リプレイその1
俺は林太郎。35歳になるしがない木こりだ。
紅葉の葉が散り始めたころ、狐──
見た目は人間。ただ、獣の耳と尻尾が生えている。それに着物姿だ。
もう少しうまく化けろと言いたかったが、まだ若そうだ。17,8歳か?
人外・特に半人半獣との関わりが禁じられていた時代。俺は警戒した。
「あの、まきをすこしわけていただけませんか」
「まき? ああ、薪のことだね」
その後、ある程度薪が集まった後、俺たちは木の切り株に座って少し語った。
聴くとどうやら都禰子には病弱な母がいて、薪を集めて売ることで薬代を工面しているとのことだった。
それから数日、そして数週間、数か月と、俺たちが一緒に過ごす時間が増えていった。都禰子はたまに作業を手伝ってくれたが、飽きたときはたまにお手玉やけん玉で遊んでいた。ただ向こうさんも要領を得ていたようで、売るに値する量と質の薪はいつも回収できていた。
ある日、都禰子が切羽詰まった様子で、
「おかあさんが危篤なんです」
と言ってきた。
この子を獣医に見せることはできない。仲間にそういった技術を持つ者はいないかと問うたが、頭を苦しく横に振るだけだった。しかしながら、応急処置なら俺にも心得が多少なりともある。とにかく、都禰子の母君を診てみることにした。
よくある鼻炎の類だったと判明する。ただ重症化していたため副鼻腔炎となり、匂いがまったく効かなくて、食物を探すことができなかったし、食べるものも味を感じられなかったというのはこのせいだったらしい。葛根湯を、自分の為と偽って処方してもらい、母上様に召しあがっていただく。二週間ほどで彼女は元気よく跳ね回れるようになった。都禰子も、母親も、二人して俺に抱き着いて感謝してくれた。
独り身だった俺。都禰子と毎日顔を合わせるうちに、次第に俺たちの間には愛情らしきものが芽生えていった。都禰子はというと、なんと俺以外に結婚を考えている存在はいないという。これは困った。俺は悩みまくった。朝起きても都禰子のことを考え、仕事中も、寝る前も都禰子のことを考えた。そんな頃合いである。俺たちの関係に、村の人間が気づき始めたのは。
人間「を」狐の姿に変える術があるというのを知ったのは、それらほんの数日後だった。「狐になりませんか」との都禰子の誘いに、俺は二つ返事でお願いしますと答えた。半狐半人のシャーマンの儀式が一通り終わると、俺たちは婚姻のしるしとして指輪を交換した。とはいえ金属製ではなく、されど滅多に切れることのない、魔法をかけられた
ーーー 今日の日記より ーーー
jRPG - 4 - 子狐さんの借り物 博雅 @Hiromasa83
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