【あとがき――という名の簡単な解説】
はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。
吹井賢です。
……という挨拶はお決まりのものですけど、依頼者さんははじめましてではないので、代わりに「いつもありがとうございます」という言葉を書いておきます。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
改めまして、吹井賢です。
こちらの『出来損ないの恋』は、Skebの依頼を元に書かれた作品です。お題は「同じ一文が最初と最後にあり、中身を読むとその意味が変わってくるような物語」でした。今回の場合、「出来損ないと自称する者達の恋」の話であり、「出来損なった恋」の話ということですね。……なんだか長編小説のプロローグだけ書いたみたいな感じになっていますよね、すみません。
実は、この『出来損ないの恋』というタイトルは随分前からあって、ダブルミーニングなのも、着想段階から決まっていました。出来損ない達の、出来損なった恋の物語。今回は三人の主人公達が、それぞれに、自分の出来損ないな部分を明かして話が終わります。ですから、プロローグっぽくなっているのも当然だったりします。本当にごめんなさい! でも書きたかったんです!
元々、こちらの依頼は『一葉の写真』という、一葉という写真家の主人公と彼の写真に関する掌編を書くつもりでした。ジャンルは能力バトル。「うーん、依頼者さんはちょっと捻った恋愛と能力バトル、どっちが好きだろう……?」と悩んだ結果、恋愛の方を書いてみたのですが、どうでしたか?
テーマソングは『オーケストラを観にいこう』。本編とは真逆に、爽やかな夏の恋の曲です。彼等彼女等の恋が、故意を繰り返した挙句に出来損なった恋が、どうか素敵な終わりを迎えてほしいという祈りを込めた選曲です。というわけで、僕の作品としては珍しいことに、オチが決まっていません。いつか彼等彼女等の物語の続きを書けたらいいな……と思うと共に、「秘密の恋を抱き、あるいは勘づきながら、続いていく、続けていくその関係が、損なわれるよりはこのままでよいのではと思ってしまいます」という依頼者様の気持ちも分かる気がして、我ながら、少し気に入っている作品です。
この作品が、あなたの一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。
それでは、吹井賢でした。
出来損ないの恋 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010
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