第10話 村長の末路-2
「あひょっ?」
口からとんでもない声が飛び出すアスカテ。
まさかまさかの事態に耳を疑う。
「なんでだ?? もう一度言う。奴が私達の仲間を、同胞を売ったのだ!! この商人と手を組んでな!!」
気絶している奴隷商人を指差し、ドヤ顔で声を上げるアスカテ。
「村長、いやアスカテ。あんたらの悪事は筒抜けだ。アシュルとアンタ、どちらを俺たちが信じると思う?」
「そ、そんなの私に決まっているだろう」
「そうだぜ。親父はこの村に尽くしてきた。お前たちの為にな」
「そうよ。あなたたちはただ生活しているだけじゃない。誰のおかげで生活が成り立ってるのよ!! いい加減にしなさいっ!!」
「は? 誰が誰の生活を成り立たせているって? あんたらのせいでこっちはエルフとしての生活を犠牲にし、稼ぎにもならない商いを強いられてきた。見た目だけの下らない店をな」
「で、でも金にはなっただろう?」
焦るアスカテ。
次第に状況が最悪なことに気づく。
「アホか。ヒューマンの商人を持て成すだけの店に儲けなんてある訳がない。二束三文で商品は買われ、物々交換も足元を見られた。そんな商いなんて聞いたことがない」
「いやでも、生活は出来ているじゃないか。私が執り成したおかげだろう?」
尚も食い下がるアスカテに村のエルフ達は溜め息をつく。
「はぁ、あのな。それはアシュルやクルトが守衛の他にも狩猟や畑仕事を手伝ってくれたおかげだ。皆が助け合い、やっとのことで生きてこれた。お前らなんかにはこれっぽっちも助けられてなんかいねぇ」
「そうだそうだ!! なのにお前らは自分達だけが大層な屋敷に住み、美味いものを食い、贅沢をしてきた!!」
「だから今この時、応報するのだ」
ある者は懐に忍ばせた短剣を持ち、ある者は風魔法を、ある者は素手で殴るつもりだ。
「ま、待て!! し、信じてくれ」
「そうよ!! 私達がそんな事するわけがないじゃない!!」
「そうだぞみんな!! 俺たちが居なきゃお前らの生活は成り立たない!! 考え直せ!!」
必死に自分達の無罪を主張する三人。
「アシュル、君が決めろ。皆は君の声を待っている」
「おれは…」
「アシュルぅ君、頼むよ、皆を説得してくれ」
「そうよ!! アシュル君は良い男ね!! あなたになら私の相手を任せてもいいわ!! 好きにしても良いのよ?」
「アシュル!! 俺達の仲じゃねぇか!! 流石親友だぜっ!! 見捨てねぇよな? な?」
必死に懇願ムーブをかます三人に、哀れみを込めて見つめるアシュル。
「マリーは帰ってこない。今頃、どんな辛い想いをしているか。俺は今すぐにでも助けに行きたい。でもまずはお前らからだ」
手を前に振るう。
許しはしない。復讐の合図だ。
「縛れ。そして水へぶち込め商人諸共。俺たちの愛する人の居場所を吐かせろ」
全員が村長家族と気絶している商人を囲う。
丈夫なツルで逆さで吊し上げ、頭から水へとぶち込む。
「ぶふぁっ!? だ、だず、おぼぼぼぼ」
村長家族、商人が苦しそうにもがく。
「早く居場所を言え。誰がどこに売られた?」
「ば、ばがっだがら!! いゔがら!! お、おでがいだ、おぼぼぼ、だずけてぐれっ」
奴隷商人が観念し、まずは奴隷商人を地べたへと降ろす。
「ず、ずどぅいぞ!! おぼぼぼ、お、俺たちもだずげてぐれっ」
「あじゅるさ、おぼぼぼ、ま、アシュル様、わた、おぼぼぼ、私だけでも、だすげでくだざいっ、おぼぼぼぼぼっ」
未だに水に顔をぶち込まれている三人。
家族でさえ守らず自分の事しか考えられない。
「お前たちが許される時は死ぬ時だけだ。ほら、この白い粉を全て食べろ」
魔薬。
依存性が強く多幸感と全能感が己を満たしてくれる魔法の薬。
正体は、下級悪魔『イビル草』を乾燥させ、粉末にしたもの。
商人はこの魔薬で村長を餌付けし、正常な認知機能を少しずつ鈍らせていった。
とはいえ、彼らは潜在的に利己的であり、自分勝手な家族であった事は変わりなかった。
「アシュル、あとは任せるよ」
「あぁ、ミトスありがとう。マリーは俺が必ず見つける」
決意を胸にミトスへと宣言するアシュル。
「俺も探してみるよ。俺は君達の幸福を祈っている」
「あぁ。何度も言うが、本当にありがとう」
その後、ミトスは村を出ると、村長一家の断末魔が村の出口まで聞こえた気がした。
「復讐でこそ、癒える傷もある…か」
旅は始まったばかり、今回の結末が良かったのかはミトスも分からなかった。
次、目指す所はヒューマンの国。
マリー達が居ることを信じて。
旅するエルフの暗殺拳〜ざまぁと最強を添えて〜 さらばバサラ先生 @Mommomg
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