第15話 【???】VS【???】

ー笹塚徹ー


 やれやれ、倒すのは簡単だが、実力を見る程度の舐めプは良いだろう。

「くくく……」

 不気味な笑いを浮かべた【掘削】は、這うように近付くと両手を使って俺の障壁を削っていく。

「…………」

「くくくく………貴様は何分耐えられるかな?」

「そうだな。」

 お前が調子に乗って削ってくれるのに期待してやるよ。



「くく!……今だぁ!」

 俺の障壁が完全に破られたことで、【掘削】が俺の懐に飛び込んできた。

「あぁ、今だな。断絶。」

 俺は能力を再度使用し、【掘削】の動きが止まった。

「な…に!?動けない………」

「やっぱり、完全には無理だったか。」

 【掘削】と断絶の接触部分を観察する。

「貴様……何を………」

「俺の能力は【断絶】。断てるのは相手の攻撃ではなく、空間だ。」

「な!?」

「さらばだ、【掘削】。無様に果てろ。」

 確認したいことは出来たし、もう良いだろう。

「や、辞め……!」

 俺のフィンガースナップを合図に、断絶の出力が上昇する。

「安心しろ。最後ぐらい、見届けてやるよ。」

「ぐ、あぁ……痛い痛いいたいいたいいたいィ!!」

 ザッ…という音のあと、【掘削】の身体が二つに別れて地面に力無く落ちた。


「さぁ、次は誰かな?」







ー頭ー


 ゆったりとした歩みで、奥の部屋を目指す。

「フゥー……たまにゃ葉巻もイイモンだ………」

 暫く歩いていくと、鉄で出来た扉があった。

 コンコン……

「かってぇなぁ……っいと……」

 片足を上げ、瞬時に鉄製の扉を破壊する。


「あァン?」

 煙が収まり、先が見えるようになると、二つの影が視界に入る。

 一人は地面に俯せに倒れており、周囲の血から察するに、既に事切れていそうだ。

 もう一人はそんな倒れた人物を助けようともせず、ソファに座っていた。

「ん、だぁれ?」

 ソファに座っていた人物、幼い少女が尋ねてきた。

「……嬢ちゃん、どっから来たんだい?それとそこの。何があった。」

 倒れた男はよく見ると、流水の長であった。

「なにがあった?」

 少女の応えを聞いて、少女の前に膝まづいて詳しく尋ねる。

「あぁ、あそこにいるのは流水組の流水寿康だろ?嬢ちゃんは奴とどんな関係だい?」

 極めて優しく、娘に話しかけるように尋ねた。

「ながみ……?あれは悪いことしてたからわたしがお仕置きしてあげたの。」

「お仕置き………ね。」

 奴は確実に死んでいる。この少女がヤッたというのなら、どこの差し金だ?

「おじちゃんは、悪い人?」

 瞬間、身の毛のよだつ寒気を感じ後ろに下がる。

「お、おじちゃんは、そこの倒れてる……あれに用があってね。」

 親指で死んだ男を指差す。

「ようー?なに?」

「んんん……まぁ、お仕置き…みたいなモンだな。」

 話つけて最悪ヤル予定だったから、似たようなモンだろ。

「そっか……じゃーわたしといっしょだね。

 あ、もう帰らないと……じゃあね、おじちゃん。」

「ちと、待ってはくれないかい?」

「なぁに?」

「嬢ちゃん……雷出せるだろ?」

 俺の見立てでは、最近話題の雷鳴事件。犯人はコイツだろう。

「うん、そう。バリバリ出せる。」

「っ!」

 予想はしていたがやはりか。

 それよりも、なんつー出力。俺でもイッパツ耐えられるくれーだな。

「これが、どうしたの?」

「俺の仲間に嬢ちゃんと同じ…バリバリ出せるやつがいるんだがよぉ。嬢ちゃんのお仕置きもその仲間がやったと勘違いされて敵わねぇ。

 だから……」

 そんなことは辞めて。そう言おうとした。


「………そっか。分かった。じゃーバリバリじゃなくて、ボーボーにするね?」

 手から出ていたものが雷から火炎に代わり、少女はこれで良いだろうと言わんばかりに去っていった。

「待っ!………速ぇなぁ。

 フゥー………こいつ、どうしたもんねぇ。」

 葉巻に火をつけて、深く吸い込んだ。








ー苫成左近ー


「ねぇー!お父さんも元も徹も遅いー!

 一体何してるのぉー!」

 お嬢が机に腕を伸ばしてむくれる。

「ねぇー?これはもう、お菓子一杯の罰だよ!」

 坊も腕を組んで呟いた。

「ハハハ……まぁ、お仕事ですからね。少しは勘弁して上げてくだせぇ。」


「帰ったぞぉー!」

「「お父さんだ!」」

 元気印が勢いよく立ち上がって駆け出した。

 そんな二人は、とても嬉しそうに笑っていた。

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俺と同じ異名のやつ 麝香連理 @49894989

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