第14話【断絶】VS【掘削】

ー鈴木元ー


「影よ!」

 俺の指示で俺の影が一斉に番田に飛び付く。

「俺ん凪ば食らえい!」

 しかし、番田の棒術が影達を霧散させていく。

「良い攻撃だな。」

「ははん!そいじゃろう!そいじゃろう!このまんまきさんを屠ってくれちゃる!」

 俺の言葉に気を良くしたのか、威勢よく俺を指差した。

「なら、ドヤッてないで防いでみろよ。まだまだ来るぜ?」

 俺は細かい指示を影に与え、直線ではない複雑な攻め方に変える。これで番田が死んでもその程度ってだけだな。

「ぬら!?ならこいでどやい!」

 番田が棒を扇風機のように回し、四方八方に散っていた影を霧散させる。

「よし。影よ、そのまま続けろ。」

 どうやら当たりだったみたいだ。

 俺は指示を出して、自分の身体の柔軟を始めた。

「おまん!舐め腐ってどうなっか分からせちゃる!」

 俺の準備体操を見て、下に見られていると感じたのか、番田が一際大きい声で叫んだ。

「へいへい、そうですねーと。

 フゥー、こんなもんか。」

 別にそんなつもりはなかったが、俺は弁論をしに来たわけではないため、適当に流した。

 身体が良い感じに温まり、最後に伸びをして身体を整える。

「ううん………よっ!」

 地面を蹴り、番田のすぐそばまで近付き蹴飛ばす。

「がふ!?な、なんじやその速さば!?」

 番田が片膝をついて心底驚いたという顔をしていた。

「ははは、何でだろうなぁ!」

 続けて拳を振るい、ワンツーを決める。

「そげなもの、俺の棒で……な!?」

 番田の棒は影に染められたように黒くなり、番田の力ではびくともしなかった。

「さぁ、貴様は何分耐えられるかな?」

 拳に息を吐き、久し振りの運動に思わず笑みが溢れた。






ー笹塚徹ー


「元のやつ、楽しそうだな。」

 言っておくが、俺にはあんな戦闘狂の趣味はない。頭が通すなと言ったこの道を守り抜くだけだ。


「こんな壁、すぐ壊せ!」

「薄そうな癖に!」

「ヒビすら入んねぇ!」

 構成員達が俺の能力を破ろうと必死になって能力を使用したり、銃火器を使っているが、そう観単に突破できるものではないと思う。

 俺からしても、俺の能力はイカれていると思う。



「どけ……俺が、行く。」

 その言葉にさっきまで群がっていた構成員達がサッと引いていく。後ろから、元の相手程ではないが、かなり大柄な男がやってきた。

「誰だ。」

「俺は、流水組……長下突麻。」

 名乗った後、じっと俺を見つめる。

「そうかい。」

 俺の言葉に若干、イラッとした様子の長下。

「貴様……礼儀が、ないな?」

「悪いが、ここは戦場だ。礼なんてしてる暇があるなら、相当温いな。」

「そうか………ならば、消えてくれ。」

 長下が能力を使用し、俺の能力とぶつかり合う。

 拮抗するように音が響いたあと、俺の能力が負けた。

「……へぇ。」

 まさか俺の守りが崩れるとは……初体験だな。

「俺は長下突麻…………異名は【掘削】……だ。」

 長下はこれで良いだろうと言わんばかりにもう一度、言ってきた。

「ハァー……仕方ないからお前のルールに則ってやるよ。俺は松井組、笹塚徹。異名は【断絶】だ。」

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