一歩目

 翌朝、母から渡された菓子折りと、折り紙で一生懸命作った蘭の花を鞄に入れて家を出た。

 汗は一滴も出ない。でも、練習着を持っていく。

 俺は部活のマネージャー兼、アシスタントコーチをすることになった。

 これから勉強することが山ほどあるけど、今の俺なら頑張れる。


 席に着き、お礼を言おうと浮き足立ちながら、隣の人を待っていた。

 しかし、彼女が現れることはなかった。

 前々から決まっていたことらしい。高橋蘭は転校した。

 彼女の意向で直前まで話さなかった、とのことだ。

 俺はなんとなく気持ちが理解できた。転校するたびに悲しい思いをしたくなかったのだろう。彼女らしいさっぱりとしたお別れだった。でも、納得ができなかった。


 もっと君と話したかった。ちゃんとお礼を言いたかった。

 右手には不恰好な蘭の花が残ったまま。


 でも、そうだ、次は本物の蘭を君に渡せばいいんだ。

                      

                         Q,君とまた、出会うには。

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立ち止まって、歩き出す うるふ @yumedesu

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