夏の時間の過ち
ズタタクヤ
第1話
道を歩いていると、目の前に、突然黒い穴が開いた。
「過去を変えるために来たわ」
中から出てきた美女は、決め顔を作り、俺を指差しながら言った。
前身銀タイツの女。昔のアニメやSF映画が考えた未来人。そんな恰好だ。少しダサい。
「説明している暇はないわ。まずはあなたが昨日起きた時間を教えて!」
「えっと、アラームで起きたから、6時」
すごい剣幕に思わず答えてしまう。
その後、彼女は手元の機械を操作し始める。
「相対性理論を考えて……。今が令和●年の……」
ぶつくさ言いながら、何かを入力していく。
てか、こんな炎天下で熱くないのかな。
よく見たらすごい汗だ。
「こっちの日陰でいじりなよ。はい水」
「うん」
夢中なのか、おとなしく道端までくる。
俺が渡したペットボトルを遠慮なしに全部飲む。
すっかり、夏だな。
そこで致命的な間違いに気が付く。
「あ、ごめん」
「何?」
怪訝な表情で彼女がこっち見てくる。
「その。申し訳ないんだけど、サマータイムで生活していたから、7時だったわ。起きたの」
「え。嘘。計算をやり直し……。でも、今からだと時間が……」
泣きそうな顔をしながら、機械を操作する。
「駄目だわ、間に合わない。やはり過去は変えられないの……」
終いには涙をこぼしながら、煙のように消えてしまった。
「……」
黒い穴も消え、彼女のいた痕跡はない。
空になったペットボトルと、蝉の声だけが残った。
よし、プリンでも買って帰るか。
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コンビニによってプリンを買い、家に着く。
「ただいま」
「……」
「はい、プリン。昨日はごめん」
「仕方ない、これで昨日の朝、私のプリンを食べたのは許してあげる。おかえり」
銀タイツの美女を少し幼くした彼女はそういって笑顔になった。
夏の時間の過ち ズタタクヤ @yakutatazu
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