第8話 決意
恵みの雨を受けた作物たちはまるで止まっていた時が動き出すかのように成長し、大地の恵みを実らせる。
「「神の
人々は口を揃えて呟いた。
「女神様、罪深き我々にこのような慈悲を与えていただき、感謝申し上げます」
村長は、村人たちは、純白の女神に深く頭を下げる。
「どういたしまして! 生きるためには、食べ物は必須だからね。みんなの笑顔が戻ってよかったよ」
アーチェは「それに」と続ける。
「自分の間違いを受け入れて反省できる。私はそういう人たちが好きだからね。手助けしたくなっちゃった」
愛おしい人々を見守る慈愛の女神は「えへへっ」と頬を緩める。
「アーチェ。村を救ってくれて、そして、僕の命を救ってくれてありがとう」
リヒトも頭を下げて感謝する。
「あはは、なんか照れくさいね……」
頬を掻いて笑うアーチェ。その表情は満更でもないようだ――――。
◆◆◆
日が落ちた時間。漆黒の空には黄金の月と星々が浮かんでいる。
村の広場。そこでは火が周囲を照らす。それはまるで地上の星のような明るさだ。そしてそこには多くの村人たちが集まっていた。
広場では、収穫された野菜を使ったさまざまな料理が振る舞われており、村全体が幸せに包まれていた。
アーチェとリヒトは振る舞われている料理を食べながら、穏やかな時間を過ごす。
「ん~、やっぱり採れたての野菜は一味違うね」
そう言うアーチェは鶏肉の串焼きと様々な野菜の炒めものを食べていた。ギュッと凝縮された肉の旨み、採れたてで優しい味のする新鮮な野菜。そんな、命の恵みを味わう。
「そうだね。昔からこの土地は自然に恵まれてたから、この土地の食材が一番美味しいって自信を持って言えるよ」
リヒトは柔らかな表情で言い切る。そんなリヒトの顔つきが考えるような表情に変化して、言葉を続ける。
「でも……どうして、大地に恵まれていた土地で雨が降らなくなったり、森がおかしくなったりしたんだろう……」
「う~ん、そうだよね。今回は私の力で雨を降らせたけど、問題の根本を解決する必要があるよね……」
「根本?」
「うん、西の森のほうからかな。あまり良くない気配を感じるの。だから、この村の異変の原因はそこにあるのかなって私は考えてる」
アーチェは、森があるほうを見やり、少し目を細めた。
「西の森……確か巨大な影が目撃されたって」
「みたいだね。動物たちも異変を感じ取ってるみたいだし、明日にでも行こうかなって思うよ」
不安そうな表情リヒト。そんな彼を安心させるように少女は微笑む。
「……ねぇアーチェ」
「どうしたの?」
「明日、森に行くときに僕もついていったらダメかな?」
リヒトは何かを、決めた。そんな目をしていた。
「ダメじゃないけど……危ないかもよ?」
「うん……でも、この村を苦しめた原因を知りたいんだ。それに、僕の力も少しは役に立つかもしれない」
アーチェは、青年の瞳から強い意志を感じ取った。
「……決意は固そうだね。うん、わかった。でも危なくなったら逃げていいからね!」
「うん! 僕のわがままを聞いてくれてありがとう。それじゃあ、僕は家に帰って今日は休むよ。……アーチェは?」
「私はまだここにいるね!」
「わかった、無理しないようにね」
「うん、ありがとう……」
――――強い『決意』を宿したリヒト。
――――何かを『想う』ようにアーチェは夜空を照らす月を見上げる。
この村を変えてしまった『異変』に二人は立ち向かう。
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