してやりたい……そうだ。
「報酬ってお金じゃなくてもいいんですか?」
「ん~別にお金に換算した時の価値として提示しているだけ……」
「んじゃお姉さんへの質問券にさせてもらって……」
「はぁ!?君!貧乏なんじゃないの!?」
「いやぁ、ばれたらまずいですよ……」
「へぇ?」
「税金……」
「あッ!」
どうやら崩すことはできたようだ。
「でも、ばれなきゃ犯罪じゃないと思うんだけど……」
「譲与税の脱税は八割の確率でばれます。それに俺の場合そこから、家に入れられないと意味がないので危険性はもっと上がりますし、まずお母さんがまず受け取ってくれるかどうか……」
昔から優しい人だったし、息子が脱税してると知ったら何をしでかすか……
「んじゃぁ、税理士を探そう!そうすれば……」
「そう死にたいと思ってる税理士いますかね?」
「へ?」
「最初に「死ぬ覚悟が必要」って言っていたじゃないですか。そう簡単に見つかりませんって」
「確かに……というか、言うようになったね……悩みが晴れたからかな?」
お姉さんは関心するようにそれでいて、おちゃらけたようにそういった。
「もう逃げていられませんし」
嘘をついて少し心が痛む。
「いやー、逆に毎日質問考えるのも大変そうですね」
「いやいや、私への質問は30万ぐらいの価値があるから!5千円程度の価値じゃないから!そんな安い女じゃないから」
「逆に30万払えば質問できるんですか?」
「払えたらね!第一君にそんなお金ないでしょう!?」
「バイトしようかな……」
「そんなくだらない目的で働こうとしない!」
※※※
あとがき
やっと「あの機能」までこれた……
えーと近況ノートにも書きますが、お姉さんへの質問コーナーの解禁です。もともと物語の中だけの機能だったのですが、コメントで俺よりお姉さんが答えた方が面白いものがあったのでこうさせてもらいました。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
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メシア Karura @Karurasann
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