最終話
玉座の間での決戦からしばらくの時間が経った。
俺がトールに勝利したことで、この世界は大きく変わり始めていた。
勇者ザイールとしてではなく、魔王ザイールとして、俺はこの地に新たな秩序を築くことを決めたのだ。
トールたちがどうしたかって? まぁそれは想像に任せるよ。
俺には関係ない。
奴らのことなんて俺にはどうでもいい。
そんなことよりも第一歩として、ルナを正妻として迎えた。
彼女は俺の傍にずっといてくれた。
共に数々の戦いを乗り越えてきた。
彼女にも魔王の称号を与え、女王ルナとして、俺の右腕となってもらった。
この新しい時代を共に歩んでいくことになる。
「ザイール様、私はどこまでもついていきます。これからも、共に世界を導きましょう」
ルナが俺の隣に立ち、優しく微笑んでくれた。
その瞳には決意が宿り、俺は彼女の手を取り、深く頷いた。
そして、王女セリーヌもまた、俺に忠誠を誓い続けた。
彼女には人間たちの王として、俺の左腕を担ってもらう。
これからの人と魔族が共存する世界を作るための法律を作るために、俺の新しいビジョンに共感してもらった。
「ザイール様、私はこの国をあなたと共に築き上げるために、全てを捧げます」
セリーヌは跪き、俺に誓いを立てた。
その姿勢に、俺は彼女の真摯な思いを感じ取ることができた。
さらに、前魔王も俺の下に服従し、共にこの新しい国を築くための力を貸してくれた。彼女は元々、怠惰として動きたくない。考えたくないという思いがあったので、魔王の座をルナに譲って、魔王城で魔族たちの監視をしてくれている。
魔族が悪さをすれば、彼女の手足であるメイドが魔族を粛清する。
彼女は長い年月を生きてきた経験と知識を持ち、俺の計画を後押ししてくれた。
こうして、魔族と人間が共存する新しい国が生まれた。
俺は法律を整備し、魔族も人間も平等に扱われる社会を築き上げた。
争いのない、平和な時代を作るために、俺は全力でこの国を導いた。
街には活気が戻り、魔族と人間が肩を並べて働き、共に食卓を囲む光景が日常になった。
その中心になったのが、港町ハマーべだ。
あの街が商業の中心地として栄え、各地から商人たちが集まり、経済も発展していった。俺は海にいる魔物たちを討伐して、海の支配も成し遂げた。
マーメイドの女王を下して、今では穏やかな海がそこにある。
彼女たちとも交流を持つようになったので、今では三カ国が共存していることになる。
「ザイール様、これで目標が達成されましたね」
ルナが微笑みながら俺に語りかけてくれる。
俺はそんな彼女の手を取り、軽く頷いた。
「そうだな。だが、そろそろいいのかもな」
「そろそろ?」
「ああ、俺たちの旅はまだ終わっていない」
俺は玉座から立ち上がり、外の世界に目を向けた。
魔族と人間が共存する平和な国を築き上げた今、俺の役目は終わった。
勇者、魔王、どっちでもいいが力で支配しているだけでは本当の平和とは言えない。
俺が平和の象徴であると同時に、恐怖の象徴でもある。
だから、俺の存在を消すことで、本当の平和を作らなくちゃならない。
そうしなければ、意味がないんだ。
だから、俺は再び旅に出る決意を固めていた。
「ルナ、行こう。俺たちの次の冒険が待っている」
「はい、ザイール様。どこまでもお供します」
ルナが俺の隣に立ち、共に歩き出す。そして、王女セリーヌも一歩前に出て、俺に頭を下げた。
「ザイール様、私はこの国を守ります。あなたが戻ってくるまで、しっかりと国を見守ります。ですから、必ず戻ってきてください」
俺は彼女に微笑みかけ、力強く頷いた。
「頼んだぞ、セリーヌ。俺がいない間、国を任せた」
そして、俺とルナは再び旅に出ることになった。
新たな冒険が待つ世界へ、俺たちは共に歩み始めたのだ。
魔王ザイールとしての役目を果たした。
世界に新しい秩序を築いた俺は、再び自由な冒険者として、世界の広さを知り、未知の地を探求していく。
「ザイール様、次はどこに行きますか?」
ルナが楽しそうに俺に尋ねる。俺は遠くを見つめながら、笑みを浮かべた。
「次はどこだっていいさ。俺たちは自由なんだ。行きたい場所に行って、やりたいことをやる。それが俺たちの冒険だ」
こうして、俺たちは新たな旅へと踏み出した。
魔王ザイールと魔王ルナ、そして自由な冒険者として、俺たちは世界を巡り、さらに広がる冒険に胸を躍らせていた。
【完】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
10万字を超えることを目標にやってきましたが、最後まで書き切れることができてよかったです。
そして、最後までお付き合いいただきありがとうございます!
他にもたくさんの作品を書いておりますので、どうぞ今後もよろしくお願いします!
追放する側として転生することある? イコ @fhail
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