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木下 カエデさんへ
すみません。私はあなたのおばあさんではありません。私は「かぐや」というものです。もし、期待させてしまったのならすみません。
しかし、私はあなたのおばあさんからあなたの事を生前頼まれています。おばあさんはあなたの事のお話をよく私に楽しそうに話していました。
あなたの手紙の見方ですが話すことは出来ません。気が向いたら多分話します。
手紙を見た私はがっかりした。私の手紙をついに、おばあちゃんが読んで返事をくれた!と思っていたのに。今までの事も話すことができるなんて思っていたのは、きっと昨日寝る前までの話だ。死んでしまったおばあちゃんはいないから話すことなんて出来ない。現実は現実だったのだ。
しかし、私の中で知っている「かぐや」というのはおばあちゃんのおまじないに登場する「かぐや様」だった。もし、この人が「かぐや様」と同じ人ならば、おばあちゃんのおまじないは本物ということになりうるし、小さい頃から私の事を見てくれているという神まがいの人ということにもなる。話すことが出来ないというのも私にも説明出来ないような特別な方法を使っているからかもしれない。
それから幾度となく、私はかぐや様と多くのことを話し、相談した。彼氏が出来ないこと、昨日食べたお菓子のこと、最近調子の良い母のこと、そして大学のことも。「とにかく家から近いところにでも行きなさい」という助言のもと一人で行ってみたが、意外とオープンキャンパスも楽しむことが出来たし、学食のラーメンはとても美味しかった。友達のことだって、「多分大丈夫でしょう。」という励ましに近い応援を受け、部屋でひとりでケラケラと笑っていた。
時々私は、かぐや様の姿を暴こうと、努力もしていた。しかし、良くも悪くもかぐや様は私に対する回答をはぐらかす。直球に神かどうかと聞いた時は、「神じゃないけど、神まがい」なんて返してきた。きっと、あの人にとってそんなことはどうでもいいことなのだろう。
毎日のように手紙を返していると、段々と日も経っていき、気づいたらかぐや様は私のいい話し相手となっていた。
もう、夏休み1週間前となった日の朝。昨日まで続いていた手紙の交換がぱたりと無くなったのでした。
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