第13話【殲滅】VS【凪】

ー笹塚徹ー


「行くぞぉ。」

 頭の言葉に従い、流水の本拠に乗り込む。

 頭がゆったりと扉を開けると、ギイィと音が鳴る。

「おぉーこいつぁ熱烈だぁねぇー、徹?」

 流水組の銃弾の歓迎を鼻で笑う。

「えぇ、ですが俺の能力を当てにしないで下さい。」

 俺の能力で全て防いでいるが、いつでも使って貰えるとは思わないで欲しい。察知出来なければ守れないのだから。

「おいおい、最強の盾が弱気かぁ?」

 隣にニヤニヤしながら茶々を入れられる。

「うるさいぞ元。お前だけ当たるようにしても良いんだぞ?」

「おぉ!怖い怖い。」

 元が怖がるフリをしたところで、やっと銃弾の歓迎が止まった。

「奴さん、弾が無駄だとようやく気付いたみたいだなぁ?」

 各自各々が得意なのであろう得物を持って、突撃をしてきた。

「元、片付けろ。」

「うっす!影よ!」

 元の言葉に反応し、元の影が分裂し、小さな人影となって流水の構成員を圧倒していく。あれは元々影だから攻撃してもすり抜けるし、あれを消すには本体を気絶させる必要がある。その本体は俺が守ってるんだが。

 頭の歩に合わせて、俺と元が進む。その間も、群がる構成員を元の影達が倒していく。安藤組程じゃないが、異能力持ちはそれなりにいるようだ。それでも俺の守りは破れず、元の攻撃を捌くのに大変そうだ。



「ここがぁ、大将の部屋か……お前ら、誰もいれんなよ。それと……大隈、薩摩、肥前。」

 音もなく三人が現れる。

「好きに動け。許可は得ている。」

「「「は!」」」

 三人は各々散っていった。

 頭ももう用はないと、流水組の大将がいる部屋に向かって行ってしまった。




「さて、頭が行ったがどうする?このまま敵の制圧を眺めるか?」

 俺はこうやって守りをするだけのため、基本退屈になる。

「そうだな、面白いやつがいたら俺が出るわ。」

 元はそう言っておでこに手を当て、目ぼしい奴を探し始めた。

 まぁ元が出たら、そこそこの暇潰しにはなるだろう。



「ん?影の戻りが早いな?」

 元が呟く。影達は体力が尽きると元の所に戻り、また飛んでいく仕組みだ。

「そうなのか?あらかた片付いて、強い奴が出てきたんじゃないか?」

「かねぇ?………あ、あれかぁ。」

 元の視線を辿ると、三メートルはあるであろう棒を持った男が一度の凪払いで影達を倒していた。

「おい!出てこいや!仲間巻き込まんよぉ大人しゅうしとっき、もう我慢要らん。俺が相手よ!」

 男が叫ぶとこちらを見据えつつ影を屠る。

 それを見た元はすっと立ち上がり、手を前に出す。

「影よ、迅速に残りを潰し、奴をリンチだ。」

 そう言うと、雑魚を一瞬で片付け、全ての影が棒使いに向かう。完全に雑魚で遊んでいたようだ。

「甘く見られちょーな!しかと見ぃよ!」

 横一閃。それだけで影がほとんど戻ってきた。

 元は今日ここに来た中で、初めて嬉しそうに笑った。

「ヒュュウー!やるなぁ!」

 元は拍手をして相手を称える。相手にとっては煽ってるようにしか見えないだろうが、元は本気で褒めている。

「戯れ言はいらん!正々堂々、当たらんか!」

 男が心臓のところを自分の拳で何回も叩き、アピールする。

 その言葉に、元の笑みが消える。

「徹、開けてくれ。」

 少し真剣な声で喋る。

「行くのか。」

「あぁ、漢として応えなきゃな。じゃなきゃ、俺の良い漢が台無しだぜ。」

 元が八重歯を見せながらニカッと笑う。

「そうか、負けんなよ。」

「おうとも!」

 元は片手を上げて、落ち着いた歩みで近付いていった。

 ここに左近がいたら、賭けて遊べるのになぁ。

 




ー鈴木元ー


「お望み通り、出てきてやったぞ?」

 近くで見るとデケェな。

「ふん!最初っからそうせや良いもんを。」

「そりゃ、すまんな。それで?俺を呼んだってこたぁ俺に勝つ自信があんだろ?見せてくれよ。」

 流水は情報がほとんどねぇからな。どんな風に仕掛けてくるか楽しみだ。

「フン!貴様のような後ろでコソォしちゅーやぁに、俺が負けっかよ!」

 やっぱ方言か?聞き取りづれぇな。駄菓子屋のババアで慣れたお陰である程度は分かるが。

「おいおい、俺の戦い方に口出しか?そりゃ大きな世話ってもんだぜ?」

 片手でヒラヒラさせていらないとジェスチャーする。

「して何が悪ぅ!きさんの女々っしやりくちゃー俺は許せーのー!俺の棒でそな頭ぁ、ぶちくらしたぁ!」

 今、聞き捨てならねぇ言葉が入ってきたなぁ?あ?

「おいてめぇ、誰が女々しいだぁ?」

「おまんよ!女々っしそい言っとお!」

 こいつは俺を指差して、また強調してきた。

 流石に、ここまで舐められるとは予想外だ。

「チョーシ乗んなよ?雑魚。」

 久し振りに睨みを使う。頭に辞めろと言われて封印したが、感情が抑えられない。

「なぁ!?なんちゅー圧や!?」

 テメェ言ったよなぁ?俺が一番言われたくねぇ言葉をよォ!

 心の中が荒ぶるほど、口は冷静に言葉を紡ぐ。

「いたぶって殺す。」

 容赦はしねぇ!

「ハン!やれっもーならやってみーよぉ!俺は流水組、番田力八!異名ば【凪】じゃ!」

「松井組、鈴木元。異名は【殲滅】」

「名負けしとんで!」

 何が可笑しいのか、薄ら笑いを浮かべながら【凪】が唾を飛ばしてくる。

「黙れタコ。久し振りに本気でやってやるよ。」

 たまには身体をしっかり動かさねぇと。鈍っちまうし、健康に悪いからなぁ?

 

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俺と同じ異名のやつ 麝香連理 @49894989

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